新型「“水平対向”4WDスポーツカー」登場! ただ“速い”だけでない快適性の高さも魅力!? 「700馬力」超えのポルシェ「911ターボS」は“新フェーズ”へ
“2.5秒の壁”を破る凄まじい加速。走りはどう変わった?
結果、新型911ターボSのクーペモデルは、0-100km/h加速が2.5秒、0-200km/h加速は8.4秒という、凄まじい加速性能を実現しました。

これは従来モデルをそれぞれ0.2秒と0.5秒も短縮する数値です。ちなみに新型は、発進から2.5秒で26.5m地点まで到達(従来モデルは17m)します。
電気モーターや1.9kWhのリチウムイオンバッテリーなどを搭載したハイブリッド車であるため、従来モデルより車両重量が80kgほど増加したこともあって、最高速度は322km/hと従来モデル(330km/h)より低くなっていますが、300km/h超の速度域はドイツのアウトバーンでも現実的ではありません。
ニュルブルクリンクのノルトシュライフェ(北コース)のラップタイムが7分03秒92と、従来モデルの記録を14秒も凌駕することからも、実質的な速さは新型が確実に勝っていると言えます。
さて今回は、スペイン・マラガ郊外のホテルを起点に、アスカリサーキットまでの往路とサーキットでクーペを試乗、サーキットからホテルまでの帰路でカブリオレを試乗したのですが、新型911ターボSの仕上がりは素晴らしいの一言でした。
まず乗り心地が非常に上質です。足回りはとてもしなやかで、路面からの入力のカドをしっかりいなし、700馬力オーバーのハイパフォーマンスモデルとは思えない快適性を味わえます。またターボのレイアウトや新開発のチタン製エキゾーストシステムのおかげか、静粛性も非常に高く、快適性は驚くほど高いのです。
また大人しく走っている分には非常に運転しやすく、デイリーユースにも全く問題なく使えるドライバビリティを備えています。しかし、一旦右足を“少しだけ”深く踏み込めば、途端に猛烈な加速を披露します。高速道路やワインディングロードでは敵なしの速さです。ドライバーには高い自制心が必要かもしれません。
カブリオレも、基本的にはクーペと同様ですが、車両重量がクーペより85kg重いことから、若干大人しめの印象です。とはいえ、こちらも0-100km/h加速2.6秒、0-200km/h加速8.8秒、最高速度322km/hと猛烈な速さです。しかもオープンエアドライビングが楽しめるのですから、極めて欲張りなクルマと言っていいでしょう。
サーキットでドライブしたクーペは、衝撃的な速さでした。電気モーターで加速をアシストし、低回転域から電動ターボが瞬時に過給を始めるので当然と言えば当然ですが、Tハイブリッドはあらゆる速度域でターボラグなどという言葉とは無縁の、怒涛の加速力を発揮します。

また新型は、フロントが255/35ZR20、リアは325/30ZR21と、リアが従来モデルより10mm太い専用開発のピレリ「Pゼロ」を装着しているほか、アクティブリアウイングやアクティブフロントスポイラー、フロント左右の可動式クーリングフラップ、アンダーボディの新開発アダプティブフロントディフューザーなど、エアロダイナミクスも進化。
さらに毎秒200回も制御が行われるehPDCC(アクティブ電動油圧式スタビライザー)や、スプリングレートやダンパー油圧、減衰特性の制御を行う可変サスペンションシステムのPASMやリアアクスルステアリングも標準装備しています。
これらにより極めて低ドラッグ(Cd値0.31)で、素晴らしくスタビリティに優れた走りを実現しました。ハンドリングはGTS系モデルと比較すると、若干ですがアンダーステア傾向が感じられます。
とはいえステアリング操作に対するノーズの反応が遅いと感じることはなく、アンダー/オーバーステア状態に応じて前後駆動力配分を緻密に制御する電子制御4WDシステムやリアアクスルステアのおかげで、この上なく気持ちの良いハイスピードドライビングを楽しむことができました。
911のターボモデルは、これまでもあらゆる状況で最高のパフォーマンスを発揮する、日常からサーキット、はてはスキー旅行まで使える“オールラウンダー”という存在でしたが、新型911ターボSは、それがさらにレベルアップし、より多くのドライバーがその楽しさを味わえる、極めて懐の深い一台になったという印象です。
新型911ターボSの車両価格(消費税込)はクーペが3635万円、カブリオレは3941万円と決して安くはありませんが、手に入れれば最高のカーライフを一生楽しめるでしょう。
Writer: 竹花寿実
自動車専門誌やWeb制作スタッフを経て2010年に渡独。ドイツ語を駆使して現地で最新モデルや最新技術、クルマ文化、交通政策などを取材する。2018年に帰国後は、国内をベースに欧州車を中心に各種メディアに執筆。ヨーロッパのサッカー事情にも詳しい。
































































