国道1号「北勢バイパス」開通! 「名四渋滞」迂回でみえ川越から伊勢まで直通!? 「南海トラフ」対策&「中部の主要工場地帯」に便利な“すごい道路” 3月開通の効果とは?
国土交通省は、国道1号「北勢バイパス」における開通区間の交通状況および開通効果をまとめたレポートを公表しました。
交通量が分散、地域の安全性が向上
国土交通省 中部地方整備局 北西国道事務所は2025年10月29日、三重県四日市市で工事を進めている国道1号「北勢バイパス」について、すでに開通している区間における交通状況や開通によって地域にもたらされた効果をまとめたレポートを公表しました。
北勢バイパスはどのような道路で、開通した区間の交通にどのような変化が起きているのか、レポートの詳細を見ていきましょう。

北勢バイパスは、伊勢湾岸道のみえ川越ICがある三重県川越町を起点に、東名阪道に沿って走行し、三滝川で南進して四日市市采女(うねめ)町まで敷設予定の総延長21kmのバイパスです。
四日市市を中心に伊勢湾沿いを通る国道1号・国道23号(名四国道)の渋滞緩和、災害時の交通ネットワークの確保、地域活性化の支援を目的に計画され、先出の通り、みえ川越ICに加えてみえ朝日ICとも接続し、新東名高速や東名阪道に間接的なつながりを持ちます。
現在の工事進捗は、2025年3月に国道477号の「四日市バイパス」交差点までの延長4.1kmが開通し、みえ川越ICから四日市市内が走りやすい線形で直通。全体の約60%となる延長12.6kmが開通しています。
国土交通省は北勢バイパスの完成によって「四日市市内の国道1号、国道23号等の渋滞緩和、災害に強い道路機能の確保及び地域活性化の支援等の効果の発現」に期待を寄せているとしています。
さて、10月29日に公開されたレポートは、3月に開通した区間を軸に計測したデータをまとめたもので、開通から半年間で生じた変化を伝えています。
北勢バイパスの交通量は昼間12時間あたり約1万台となっており、開通区間に並行する道路では、約5700台の交通量減少が見られました。既存開通区間の交通量は5000台増加しており、周辺の交通が北勢バイパスにうまく転換されていることを示しています。
主要道路の交通量と比較した「断面交通量」のグラフを見ると、周辺道路の交通量が減少しつつも全体の交通量が増えていることが分かります。これは交通の転換が起きただけでなく、交通ネットワークを新たに利用するユーザーの増加を表しているとも捉えられます。
交通ネットワークの変化によって、四日市市内では伊勢湾沿いにある港湾地帯と内陸部にある工業地帯を結ぶ輸送ルートの効率化が進み、周辺道路の渋滞が緩和されたことで、輸送に費やす時間(片道)は1分から4分の減少が見られました。
国土交通省は、実際に輸送を行っている事業者を対象としたヒアリングで「従来利用していたルートの交通量の減少を感じる」との声があがっているといいます。
四日市や鈴鹿市などを含めた「北勢地域」は製造業がさかんで、製造品出荷額等市町村ランキング(2020年)においては、中部地方では四日市市は豊田市、名古屋市に次ぐ第3位にランクインしています。
北勢バイパスが全線開通すれば、四日市市内だけでなく、日本全体に好影響をもたらしそうです。
またこれら交通の転換は企業だけでなく、地域住民の安全性向上にも効果を発揮しているようです。
北勢バイパスの開通後に、周辺にある小中学校の通学路で交通量調査を実施したところ、昼間12時間あたりの交通量が全体的に減少。通学時間帯の交通量は3割減少するなど、一定の効果が出ている様子。
また、交通量調査の内訳を見ると、周辺の生活道路を抜け道として利用する交通が半減していたそうです。
四日市市内は幹線道路から離れると住宅が密集した地域が広がり、生活に欠かせない商業施設のほか、小中学校・高等学校が多数存在します。
住宅街を縫うように敷設された生活道路や学校施設周辺の通学路に大きな道路から流入する交通が減少すれば、地域で暮らす住民の安全性が向上し、日常生活や子育てに対する安心感が得られるでしょう。
さらに、交通の転換は地域の消防・救急活動においても多大な影響を与えているようです。
四日市市中消防署中央分署より一定の方面へ出動時、北勢バイパスを利用することで所要時間が短縮しているというデータが出ています。
これまで下道を経由していたルートを、信号が少なく道路幅も広い北勢バイパスに転換することで、消防署から10分で到達できるエリアが約2%拡大しました。
「2%」と聞くとわずかな差に思えるかもしれませんが、1分1秒のロスが人命を左右する消防・救急の活動において、これはとても大きな変化と言えるでしょう。
国土交通省が四日市市消防本部に対して行ったヒアリングでは、「以前よりも早く現場へ到着することが出来ている」「安全かつ迅速に現場へ向かうことができ、ストップ&ゴーが少ないため傷病者の負担を減らすことにもつながっています」という声があがっているそうです。
発災リスクが極めて高いとされる南海トラフ巨大地震でも、現道となる国道1号・23号は伊勢湾近くを通るため、浸水被害が想定されていますが、内陸側を通る北勢バイパスでは津波浸水想定域を回避でき、災害時に避難経路や緊急輸送路としての利用も期待されます。
※ ※ ※
さて、四日市バイパスから国道25号の四日市市采女町までの未開通区間については現在事業が進められています。
今年度は地質調査や環境調査、道路詳細設計、用地幅杭設置など、本格的な工事を実施するための準備が進められています。
ここが開通すればその先の「中勢バイパス」「南勢バイパス」ルートも含めて、伊勢市までのネットワークが構築。鳥羽や志摩エリアの一般道アクセスも改善されます。
Writer: 春山優花里
フリーランスの編集記者。WEB媒体を中心に15年以上メディア業界で働くなんでも屋。幼少期に叔父の書斎で見た膨大なミニカーコレクションに圧倒され、クルマやバイクに興味を持つ。漫画やアニメ、ゲームが好き。



























