トヨタ「100億ドル投資」や「米国製輸入車」の真相は? トランプ大統領と豊田会長の会話、中身は? 真相を解説
来日したトランプ氏とトヨタ豊田会長がディナーで懇談。「100億ドル投資」の約束はあったのでしょうか。トヨタ渉外本部長の上田氏が真相を解説。豊田会長が伝えたかったのは「感謝」だったといいます。会合の舞台裏に迫ります。
トランプ大統領と豊田会長の会話の内容は? 懇談の裏側をトヨタ渉外本部長・上田氏が解説
2025年10月27日に来日したトランプ米大統領。翌日28日には、日本の経済界トップらとの会合が開催され、トヨタの豊田章男会長も出席し、トランプ氏と直接言葉を交わしました。
「100億ドル投資」や「米国産車の逆輸入」など様々な情報が飛び交う中、実際の会合はどのようなものだったのでしょうか。

●トヨタが「100億ドル投資」の真相は?
トランプ大統領の来日に伴い、日本の経済界トップらとの会合が開催され、トヨタの豊田章男会長も出席し、トランプ氏と直接言葉を交わしました。
「100億ドル投資」や「米国産車の逆輸入」など様々な情報が飛び交う中、実際の会合はどのようなものだったのでしょうか。トヨタ自動車の上田裕之渉外広報本部長が、その舞台裏と会話の真意を語っています。
今回、豊田章男会長が出席したのは、トランプ大統領と日本の経済界の主要メンバーが集うディナー(夕食会)でした。上田氏によると、この会合の前に、AIやエネルギー関連で大規模な投資の調印を行った企業群とトランプ氏が会談する時間が別途設けられていたようですが、トヨタはその会合には参加していませんでした。
豊田会長が参加したその後のディナーでは、トランプ氏が冒頭に40分ほど、様々な企業による米国への投資に関するスピーチを行ったとされています。
上田氏が伝聞として語ったディナーの雰囲気は、日本側・米国側合わせて約40人のビジネス関係者が出席し、海外企業の姿も多かったようです。
参加者は複数のテーブルに分かれて着席しましたが、人数が多かったこともあり、特定の相手とじっくり話し込むというよりは、多くの参加者が挨拶や名刺交換を交わす、いわば「ざわざわした」状態だったといいます。上田氏は「込み入った話ができるような雰囲気ではなかったと聞いている」と補足しました。
●真相は「一般的な会話」。投資や逆輸入の具体的話は「なかった」
その限られた時間の中で、豊田会長もトランプ氏と直接会話を交わす機会があったようですが、上田氏は一部で報じられたような「具体的な投資額」の話や、「米国産車を逆輸入する」といった踏み込んだコミットメント(約束)は、その場では一切なされなかったと明確に否定。
では、一体どのような会話が交わされたのでしょうか。上田氏によれば、実際の会話は「最近の自動車産業はどうか」といった一般的な動向や、「日本の道は細いと聞くが、大型車は通れるのか?」といった、比較的カジュアルで一般的な話題が中心だったとのことです。
●「100億ドル投資」発言のカラクリ。トヨタの「継続の意思」が先行か
今回の懇談で最大の注目点となったのが、トランプ氏側から出たとされる「トヨタによる100億ドル(約1.5兆円)規模の投資」という発言でした。
上田氏は、トヨタ側から「今後、100億ドルを投資します」といった具体的な金額を提示した事実は一切ないと、重ねて強調。
その上で、なぜこの数字が出たのかについて、上田氏は自身の推測を交えて解説しました。
背景にあるのは、トランプ氏の来日以前から、トヨタが日本政府や米国大使館と行っていた水面下でのコミュニケーションです。トヨタは、第1次トランプ政権時代(実績として約100億ドル規模の投資があった)と同様に、「今後も継続して、米国での投資や雇用をしっかりと行っていく」という基本的な方針を、関係各所に伝えていました。
上田氏は、「同規模程度」といった明確な表現は使わなかったものの、この「変わらず投資・雇用を継続していく」というトヨタの意思が、日本政府(高市総理)からトランプ氏に伝えられる過程で、過去の実績額である「100億ドル」という数字と結びついて引用されたのではないか、と分析。
また、レセプションの前にトランプ氏が「トヨタのクルマを買ってほしい」といった趣旨の発言をしたことについても、トヨタ側との事前の打ち合わせは全くなかったと明かしました。
これも、首脳会談でトヨタの投資継続の意思が話題に上った結果、トランプ氏の印象に残り、その場のアドリブ的な発言に繋がったのではないかと推測しています。上田氏は「我々もあのようなアピールをしていただけるとは思っておらず、非常に光栄だ」と述べています。
●豊田会長が伝えた「感謝」。逆輸入は「環境整備」が鍵
では、豊田会長はトランプ氏に何を伝えたのでしょうか。上田氏によれば、懇談の核心は、具体的なビジネスの約束ではなく、豊田会長からトランプ氏へ伝えられた「感謝」の言葉でした。
会長は、「我々民間企業は(関税問題などで)大変な面もある」と前置きしつつも、トランプ氏が進める「ビジネスを活性化させ、日米双方の景気を良くしていこう」というビジネスフレンドリーな政策や、今回の高市総理との経済を重視した会談の姿勢に対し、率直な謝意を伝えたといいます。
「競争環境が厳しくなればなるほど、我々民間企業も頑張りがいがある。この環境を提供してくれて『ありがとう』と、会長は直接伝えた」と上田氏は語りました。
これに対し、トランプ氏も「一緒に色々やっていこう」と応じたとされ、大枠として「日米経済でしっかり協力していく」という両者の意思が確認された形です。豊田会長もこの結果に満足していたといいます。

一方で、もう一つの焦点である「米国産車の逆輸入」については、どのような状況なのでしょうか。
上田氏は、豊田会長や佐藤恒治社長がこれまで述べてきた通り、「検討は継続している」と現状を説明しました。
この問題は、元々、米国側から日本に対する「非関税障壁」の撤廃交渉に端を発しています。
現在、国土交通省などが中心となり、日米間で異なる自動車の「認証ルール」を共通化・相互承認する作業が前向きに進められているようです。
トヨタとしても、2025年の認証問題の際に、日米の法規の違いが開発工数やコストの増大に繋がっている課題を指摘しており、この改善は悲願でもありました。
トヨタのスタンスは、「この認証の環境が整えば、いつでも実行する」というものです。米国の貿易赤字の一因が自動車輸出にあるとすれば、その解消に民間企業として協力したいという思いもあります。
車種については未定としながらも、かつて日本でも販売され公用車としても使われた「カムリ」や、SUVの「ハイランダー」などが候補になり得るものの、最終的には日本のユーザーが「乗ってみたい」と思う魅力的なクルマを選ぶことになるとしました。
今回の会談は、具体的な取引や数字が決定する場ではありませんでしたが、日米の経済関係を象徴する二人が直接対話し、今後の方向性を共有する重要な機会となったようです。
Writer: くるまのニュース編集部
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