約113万円! スズキ最新「小型セダン」が実はスゴイ! 1200ccエンジン搭載で「リッター26km」も走る! 硬派な“5速MT”も楽しそうな「ツアーS」印国モデルとは!

スズキが海外で販売するコンパクトセダン「ツアーS」。一体どのようなモデルで、日本市場への導入の可能性はあるのでしょうか。

約113万円! スズキ最新「小型セダン」が実はスゴイ!

 スズキが海外で販売するコンパクトセダン「ツアーS」。

 同車は、日本円にして約113万円という低価格と、リッター26kmを超える優れた燃費性能で注目を集めています。

 このモデルが日本市場に導入される可能性はあるのでしょうか。

約113万円! スズキ最新「小型セダン」が実はスゴイ!
約113万円! スズキ最新「小型セダン」が実はスゴイ!

 ツアーSは、インド市場で絶大な人気を誇るBセグメントセダン「ディザイア」をベースに、タクシーや法人フリートといった商用車市場のニーズに応えるべく開発された戦略的モデルです。

 そのコンセプトは、耐久性と信頼性に優れ、経済的な「ビジネスツール」としての役割を徹底的に追求することにあります。

 車両の骨格には、日本でもお馴染みのコンパクトカー「スイフト」にも用いられている軽量高剛性プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用。

 ボディサイズは、インドの税制上優遇される全長3995mm×全幅1735mm×全高1525mmというコンパクトさで、最小回転半径は4.8mと混雑した都市部での取り回しに優れています。

 一方で、タクシー用途で重要となるトランク容量は382Lと、クラストップレベルの広さを確保しています。

 エクステリアは、ホイールカバーを排したスチールホイールやブラックのドアハンドルといった実用的な仕様ですが、「プロジェクターヘッドランプ」や「LEDテールランプ」といった現代的な装備も採用され、いわゆる商用車にありがちな古臭さを感じさせません。

 インテリアは、機能性とメンテナンスの容易さを最優先した設計で、特に耐摩耗性に優れた素材が使用されています。

 パワーユニットには、1.2リッター直列3気筒「Z12E」型エンジンを搭載。最高出力82馬力・最大トルク111.7Nmを発揮し、同時に26.06km/Lという驚異的な燃費性能を実現。(ガソリンモデルでの値)

 組み合わせるトランスミッションは、耐久性とコストを重視した5速MTのみの設定です。

 安全装備が充実している点もツアーSの大きな特徴で、この価格帯の商用車としては異例なことに、6つのエアバッグと横滑り防止装置(ESP)に加え、リバースパーキングセンサーも標準装備。

 さらに、インドの商用車規制に基づき、最高速度を80km/hに制限するスピードリミッター機能も搭載されています。

 これだけの機能と性能を持ちながら、ツアーSの価格はガソリンモデルで67万9000ルピー(日本円に換算し約113万円)からと、圧倒的なコストパフォーマンスを実現しているのです。

 このようなツアーSですが、インドで成功した最大の理由には、CNG(圧縮天然ガス)モデルの存在があります。

 インド政府が環境政策としてCNGの利用を推進しており、ガソリンに比べて燃料費を大幅に抑えられるため、長距離を走る商用車にとって必然的な選択肢となりました。

 しかし、このツアーSが日本市場に導入される可能性は極めて低いといわざるを得ません。

 ツアーSはインドの市場、政策、インフラに完璧に最適化されたモデルであり、その強みを日本の環境では活かせないからです。

 日本ではスズキ「エブリイ」のような軽バンや、トヨタ「JPNタクシー」のような専用車が商用車市場の主流であり、ツアーSのようなモデルが活躍する大規模な市場は存在しません。

 また、5速MTのみという仕様や「3ナンバー」となる車幅も日本の消費者ニーズとは合致しません。

 さらに、ハイブリッド仕様を選択できるトヨタ「カローラアクシオ」という強力な競合も存在します。

 そして何より、最大の武器であるCNGパワートレインは、CNGインフラがほぼ存在しない日本では事実上無力となります。

 このようなツアーSは、特定の市場に特化しているからこそ他の市場には適合しないという、製品戦略の好例といえるでしょう。

【画像】超カッコイイ! これがスズキ最新「小型セダン」です!(12枚)

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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