日産「次世代プロパイロット」がスゴイ! 熟練ドライバーのような“ハンドルさばき&判断力”に「人の運転より安心できる!?」 27年度に導入予定の「運転支援技術」開発車を試乗!
次世代ProPILOTの仕組みとは?
ところで、今回同乗試乗したのは、日産が開発を進めている「次世代ProPILOT(プロパイロット)」を搭載した開発試作車。
11個のカメラと5個のレーダーセンサー、そして次世代LiDAR(ライダー)を車両に搭載したうえで、イギリスWayve社「Wayve AI Driver」のソフトウェア技術を活用しているそうです。
ポイントはAIが状況を学習し、システムがどんどん成長していくこと。
日本の運転マナーや運転の傾向をつかみ、環境に調和した運転支援をおこなうというわけです。

「人工知能には驚かされることばかりで発見の日々。人間ができることはだいたいできる」とAD&ADAS先行技術開発部 戦略企画グループを率いる飯島徹也氏は教えてくれました。
注目すべきは、周囲の状況を把握する能力がどんなドライバーよりも優れているという事実でしょう。
いくら運転の上手い人でも、人間の視野角は左右180度しかありません。
前を見ているときに後ろは見えないし、後ろを見ているときは前が見えません。
しかし、この車両は周囲360度の状況を正確に把握。そのうえですべての情報を0.1秒ごとに更新し、運転操作を行うのです。
そんなシステムに、能力として人間がかなうわけがありません。あとはどう育てていくかという点だけなのです。
自動運転レベルとしては現時点では「レベル2」なのでドライバーがすぐに介入する状態を保たなければいけませんが、将来的には本当の自動運転である「レベル4」まで発展させられる能力があるそうです。
ところで、筆者はこれまでも自動運転(レベル4)の能力を持つ実験車両に公道で同乗試乗したことがありますが、この日産の試作車両は従来の筆者の体験とは興味深い違いがあることに気が付きました。
それは“あいまいさ”。システムは完璧にデジタルなのですがやることは「1か2か」というデジタルじゃなく「1.3」とか「1.5」、ときには「1.7」とか「1.65」とか「1.433」だったりとアナログ的な動きをするのです。
どういう意味かといえば、たとえば車線の選び方。
市街地では珍しくない路駐車両がちょっとこちらの車線にはみ出しているような状況では、よくありがちなシステムだと、自動運転に近い車両は一般的に隣の車線へ車線変更します。「1がダメなら2」というわけ。
ところがこの車両は、完全に隣の車線へ移るのではなく少しだけズレて車線をまたぎながら走ったりするのです。まるで人間が運転しているかのように。
つまりこのシステムはスムーズなだけでなく、判断や行動に人間らしさがあるのです。
教科書通りの交通というよりは、例えば、知り合いでもっとも上手なドライバーが運転しているような感じなのです。
とにかくスムーズ、そして違和感なく流れに乗る、交差点で周囲の状況を見ながら「行く、行かない」の判断も適切、そんなことを感じました。

そして最後に驚いたのは、ゴールの停車位置。目的地はホテルだったのですが、クルマはスムーズにクルマ寄せで停車しました。
これも細かく指定したのならあたりまえですが、違うのです。「●●ホテル」という目的地をナビに設定しただけで、周囲の状況を見ながら車両が自ら「クルマをとめるならここだろう」と判断して停車位置を決めているというから凄いとしか言いようがない。
なんとまあ…もし自動運転タクシーの時代が訪れたら、こういう能力も大切なのでしょうね。
ただ、こういったシステムにおいて大前提となるのは安全だというのは言うまでもありません。
このシステムは人間が運転するよりも、事故を起こす確率は低いことを多くの人が理解するべきでしょう。
すでに触れたように人間は一方向しか見られませんが、機械は全方位を見ています。
見落としがないし判断が適切、アクセルとブレーキの踏み間違といった操作ミスなんてまずありませんし、「見えていなかったからぶつかってしまった」ということもないのです。
(他車に突っ込まれてしまったというケースはあり得るものの)事故を減らせる。それが次世代運転支援システムの最大のメリットなのです。
そしてもうひとつ大きなトピックがあります。
それはこの夢のようなシステムが、市販車に搭載される計画があるということ。それも2027年度という“すぐ先”のタイミングで。
まずはドライバーの補助となる「レベル2」とはいえ、ここまで高度な運転サポートシステムが夢物語ではなく一般の人が手に入る技術ときけば、胸アツですね。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。




































