「スペアタイヤ」なぜ消えた? かつては標準装備だったのに… ドライバーの「安心」を支える“必須装備” 装備されない納得の理由と「意外な落とし穴」とは

近年の新車には「スペアタイヤ」が装備されていません。なぜなのでしょうか。

安心の「スペアタイヤ」がなくなったのはさまざまな事情が

 最近、スペアタイヤ(テンパータイヤ含む)の装備を簡略化する動きがあります。

 いざというとき、なくてはならないはずのスペアタイヤがなぜ廃止されるのでしょうか。

黄色い「スペアタイヤ」 新車から消滅の理由は
黄色い「スペアタイヤ」 新車から消滅の理由は

 かつて、タイヤがパンクしたりバーストしたときには、ラゲッジスペースからジャッキを取り出し、スペアタイヤ(テンパータイヤ)に交換するのが、ある意味当然の流れでした。

 スペアタイヤのなかでも、テンパータイヤと呼ばれる細身の簡易的なタイヤは、装着しているタイヤがパンクなどによって使えなくなった際、「緊急用」として使用するタイヤです。

 あくまでも「一時的な使用」を目的としているため、長距離や高速(80km/h以上などタイヤにより異なります)での走行はできません。

 しかし、スペアタイヤを必ず装備しなければならないといった法的な義務ではなく、メーカー側のユーザーへの配慮として装備されてきたものなのです。

 ではなぜ、緊急時に必要とさえるスペアタイヤを搭載しなくなったのでしょうか。

 それにはまず、燃費や環境への配慮が挙げられます。

 スペアタイヤ+ホイール+ジャッキなどを搭載することで、15〜20kg程度の重量が増えます。

 車重増はそのまま燃費悪化につながるため、廃止されるようになったのです。

 また、これはこれで重要なことですが、車両本体価格を抑える狙いもあります。

 タイヤ・ホイール・関連する工具を一式積むと数万円単位での価格上昇となります。

 クルマ関連の部品全般や安全装備の拡充などの影響で、軒並み車両本体価格が上昇しているなか、少しでも価格を下げるにはやむを得ない処置ともいえるでしょう。

 特に価格帯の低い小型車・軽自動車ではコストインパクトが大きいといえます。

 また、トランクなどのラゲッジスペースに、スペアタイヤ+ホイール+ジャッキが搭載できるスペースを確保する必要があります。

 ふだんほぼ出番がない装備に貴重なラゲッジスペースを割くのは、いかんともしがたいと思うメーカーの思惑も絡んでいます。

 さらにいうと、出番がないまま役目を終えたスペアタイヤ+ホイール+ジャッキの3点セットは当然ながら廃棄処分しなければなりません。

 未使用のままで捨てられてしまうのはもったいない…といった考えも浸透しつつあります。

 その代わりに普及しているのが「ランフラットタイヤ(空気が抜けても一定距離走行可能)」や「タイヤパンク修理キット(液体シーラント+コンプレッサー)」です。

 筆者(松村透)も10数年前に高速道路を走行中、落下物(石?)を踏んでしまいタイヤがバースト(破裂)。

 路肩に止めてスペアタイヤ(テンパータイヤですが)に急いで交換し、どうにかこうにか高速道路を降りて難を逃れたことがあります。

 タイヤがバーストしたのが深夜だったこともあり、とりあえず車中泊をしてから最寄りのタイヤショップに駆け込み、新品のタイヤに交換してもらったことがあります。

 こういった場合、なにしろバーストなのでパンク修理キットでは対処できません(100km/h前後で石を踏んだため、ホイールのリムも少し歪んでいました)。

 タイヤショップのスタッフの見立てでは、ホイールのリムの歪みが許容範囲でひとまず高速道路の走行も問題なしだったことです。

 数万円の予期せぬ痛い出費となりましたが、実走行が可能な状態で済んだのは不幸中の幸いでした。

 あれ以来、タイヤがバーストするようなアクシデントには見舞われていませんが、いざというときのことを考えると、多少の重量増でもスペアタイヤが搭載されていた方が安心…と思うのは、私だけでしょうか。

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三菱 eKクロス

Writer: 松村透

株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。
輸入車の取扱説明書制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトリニューアルを担当後、2013年に独立。フリーランスを経て株式会社キズナノートを設立。現在に至る。
2016年3月〜トヨタ GAZOO愛車広場連載中。ベストカー/ベストカーWeb/WebCARTOP他、外車王SOKEN/旧車王ヒストリア編集長を兼務する。

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