首都高「料金値上げ」本格検討へ…上限1950円撤廃も視野か 国交省大臣が言及した“現状”とは
首都高が将来的な「料金値上げ」を含む本格的な検討に入ったことが判明しました。資材費の高騰や老朽化対策により、維持管理コストはこの10年で約1.4倍に急増。検討会では上限料金1950円の撤廃も選択肢に挙がっています。国交省・金子大臣の会見発言を交え、首都高が直面する厳しい懐事情と今後の行方を解説します。
首都高「料金値上げ」検討へ 上限1950円撤廃も視野に
首都高速道路(以下、首都高)が、将来的な「料金値上げ」を含む検討に入ったことが分かりました。
背景にあるのは、昨今の物価高騰や施設の老朽化です。
2025年12月1日に開催された首都高による検討会での議論や、国土交通省の金子大臣による会見内容をもとに、首都高が直面している課題と今後の行方について解説します。

■「維持管理費」が10年で1.4倍に急増
首都高が将来にわたって安定した道路サービスを提供し続けるための「財源確保」について、具体的な議論が始まっています。
2025年12月1日、第3回となる「持続可能な道路サービス提供に向けた対応の検討」会が開催されました。
そこで示されたのは、首都高を取り巻く非常に厳しい経済環境の現実でした。
私たちが何気なく利用している高速道路ですが、その維持管理にかかるコストは年々増加の一途をたどっています。
資料によると、2014年度(平成26年度)と比較して、2023年度(令和5年度)の維持管理コストは約1.4倍にまで膨れ上がっているといいます。
この背景には、建設業界全体を覆う「労務費」や「資材費」の高騰があります。
公共工事設計労務単価は13年連続で上昇しており、2014年度比で5割以上もアップ。
さらに、生コンクリートや鋼材といった建設に不可欠な資材価格も右肩上がりで推移しており、これらがダイレクトに管理費を押し上げているといいます。
加えて、施設の老朽化対策や、近年激甚化する大雪や豪雨などの災害対応、さらには新規路線の開通にともなう管理区間の増加なども、コスト増の大きな要因となっています。
■涙ぐましい「コスト削減」も限界か
もちろん、首都高側もただ手をこまねいているわけではありません。これまでも様々な技術を駆使してコスト縮減に取り組んできました。
例えば、トンネル照明のLED化による電気代の削減や、耐久性の高い舗装の採用、さらにはETC専用化を進めることで料金所の無人化を図るなど、徹底的な効率化が進められています。
また、デジタル技術を活用した「i-DREAMs」と呼ばれるシステムを導入し、点検や補修計画の立案を効率化することで、労働生産性を高める努力も続けられています。これまでの取り組みにより、年間約40億円程度のコスト縮減を達成した実績も。
しかし、前述した物価や労務費の高騰は、これらの自助努力だけで吸収できるレベルを超えつつあるのが現状のようです。
資料では、コスト縮減だけでは確保可能な財源が限定的であるとされ、新たな財源確保の手段として「利用者負担」、つまり料金の見直しが議論の遡上(そじょう)に載せられました。

■上限料金「1950円」の撤廃も検討項目に
では、具体的にどのような「値上げ」が検討されているのでしょうか。
検討会で提示された資料には、財源確保の方法として、現在の割引制度を見直す案や、料金そのものを引き上げる案が記されています。
特に注目すべきは、料金設定のあり方に関する議論です。現在は普通車で上限1950円(走行距離55km以上)という設定になっていますが、この「上限撤廃」が選択肢の一つとして挙げられました。
もし上限が撤廃されれば、長距離を利用するドライバーにとっては大幅な負担増となる可能性があります。
一方で、利用距離に応じた公平な負担という観点からは、料率(1キロあたりの料金)の引き上げや、利用ごとのターミナルチャージ(固定額)の引き上げなども検討項目に含まれています。
資料では、料金の上げ幅が小さいと利用者の負担は減るものの安定的な管理運営が困難になり、逆に上げ幅が大きいと持続可能な管理が可能になる一方で利用者の負担が重くなるという、トレードオフの関係が示されました。
■金子大臣「年内に中間とりまとめを行う」
こうした動きに対し、一部では「無駄な公共事業のツケを利用者に回しているのではないか」という厳しい声も上がっています。
特に、巨額の費用がかかるとされる日本橋区間の地下化事業などを引き合いに、国民感情として受け入れがたいとする指摘もあります。
これに対し、国土交通省の金子大臣は12月5日の会見で次のように述べています。
「首都高速に関する報道はもちろん承知していますけれども、現在、首都高速道路会社において、今後も持続可能な道路サービスを提供していくための課題・対応策について、10月より検討会を開始し、年内に中間とりまとめを行うべく、議論されているものと承知しています」
金子大臣は、検討会でコスト縮減や利用者負担など様々な議論がなされていることを認めた上で、現時点での決定事項についてはこう続けました。
「首都高速道路会社からは、現時点において、持続可能な道路サービス提供に向けた具体的な対応方針は未定であり、年内の中間とりまとめに向けて、具体的な内容について、引き続き検討していくと聞いています」
また、批判のあった日本橋区間の地下化事業については、「老朽化した首都高速都心環状線は、高架橋を撤去し、地下化などを含めた再生を目指す」という有識者の提言や、地元自治体との連携に基づくものであると説明。
単なる景観対策だけでなく、老朽化対策としての機能維持が目的であり、「まちづくりと一体となって進めていきたい」との見解を示しました。
なお、他の高速道路会社への波及については、「現時点において、料金改定について、他の高速道路会社から具体的に検討に関する相談は来ていません」と述べ、今のところ首都高独自の問題であるとの認識を示しています。
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首都高は、都市の大動脈として24時間365日、安全な通行を守る使命があります。
しかし、そのインフラを維持するためのコストは確実に増大しています。
「値上げ」は利用者にとって痛手ですが、安全・安心な道路サービスが維持されなければ元も子もありません。
年内に予定されている「中間とりまとめ」でどのような方向性が示されるのか、私たちドライバーの生活に直結するだけに、今後の議論の行方が注目されます。
Writer: くるまのニュース編集部
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