なぜスライドドアを装着しないスズキ「ハスラー」の販売が絶好調なのか? イケてる内外装デザインד平らな荷室”で車中泊が可能! コスパ最高の「軽SUV」何がスゴい?
軽の王者「N-BOX」よりも優れているところは?
豊富なボディカラーも、ハスラーを選択する理由のひとつでしょう。特別仕様車の「タフワイルド」も含めると、外装色はモノトーンが6色、2トーンは9種類の組み合わせがあります。
色彩にも工夫を凝らしました。例えばベーシックなグレードに装着される鉄製のホイールも、ペイントしてオシャレに仕上げています。

スチールホイールは、通常はホイールキャップを装着して鉄製であることを隠しますが、ハスラーはあえて素材を生かしており、ボディカラーがブルーとベージュの2トーンカラーなどでは、鉄製のホイールがホワイトになり、カジュアルな外観を実現しました。
基本的な性能では、WLTCモード燃費も注目されます。ターボを装着しない自然吸気エンジンの2WDなら、WLTCモード燃費は25km/Lに達します。
国内販売1位のN-BOXは、最も優れたグレードでも21.6km/Lとなっており、仮にN-BOXからハスラーに乗り替えると、数値上は燃料代を14%節約できます。
ハスラーは価格も割安です。マイルドハイブリッドを搭載するベーシックな「G」は、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を充実させて、2WDが151万8000円です。
前述のN-BOXは、天井が高く電動スライドドアなども備えるため、最も安価な標準ボディでも173万9100円に達するのですが、ハスラーなら、SUVの内外装を採用した上で、N-BOXの標準ボディよりも約22万円安く購入することができます。
このようにハスラーは、スライドドアを備えたスーパーハイトワゴンが全盛の時代に、SUVが備えるカッコ良さと実用性、優れた燃費、アウトドアで快適に使える豊富なディーラーオプション、割安な価格などによって販売が好調です。
この状況を販売店ではどのように見ているでしょうか。
「今はスライドドアを備えたスペーシアやワゴンRスマイルの人気が高いですが、スライドドアが不要なお客様もおられます。スライドドアが付く軽自動車は、価格が高いと指摘されることもあります。ハスラーはこのようなお客様に選ばれることが多いです。
スライドドアがなくても外観がカッコ良く、収納設備は豊富で荷室も使いやすい。スライドドアのない軽自動車では一番魅力的でしょう」
それならスライドドアを装着していないほかの軽自動車はどうなのでしょうか。
「ワゴンRは登場して8年を経過して魅力が下がりました。アルトは法人のお客様が多く、ラパンは独身女性が中心です。ジムニーは全然違うクルマです。そうなると車内が広く実用的で、スライドドアの付かないクルマは、実質的にハスラーだけです」
新型になったムーヴも含めて、スライドドア装着車が増えた代わりに、横開きドアの車種は大幅に減りました。しかも他社の商品は、販売が低迷しています。
ダイハツ「タフト」はハスラーのライバル車ですが、2025年1月~8月の1か月平均は4203台で、ハスラーの50%少々、ホンダ「N-WGN」の1か月平均が2429台で、ハスラーの約30%に留まります。
このような事情で、全高が1600mmを超える横開きドアの軽自動車に対する需要がハスラーに集中しています。
販売店からは「ルーフレールなどを装着するタフワイルドなど、魅力のある特別仕様車を定期的に投入していることも人気の秘訣です」という話が聞かれました。
ハスラーはさまざまな理由により、スライドドアが不要なユーザーを含めて幅広い人達から支持されています。その背景にあるのは、日本のユーザーを見つめる綿密な商品開発なのでしょう。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。







































































