「自賠責安くなる?」 国が借金した「約5700億円」一括返還!? 高市首相「問題を完全に解決したい」 問題視された「お金問題」解決か
バブル崩壊後の財政難で国が自賠責保険から借り入れ、未返還のままだった約5700億円。政府はこの残債を2025年度補正予算で一括返還する方向で調整に入りました。自民党の小林政調会長が明らかにしたものです。返還が実現すれば特会の財政が改善し、ドライバーの保険料引き下げにつながる可能性があります。
バブル崩壊後、自賠責保険の特別会計から一般会計に約1兆1000億円もの繰り入れがおこなわれていた!
過去に国が自賠責保険の特別会計から1兆円以上のお金を一般会計に繰り入れ、現在も約5700億円が返還されていないことが問題視されていました。
これについて、自民党の小林鷹之政調会長は先日、一括返還を検討していることを明らかにしました。

クルマやバイクを運転するに当たっては、すべてのドライバーが自賠責保険・共済に加入しなければなりません。
この自賠責保険・共済は、人身事故によって死亡したりケガを負ったりした被害者の損害を補償し救済するための仕組みであり、死亡による損害に対しては最高3000万円、後遺障害による損害には最高4000万円、傷害による損害には最高で120万円が支払われます。
なお、自賠責保険料に含まれる「賦課金」や自賠責保険料の運用益などは政府の特別会計(自動車安全特別会計)に計上され、ひき逃げや無保険車による事故の被害者救済のほか、被害者の介護・リハビリ支援、事故防止対策などに活用されています。
しかし、この自動車安全特別会計をめぐっては、これまでに「ある問題」が指摘されてきました。
その問題とは、1994年度と1995年度に自動車安全特別会計(当時は自動車損害賠償責任再保険特別会計)から一般会計に1兆1000億円が繰り入れられた後、いまだに約5700億円が特別会計に返還されていないというものです。
これは当時、財務省が日本のバブル崩壊による財政難を理由に、自動車安全特別会計の積立金から1兆1000億円を一般会計に繰り入れたもので、いわば国が自賠責保険から借金をした形です。
その後は翌1996年度から2003年度まで一般会計から特別会計に繰り戻し(返還)がおこなわれていたものの、一般会計の財政状況が厳しくなったことで繰り戻しがストップ。
そして麻生太郎氏が財務大臣に就任していた2018年、15年ぶりに繰り戻しが再開され、年間40~50億円程度が自動車安全特別会計に返還されています。
とはいえ、上記のようなペースではすべてを返還するまでに100年以上かかってしまいます。
加えて、事故による重度の後遺障害者や介護料受給資格者など自賠責保険の積立金からの支援を必要とする人は減っておらず、自動車安全特別会計の枯渇を避けるため、2023年度には自賠責保険料の賦課金が引き上げられる事態となりました。
このような事情から、国に対しては繰り入れたお金を一刻も早く返還するよう求める声が多く上がっていました。
そのような中、自民党の小林鷹之政調会長は11月19日、国会で国民民主党の浜口誠政調会長と会談し、自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れた約5700億円について、政府が一括返還を検討する考えを示しました。
小林氏は会談の中で浜口氏に対し、「問題を完全に解決したい」という高市早苗首相の意向を伝えたほか、2025年度の補正予算で約5700億円を自動車安全特別会計に戻すよう調整をおこなっていると明らかにしました。
また、これに対して国民民主党の玉木雄一郎代表は自身のX(旧Twitter)において、自動車安全特別会計の積立金が減少する→運用益が少なくなる→保険金の支払いのために積立金を取り崩さざるを得なくなるという悪循環について説明した上で、次のように話しています。
「今回、補正予算で一括返済が実現することとなり、自賠責特会(※特別会計)の財政状況が大幅に改善します。
事故に対する救済が万全になるだけでなく、財政が安定すれば、保険料の引き下げにもつながります」
※ ※ ※
長い間、自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れられたままになっていた約5700億円について、ようやく返還の目処が立ちました。
返還が実現すれば、玉木代表の言うように自賠責保険料の引き下げにつながる可能性があり、今後の動向に注目が集まっています。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。







