新車153万円で「7人」乗れる! ダイハツの「めちゃ小さいミニバン」が凄かった! 全長4.2m以下の“極小サイズ”なのに「超お手頃価格」実現! 「ブーンルミナス」を振り返る
ダイハツがかつて販売していたコンパクトミニバン「ブーンルミナス」。3年半という短命に終わった悲運のモデルを振り返ります。
コンセプトは良かったが…時代と市場に認められなかった悲運のミニバン
ダイハツがかつて販売していた3列7人乗りのコンパクトミニバン「ブーンルミナス」。
大きな期待を背負い登場しましたが、わずか3年半という短命に終わってしまったのです。一体なぜなのでしょうか。

ブーンルミナスは、2008年12月に発売されたコンパクトな3列シート7人乗りミニバンです。
トヨタとの共同開発モデルであり、トヨタ版は「パッソセッテ」として販売されました。名称の通り、エントリーコンパクトカーのダイハツ「ブーン」/トヨタ「パッソ」の派生モデルです。
コンセプトは、非常に小柄な取り回しの良いコンパクトなボディに3列シートの利便性を組み合わせ、手頃な価格で提供するというものでした。
ボディサイズは全長4180mm×全幅1695mm×全高1620mmという、5ナンバー枠に収まるどころか、エントリーコンパクトカー並みの非常に小さなもの。
エクステリアは、ブーン/パッソの親しみやすいデザインを踏襲しつつ、室内容積を最大化するための機能的なワンモーションフォルムが特徴です。
インテリアは、クラスを超えた2750mmのロングホイールベースにより、2550mmという広大な室内長を実現。2列目シートには150mmのロングスライド機構が備わっていました。
パワートレインは、最高出力109馬力を発生する1.5リッター直列4気筒エンジンに4速オートマチックトランスミッションのみの設定で、駆動方式はFFを基本に4WDも用意していました。
デビュー当時の新車価格(消費税込)は153万5000円から207万3000円。ミニバンとしては非常に安価な設定で、月販目標500台という意欲的な計画で販売をスタートしました。
しかし、実際には市場での寿命は極めて短く、2012年3月に生産を終了。わずか3年3か月という短い歴史に幕を下ろします。
その短い生涯で一度も改良や特別仕様車の設定が行われなかったことは、メーカーが早い段階で追加投資を断念したことを物語っています。背景には複合的な要因がありました。
最大の敗因は、ターゲットであった子育てファミリー層の必須装備となりつつあった「スライドドア」を持たなかったことでしょう。徹底的なコスト抑制とはいえ、ヒンジドアの採用は、ターゲットユーザーの要求を完全に見誤った判断でした。
また、コンパクトな7人乗りをうたいながらも、3列目シートは実用に供する上ではあまりに窮屈な補助席となっており、まったく実用性がなかった点が指摘されました。
こうしたコストカットゆえの利便性の犠牲は、ブーンルミナスを選ぶ根拠を失っている状態になってしまったのです。
さらに不運も重なりました。発売からわずか半年後に導入された「エコカー減税」の対象外となってしまったのです。
これにより、最大の武器であったはずの「手頃な価格」という魅力も失われ、競合のホンダ「フリード」や、トヨタ「シエンタ」が減税対象となり、ミニバンとして利便性が高いフリードやシエンタのほうが、割安感があったのです。
そのいっぽうで、日本ではなくマレーシアではヒットを獲得。ダイハツの現地合弁会社 プロドゥアに「アルザ」としてOEM供給され、安価でミニマルなミニバンとして支持され、現在も後継モデルが販売中です。
国内では完全に失敗となってしまったブーンルミナスですが、国内ユーザーが求めるコンパクトミニバンの「理想形」の答えを導き出す筋道を作ることにつながりました。それがシエンタです。
安価ながらも使い勝手のよい3列シートと両側スライドドアの採用でヒットしましたが、ブーンルミナスの登場で一度は姿を消します。
しかしブーンルミナスの不調もあって市場のニーズを汲み取った結果、取って代わられるはずのシエンタを再販するという異例の措置が取られたのです。
以後、シエンタは2代目・3代目と代を重ね、現在では販売台数ランキングの上位に君臨するまでになりました。
ミニバンに求められる要素の変容が、このブーンルミナスに詰まっているといっても過言ではありません。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。


































