謎の「錆だらけセダン」実車公開! 正体は「存在自体が奇跡」の1台だった 「日本の自動車史に残る“遺産”」が徐々に復元中 74年前の貴重なオオタ「PA型」は今後どうなるのか
昨年2025年に引き続き「ノスタルジック2デイズ」には、林コレクションから日本屈指の貴重な一台「オオタPA型」が展示されました。昨年と異なるポイントや今後について、林 克己氏に話を聞きました。
大切なのは「歴史的価値あるこのクルマを残すこと」
2025年2月に開催された旧車イベント「第16回 Nostalgic 2days(ノスタルジック2デイズ)2025」に、「残っていることが奇跡」と呼ばれるほどの貴重なクルマが主催者特別展示車として飾られました。
それが、林克己氏の「林コレクション」から展示されたオオタ「PA型」です。
それから1年後、2026年2月21日・22日に開催の「第17回 ノスタルジック2デイズ2026」では、新たにレストアが進んだ姿で再展示が行われました。
聞き慣れないブランドのオオタですが、戦前では名を馳せた自動車メーカーでした。レースでも幾多の勝利を重ねたことでも知られています。
オオタの前身は太田 祐雄氏が1912年に設立した「太田工業(太田工場とも)」です。
1933年からは自動車の生産を始めたのち、その技術に注目した三井財閥の出資を受けます。
三井は太田工業の業務を引き継ぎつつ「高速機関工業」を創設。戦後「オオタ自動車」に社名変更を行いましたが、1957年に日産工機の前身であり、「くろがね」などを作っていた日本内燃機製造と合併。ここでオオタブランドは消滅してしまいました。
オオタを代表する2ドアセダン型乗用車「PA型」は、全長3850mm×全幅1440mm×全高1580mmの小さな車体に、20馬力を発生する水冷4気筒760ccエンジンを搭載。
1948年から1954年まで生産されたものの、その台数は決して多くありませんでした。

展示車は1952年型の「PA4型」ですが、このあとに登場した「PA5型」「PA6型」は、エンジンを903ccに拡大、タクシー用として4ドア化されるなど、短い生産期間の割に細かな変更が多いのも特徴でした。
現在86歳の林氏は、第二次世界大戦前の1938年式ダットサン「17型ロードスター」、徹底して合理化を追求した小型大衆車の住之江製作所「フライングフェザー」や富士自動車が作った「富士キャビン」、1952年式に愛知機械工業が生産した「ヂャイアント三輪消防車」、1959年式の S211型ダットサン「スポーツ1000」など、1950年代の生まれのクルマを中心にコレクションを行なってきました。
ところで、かつてクルマは今以上に耐久消費財という側面が強く、また技術も進んでいなかったため、モデルチェンジのたびに数年で「古い」と見なされ、短い期間で廃車されることは珍しくありませんでした。
そのため、現在では貴重で価値があるクルマも、当時はどんどん消えていく運命にあったのです。
しかもオオタはトヨタや日産などの大メーカーに比べて規模が小さく、当時から販売台数は大きく水をあけられていました。そのため、オオタのクルマが残っていることは、奇跡的なことといえます。
戦後の国産自動車黎明期では、後世に残りやすいスポーツカーもほとんどありません。販売のメインだった商用車やタクシーで使われた実用的なセダンばかりで、保存するという概念もなく、自動車を趣味とする人も少なかった時代。
しかし林氏はすでにこれらのクルマに着目してコレクションを始めていたのですから、まさに特筆に値します。
今回、ノスタルジック2デイズ2026に展示されたオオタPA型は、自らクルマを復元する「レストアラー」でもある林氏によりレストアが進み、昨年に比べると一外装パーツの一部を外したのちにボディの補修および塗装が施され、リアバンパーが装着されていることがわかります。
筆者(自動車ライター&イラストレーター 遠藤イヅル)は、林氏に「リアバンパーなんてよく見つかりましたね」と聞いたところ、実際はオオタPA型のものではなく、「似たような形状」のオースチン「A40サマーセット」用リアバンパーを装着しているとのこと。
廃業した自動車部品会社から大量に部品を譲り受けるなどして、長年にわたり蓄えてきたパーツが役に立っているそうです。
「1950年代で1955年頃までのクルマは同じようなスタイルで、ライトやバンパーなどの部品も同じようなデザインなのです。溶接もしやすいので、何でもついてしまいます」と林氏は笑いながら語りました。
続いて林氏に、今後について尋ねてみました。
「『歴史的価値があるこのクルマをいかにして残すか』に尽きると思います。ですので、昨年の状態で維持するのもアリでした。しかしドアが開かないなど不自由なのも確かなので、レストアを進めたのです。夏の暑い中で作業が進みませんでしたが、現状では3割くらいまで復元できました。
今後については、正直なところわかりません。『どこまでレストアするのか』はこれから決めることかなと思っています。私の持っているクルマに多くの人が感動してくれる。それが楽しくてこの会場に来ていますので」
来年の「ノスタルジック2デイズ2027」では、「他に持ってきたいクルマもあるけれど、来年もオオタの展示だとしつこいかな?」とも話していましたが、来年この会場で、再びオオタPA型と元気な林氏に会えることを楽しみにしています。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
























