日産新型「ティアナ」登場、発売前に最速試乗! ロングボディ化で何が変わった? スタイリッシュセダン、中国に投入【試乗記】
中国で「アルティマ」から改称し、5年ぶりに車名が復活した日産新型「ティアナ」。発売直前のモデルに最速試乗を行った。全長を拡大したボディに、ファーウェイ製システムなど先進装備を満載した内装が特徴だ。2.0Lターボによる爽快な走りや静粛性など、若者層の支持も集める新生セダンの実力を徹底レポートする。
発売前の中国向け新型日産 ティアナに試乗 BMCで大きく変わった点は?
日産が2025年10月に中国で発表したばかりの新型ティアナに試乗しました。
いったいどのようなクルマなのでしょうか。

ティアナは「ローレル」や「セフィーロ」の後継となる高級セダンとして2003年に登場、日本だけでなく中国といったアジア・オセアニア地域にも投入されて高い人気を得ました。
現行モデルは2018年に登場した4代目モデルの「L34型」となりますが、日本では2020年に3代目から更新されることなく販売が終了。
一方、中国市場では2004年に発売され、2018年の4代目モデル投入を機に北米と同じ「アルティマ」へと改称しました。
2025年10月にはアルティマのビッグマイナーチェンジモデルが「ティアナ」として発表され、ティアナの名前が5年ぶりに復活しました。
一方で中国名は以前と同じく「天籟」のままで、この名前は2004年にティアナが中国で発売された時から現在まで使用されています。
ボディサイズは全長4920 mm x 全幅1850 mm x 全高1447 mm、ホイールベースが2825 mmと、アルティマよりも全長が14 mm長くなりました。
フロントマスクは以前よりもグリルの幅を拡大し、ヘッドライトをその中に取り込んでいるのが特徴的です。
また、上部では左右一体型の弧を描くイルミネーションを配置することで先進的なイメージを演出。
月1万台超を売り上げる中国専売BEV「N7」と同じく、リアは水平基調の左右一体型テールライトを採用、トランクリッド側のレンズ内では「NISSAN」の字が赤く点灯します。
インテリアもまるで別のクルマかのように大胆にアップデート。ダッシュボードは形状そのものが見直され、シンプルでフラットな視界が広がります。
インストルメントパネルは横長の10.25インチディスプレイを採用したことでメーターフードを撤廃、さらにセンターディスプレイも12.3インチから15.6インチへと拡大したことで、中国の最新トレンドを取り入れた形です。
センターディスプレイの下に送風口とエアコン操作ボタンを有している点は以前と同じですが、一方で新型ティアナでは温度を調整するダイヤルやエアコンの状態を表示する液晶パネルを廃止しました。
代わりに、下方向に押し込む物理ボタンを横一列に並べており、若々しい雰囲気を感じさせます。昨今の中国車では物理ボタンを廃してすべてタッチ操作に集約する傾向が見られますが、ティアナではエアコン送風口のつまみや操作ボタンをそのままにしており、運転中でも操作しやすい実用性重視の設計としています。
この考えは先述のN7や、ティアナと同タイミングで発表された新型PHEV「N6」とも共通しています。
今回のビッグマイナーチェンジにおける最大の特徴が、中国のIT企業「ファーウェイ」開発のコックピットシステム「HarmonySpace」を採用している点です。
センターディスプレイはファーウェイ製「HarmonyOS」を搭載し、UIやグラフィックといった部分は同社のスマートデバイスと同じ言語で設計されています。
また、オーディオにはファーウェイ製17スピーカーシステムを採用、ダッシュボード上やドアパネル、ヘッドレストなどに「HUAWEI SOUND」の刻印が入ったスピーカーを配置しています。
実際に音楽を聴いてみると確かに空間を包むような音響は気持ち良いですが、一方で他の名だたるオーディオメーカーにはまだ及ばない印象を受けました。
ドアハンドルはドアパネル上部にありがちな手前方向に引くタイプではなく、トヨタの初代カリーナEDのようにアームレストに水平に配置されたレバーとなります。
こうすることで、ドアを開ける際に腕を動かす必要がなく、自然な位置のまま操作できます。
センターコンソールも大幅に設計が見直されており、ダッシュボード側には出力50 Wの携帯端末用無線充電パッドや、USB Type-C端子を2つ設置。
手前にシフトセレクターがありますが、最近の日産車でお馴染みの黒い長方形タイプではなく、オーソドックスな形状のものを採用しているのには少し驚きました。一方で実際に運転してみると掴みやすい形状のおかげでしっかりと操作することが可能で、なおかつ入れたポジションで固定してくれるのも実用的だと感じました。
パワートレインは従来モデルから変わらず、自然吸気グレードにはMR20DD型2.0リッター直列4気筒エンジン、最上位のターボグレードにはKR20DDET型2.0リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載する純ガソリンとなります。
電動化していない点に関しては、おそらくBEV「N7」やPHEV「N6」にその役割を担わせているからだと推測できます。
ターボエンジンのおかげで加速感は素晴らしく、1.5トンの車両重量を感じさせずにぐんぐん進んでくれます。
エンジン音や振動はしっかりと抑えられており、中国の消費者が特に気にする「NVH(騒音・振動・荒々しさ)」の点でも高く評価できます。もちろんアクセルを踏み込むと回転数は上がってエンジンが唸りますが、気になるほどうるさくはありません。
足回りは日本車にしては硬く、荒れた路面では若干の突き上げ感が伝わります。ただ、不快な硬さではなく、どちらかと言うと「走り」の性能を重視した結果だと感じました。
ブレーキタッチも優しく、踏んだ分だけブレーキが効いてくれます。日産はN6やN7でも車酔い防止のために数多くの新機能投入やドライビングダイナミクスのチューニングを行なっており、その努力は新型ティアナでも十分に発揮されています。
新型ティアナのメーカー希望小売価格は13.99-16.79万元(約306.6-~368.1万円)ですが、発売直後の期間限定価格として1万元(約22万円)安い値段で予約を受け付けています。
日産は予約層の約半分が1990年代以降に生まれた「90後」 の若い世代だと発表しており、さっそく若返りを図ったビッグマイナーチェンジの効果が現れています。
また、男女割合はそれぞれ67:33と、中型セダンながら女性客も一定数いるのが意外な点と言えるでしょう。
従来のアルティマは登場当初から台数を落としつつも、依然として毎月5000台前後は販売していました。今回の新型ティアナ投入により、どれほど台数を回復させられるかに注目が集まります。
Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト
下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。













