レクサスが「次世代LS」世界初公開! 高級セダンの概念を捨て「スペース」へ! コンセプトのまま“量産化”の可能性も!? 「新たなフラッグシップ」の革新的な姿とは!
レクサスは「ジャパンモビリティショー2025」で「LSコンセプト」を世界初公開しました。従来のセダンではなくミニバンのスタイルを採用していますが、どのような経緯で誕生したのでしょうか。
コンセプトのまま“量産化”の可能性も!?
1989年に登場した初代「LS」で高級車の概念を変えたレクサスですが、その後の評価はと言うと、口の悪い人は「レクサスはデラックストヨタ」と言う人もいました。
ただ筆者(山本シンヤ)も思い当たる部分が無かったわけでありません。初代LS以降登場したモデルは見た目こそレクサスでしたが、走りはトヨタとの違いは重箱の隅を突くレベルでした。

しかし、2010年代になるとそれが変わり始めます。それを象徴するモデルが2017年に登場した「LC」です。
プラットフォームを含む主要構成部品を新規開発、まさに「限界を決めずに挑戦する」を体現したモデルでした。このLCの挑戦は、それ以降のモデルにも強い影響を与えました。
ブランドホルダーの豊田章男氏は、レクサスについて「本物を知る人が最後にたどり着くブランド」と位置づけていますが、直近は台数を求めすぎ、本来大事にしなければいけなかったブランドとしての「軸」や「方向性」が若干ブレていたのも事実です。
章男氏の言葉を借りると、「今まではレクサスが長男坊、トヨタが次男坊みたいな感じで、レクサスは長男としてシッカリしなきゃいけないと言う意識があったと思う」と。
ここで言う“シッカリ”とはビジネス面の話のことで、フルラインで量産メーカーが故にプレミアムブランドであっても「量が出るクルマ」を優先してしまっていた反省が込められているのでしょう。
直近では稼ぎ頭のクロスオーバーモデル(NX/RX/TX)やミニバン(LM)は人気で販売も好調でしたが、ブランドの核となるモデルは、その中でもフラッグシップのLSは存在感を無くしていただけでなく、販売も低迷していました。
そこで章男氏は、「新たにTop of Topにセンチュリーを置くことで、レクサスはより思い切った挑戦をすべき」と考えました。そこで掲げたコンセプトは「誰の真似もしない」、「DISCOVER(発見する)」ですが、それらを具体化させた新フラッグシップが、今回、「ジャパンモビリティショー2025」でお披露目された「LSコンセプト」になります。
章男氏は開発陣に「もう1回LSの原点に戻って、『レクサスのフラッグシップがどのようなクルマなのか』を考えてみてほしい」と指示したそうです。
開発陣は章男氏との千本ノックを経て、セダンでも、SUVでもない、ミニバンスタイルとし、それもLMとも異なるリアダブルタイヤ(小径)と言う、まさに誰にも似てないスタイルをつくりあげました。
ただ、勘違いしてほしくないのは、LSをミニバン化させることが目的ではなく、室内スペースをより有効に使う(小径タイヤでフラットフロア)、乗り降りのしやすさの追求(大開口部で3列目のアクセスも楽)、乗員がリラックスして過しやすい空間の構築(あえてキャプテンシートにせずベンチシート)などなど、ショーファーが本当に求める要件を愚直にカタチにしていった結果がこのスタイルになったと言うことです。
そこからも、次世代LSの「S」はセダンではなくスペース(SPACE)を意味していることがわかります。
メカニズムに関してはノーアナウンス。ただ、このパッケージングに加えて、レクサス=コーポレートの中で電動化をけん引する役目を踏まえるとBEVと考えるのが素直です。モーター駆動のほうがレクサスの滑らかな走り、静粛性の高さはより際立つと予想できます。
フットワークは「RZ」譲りのステアバイワイヤシステムに加えて、あの巨体で取り回し性を確保させるためには後輪操舵は必須でしょう。さらに小径タイヤで抜群の乗り心地を実現させるためにはサスペンション革命も求められます。
基本はショーファーですが、ステアリングを握ると「おっ、いいねぇ」と巨体を感じさせない走りも期待したいところです。
LSのあまりの変貌っぷりに、「あくまでもコンセプトだからぶっ飛んでいるけど、量産モデルはもっと普通でしょ?」と思う人もいるかもしれません。
ただ、CBOのサイモン・ハンフリーズ氏の「センチュリーブランドの登場でレクサスは自由になる」、「レクサスはどんどんパイオニアとしてチャレンジすればいい」の言葉を信じると、ほぼそのままの姿カタチで量産化されるような気がします。章男氏も「みんな本気ですから、必ず実現してくれるでしょう」と語っています。
ちなみに次世代LSはこのクルマに留まらず複数のバリエーションを用意しています。その1台が歴代最も美しいLSと言っていい「LSクーペコンセプト」、もう1台が近距離移動用の動く書斎と呼びたくなる自動運転モデル「LSマイクロコンセプト」です。
これにアメリカ・ペブルビーチで世界初公開された「レクサス・スポーツクーペ」も加えて、レクサスフラッグシップ“群”が完成し、TPOに合わせて使い分けられる4台は、まさにライフスタイルブランドにふさわしい組み合わせと言えるかもしれません。
好き嫌いは別として、日本車がイミテーション(模倣)からインプルーブ(改善)を経て、イノベーション(革新)に進むためのチャレンジを筆者は応援したいと思います。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。



























