神奈川~静岡の未開通区間「新東名“最後”のピース」開通1年以上延期へ 工事難航で28年度完成か 現状は?
NEXCO中日本が、新東名の「最後の未開通区間」である新秦野IC~新御殿場IC間の最新状況を公開しました。全線開通の鍵を握るこの区間には、「最難関」と呼ばれるトンネルや「世界初」の巨大橋が存在します。困難を極める工事の「スゴい」現場は今、どうなっているのでしょうか。
新東名の「最後のピース」約25kmの現状
2025年11月5日にNEXCO中日本は、新東名高速道路の最後の未開通区間である新秦野インターチェンジ(IC)~新御殿場IC間の建設状況(2025年度時点)を伝える動画を公開しました。
開通すれば東京~名古屋間のダブルネットワークが名実ともに完成する日本の「大動脈」ですが、その建設は「最難関」ともいえるトンネル工事など、困難を極めているようです。一体どのような状況なのでしょうか。

今回動画で公開されたのは、新東名高速道路で唯一の未開通区間となっている神奈川県の新秦野ICから静岡県の新御殿場ICまでの約25kmです。
この区間が開通することにより、神奈川県海老名市から愛知県豊田市までの約250kmが全線開通となり、既存の東名高速道路との「ダブルネットワーク」が完成します。
動画では、ドローンなどを用いた空撮映像や、普段見ることのできないトンネル内部の工事の様子が紹介されており、壮大なプロジェクトの進捗がわかります。
東名高速が比較的、地形に沿って建設されているのに対し、新東名はより内陸側をルートとし、カーブや勾配を少なくするために最新の技術で「直線的」に建設されているのが特徴です。
そのため、東名の構造物(トンネルや橋)の比率が約2割なのに対し、新東名では約7割にも達します。
これは、より安全で走りやすい高速道路を目指した結果であり、ドライバーにとっては快適な走行が期待できます。
しかし、その裏側では、山々を貫き、深い谷を越えるための巨大な橋や長いトンネルの建設という、数々の難工事が行われています。
今回の動画で最も詳細に紹介されているのが、最難関とされる「高松トンネル」(全長約2.9km)の工事です。
この地域は、フィリピン海プレートに乗った伊豆半島が本州に衝突してできた複雑な地質であり、トンネルが貫く山には「断層破砕帯」と呼ばれる非常に脆弱な地層が広がっています。
現場では、掘削中に毎分2.5トンもの大量の湧水が発生したり、地山が崩落したりする事態が頻発。
さらに、この地域特有の「緑色凝灰岩」という地質は、水に触れると膨張して崩壊する性質を持っており、工事は困難を極めているといいます。
動画では、湧水が激しく噴き出す様子や、崩落した土砂がトンネルを塞ぐ生々しい映像も公開されています。
この難局に対し、現場では「長尺鋼管フォアパイリング」(鋼管を打ち込み薬液で地山を固める)や「インバートストラット」(トンネル底部を支保工で固める)など、あらゆる先進工法を駆使して、安全を最優先に慎重な掘削が進められています。
2024年10月からは、従来の東側坑口に加え、西側坑口からの掘削も開始し、全線開通に向けた取り組みが加速しています。
この区間には、トンネルだけでなく目を見張るような巨大な橋も建設されています。
やどりき双扇橋(そうせんきょう) (建設中名称:中津川橋) 世界初となる「2面吊りのエクストラドーズド形式とバタフライウェブ」を組み合わせた特殊な橋です。
断層を避けて橋脚を設置したため、左右非対称という非常に珍しい構造になっています。
山北天空大橋(やまきたてんくうおおはし) (建設中名称:河内川橋) 国内唯一の「鋼・コンクリート複合バランスドアーチ橋」で、橋脚と橋脚の間の距離(支間長)は最大220mと国内最大級。
急峻な谷に架けるため、「インクライン」と呼ばれる工事用の昇降設備など、大規模な仮設設備を組んで建設が進められています。
これらの橋の名称は、地域のシンボルとして親しまれるよう、一般公募などで決定されました。
最難関の高松トンネル以外にも、多くの工事が進んでいます。
谷ヶ山トンネル(2020年度完成)や萱沼トンネル(2022年度完成)など、すでに完成しているトンネルも多く、路面の舗装も始まっています。
舗装には、コンクリートとアスファルトの良いところを組み合わせた「コンポジット舗装」が採用され、高い耐久性と快適な走行性を両立させています。
また、山北スマートIC(仮称)の工事では、ドローンによる3次元測量やICT建機(情報通信技術を活用した建設機械)を全面的に導入した「ICTフル活用モデル工事」が実施され、建設プロセスの効率化・高度化も図られています。
この「最後のピース」が開通すると、私たちの生活や物流に大きなメリットがもたらされます。動画では、主に以下の3つの効果が挙げられています。
・観光交流人口の増加
・企業活動の活性化
・救急医療サービスの向上
これらに加え、東名高速の慢性的な渋滞の緩和や、災害・事故発生時にどちらかの路線が通行止めになっても代替路として機能する「リダンダンシー(冗長性)の確保」など、ドライバーにとっても非常に大きな恩恵が期待されます。
建設中の区間は、開通前から社会に貢献しています。先行して整備された構造物の一部は、2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピックの自転車ロードレース競技の会場としても使用されました。
また、2024年5月から7月にかけては、高速道路での自動運転時代に向けた「路車協調実証実験」のフィールドとしても活用されています。
高松トンネルという最大の難所は残るものの、多くの橋やトンネルは完成の時を迎えつつあります。
日本の大動脈が全線開通し、私たちのドライブがより快適で安全になる日が待ち遠しいです。











































