新車当時817万円! トヨタの「“超レトロ”最高級モデル」が凄い! 全長4.9m級ボディに「旧車デザイン」×豪華“赤レザー&ウッド内装”採用! 超希少車「クラシック」は今がラストチャンス
1996年に発売されたヘリテイジデザイン採用の限定車、トヨタ「クラシック」。そのモチーフとベース車の秘密に迫ります。
トヨタ初の量産乗用車発売60周年を記念
過去のデザインを現代のクルマにモチーフとして採用するケースは珍しくありません。
その中には、フォルクスワーゲン「タイプ1(ビートル)」をリメイクにした「ニュー・ビートル」、英国BMCの「ミニ」を現代流に再構築したBMWの「MINI」、初代モデル(S30型)の面影を感じさせる日産「フェアレディZ」など、車種そのものが過去デザインのリメイク版的デザインで開発されるクルマのほか、少量生産で特別に作られた車種も少なからず存在します。
後者の中でも、トヨタは1990年代後半から2000年頃にかけて、ヘリテイジデザインを盛り込んだ限定車を販売していました。そのひとつが、今回紹介する「クラシック」です。

クラシックは、TECS(TOYOTA EXCELLENT CONVERSION SERIES:トヨタメーカー完成特装車シリーズ)の1台として、1996年に登場しました。
外観でまず目を引くのが、やはり長く巨大なボンネット。さらに独立したフェンダーやバンパー・灯火類などの古典的な意匠と、ワインレッドとブラックのカラーリングです。
これらが、車名のとおりにクラシックな印象を強く醸し出しています。
デザインのモチーフは、1936年にトヨタ初の量産乗用車として誕生したトヨダ(発売当初はトヨタではなく、トヨダを名乗った)「AA型」。
クラシックはトヨダAA型の市販開始60周年を記念して、トヨタテクノクラフト(現:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)で100台のみが限定生産されました。
窓周りの造形が現代流のため、当時の現行車をベースに開発されたモデルであることは明らかですが、それが何なのかは、言われないと決してわからないでしょう。
答えはなんと、当時のピックアップトラックの5代目「ハイラックス」。クラシックの型式が、5代目ハイラックスと同じ「YN86」なのがその証拠です。
よく見るとフロントドア上部前側に、5代目ハイラックス特有のプレスラインが入っていることから、前後ドアやドアミラーはハイラックスの「ダブルキャブ」から流用されたことが察せられます。
それ以外のボディは、カーボンファイバーなどで作られていました。
クラシックのベースにハイラックスが選ばれたのは、ボディの大きさがAA型と近かったため。
AA型は全長4785mm×全幅1730mm×全高1736mm、ホイールベース2850mmで、一方のハイラックスは全長4885mm×全幅1735mm×全高1650mm、ホイールベース2850mmでしたので、たしかに近しいサイズを持ちます。
そしてハイラックスがラダーフレーム構造ゆえ、上に載せる車体の自由度が高かったことも挙げられます。
内装は基本的にハイラックスをほぼそのまま流用するも、ナルディのクラシカルなステアリングホイールや、木目調のダッシュボード、赤い本革シートなどが奢られ、クラシックなイメージに模様変えしていました。
パワートレイルについてもハイラックスからそのまま使用。「3Y-E」型2リッター直列4気筒 OHVガソリンエンジンに4速フロアATを組み合わせていました。車重は1480kgで、思いのほか軽く仕立てられていました。
販売価格は817万円。ほぼ手作りで生産されていたこともあり、当時としてはかなりの高額車でした。
参考までに、「ハイラックス・サーフV6 3400 SSR-G」は約300万円、「ランドクルーザーワゴン VXリミテッド(80系)」が約400万円、「クラウンマジェスタ Cタイプ」が約500万円、「セルシオ C仕様」が約580万円でしたので、いかに高かったのかがわかります。
なおトヨダAA型の開発は1930年頃から始まっています。そして1935年、試作モデルA1型が完成しましたが、エンジンはまだ純国産ではなく、GM(シボレー)の3.4リッター直列6気筒エンジンを参考に図面が引かれたA型エンジンを載せていました。
デザインは、当時流行の流線型を取り入れたアメリカのデソート「エアフロー」の影響を大きく受けていましたが、このデザインを採用したのは、発売までに数年かかる間に古くならないもので、3年後でも流行の中にあるだろう、という研究によるものといわれています。
とはいえ当時はまだ乗用車の需要はあってないような時代で、かつ戦時中だったので、トヨタはまず1935年に「G1型トラック」から発売をスタート。
そして1936年、いよいよAA型のリリースが行われました。セダンボディのAA型には、ほかにもバリエーションとしてフェートン(5座オープンボディ)の「AB型」および軍用フェートンの「ABR型」も設定されました。
現存車は極めて貴重で、AA型は1986年にトヨタテクノクラフトが製作した復元車が、AB型に関しては法政大学が1970年代まで所有していた個体を譲り受け、登場時の姿に戻してどちらもトヨタ博物館で展示。
このほか、石川県の日本自動車博物館にもABR型が保存されています。さらに海外にも、数台残っていることが確認されています。
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2025年9月現在、クラシックは生産台数100台という希少性により、大手中古車検索サイトでの掲載はたった5台のみ。価格帯は500万円台が主ですが、中には1000万円クラスの個体も見られます。
個性的でクラシカル外観に、現代でも充分日常の使用に耐える1990年代のテクノロジーを組み合わせたクラシック。「これは!」と思われた方は、買えなくなる前に急いで手に入れたほうがいいかもしれません。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。


























