トヨタ「“ミニ”2000GT」!? まさかの“スズキ製”な「2ドアオープン」! ロングノーズ“完全再現”な「2020GT」とは
東京オートサロンで話題となったNATS「2020GT」。学生が軽の「カプチーノ」で名車トヨタ「2000GT」を再現したその中身とは、どのようなものだったのでしょうか。
伝説の名車への敬意と現代カスタム文化の融合
2020年の「東京オートサロン」でひときわ異彩を放った一台。それが、日本自動車大学校(NATS)の学生たちが手掛けた「2020GT」です。
コンセプトは「旧車界の異端児的存在」。日本の宝ともいえるトヨタ「2000GT」を、現代のカスタムトレンドである「スタンス」の要素を取り入れながら、スズキの軽自動車「カプチーノ」をベースに蘇らせるという、野心的な作品でした。

その外観は、2000GTの流麗なロングノーズ・ショートデッキを見事に再現しています。これを実現するため、ベース車のホイールベースを250mmも延長するという大改造が施されました。
インテリアにもSparco製のステアリングやKenwood製のオーディオが奢られているなど、内外装ともに手が込んでいます。
足元にはRAYS製の「TE37V」ホイールとESB製の「Battle Works」オーバーフェンダーを装着。フロントに205/45R16、リアには225/45R16サイズのワイドタイヤを履かせ、迫力あるスタイルを構築しています。驚くべきは、この姿で車検を取得し、公道走行が可能であるという点です。
このユニークな一台が公開されると、SNSでは「かっこよすぎる」「カプチーノがベースとは思えない」といった絶賛の声が巻き起こりました。
これほどのカスタムカーを製作したNATSとは、一体どのような組織なのでしょうか。
千葉県成田市に拠点を置くNATSは、1997年から東京オートサロンへの出展を続け、2025年までに244台ものカスタムカーを製作してきた実績を誇ります。その教育レベルの高さは、キャンパス内に国内の教育機関では類を見ない全長1.2kmのサーキットと1.5kmのダートコースを完備していることからもうかがえます。
では、数あるクルマの中から、なぜ学生たちはベースにカプチーノを選んだのでしょうか。
それは、1990年代初頭の軽スポーツカー「ABCトリオ」の中で、カプチーノだけが2000GTと同じFR(フロントエンジン・リアドライブ)レイアウトを持っていたからです。
ミッドシップのホンダ「ビート」やマツダ「AZ-1」では再現が難しい、古典的スポーツカーのプロポーションを再現するための、極めて論理的な選択でした。
そのカプチーノ自体の価値も、今なお色褪せることがありません。その設計は、軽自動車の常識をはるかに超えるものでした。
エンジンを車体中央寄りに搭載するフロントミッドシップ方式により、理想的とされる51対49の前後重量配分を実現。さらに、四輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションやボンネットなどにアルミを多用した700kgの軽量ボディなど、その成り立ちはまさに“小さな本格スポーツカー”でした。
デザイン面では、一台でクーペ、Tバー・ルーフ、タルガトップ、フルオープンと4つのスタイルを楽しめる、3分割式の脱着可能なハードトップもカプチーノを象徴する装備でした。
当初は鉄ブロックの「F6A」エンジン(2020GTのベース)を搭載していましたが、1995年のマイナーチェンジで、より軽量でトルクフルなオールアルミ製の「K6A」エンジンを積んだ後期型(EA21R)も登場しました。
生産終了から20年以上が経った今も人気は根強く、中古車価格は高騰しています。
学生たちの情熱とNATSの教育力、そしてカプチーノという奇跡的なベース車両。そのすべてが融合して生まれたのが「2020GT」だったのです。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

















