「シルビア」後継!? 日産「2ドア“FR”クーペ」に注目! 全長4.1m“ちょうどいい”カクカクボディに「名車オマージュ」デザイン採用! 「テンロク“ターボ”」搭載で運転楽しそうな「IDx」コンセプトがスゴかった!
2013年の第43回「東京モーターショー」で突如公開され、現実味ある姿から「市販化も間近か!?」とファンを熱狂させた日産のコンセプトカー「IDx」。どのようなモデルなのでしょうか。
市販化の噂も根強かった「小型FRクーペ」
コンセプトカーは、自動車メーカーが未来の技術やデザインの方向性を示すために製作されますが、過去を振り返ると、市販化を強く熱望されながらも叶わなかった“幻の名車”が存在します。
2013年の第43回「東京モーターショー」で日産がサプライズ公開した「IDx」も、そうした一台として多くのファンの記憶に刻まれています。

IDxが生まれた背景には、当時の若者、特に1990年以降に生まれた「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代のクルマ離れがありました。
日産は、彼らが単なる消費者ではなく、自ら参加しカスタマイズすることを好む世代であると分析し、開発初期段階から彼らを巻き込む「コ・クリエーション(共同創造)」という革新的なプロセスを採用したといいます。
この対話から生まれたのが、ライフスタイル志向の「IDxフリーフロー」と、モータースポーツ志向の「IDxニスモ」という2つの個性を持つコンセプトカーです。
IDxという名前は、自己を示す「ID」と、新たな価値観を生む変数を意味する「x」を組み合わせたもので、この開発哲学そのものを表現するものでした。
エクステリアは、かつての名車「ダットサン・ブルーバード(510型)」や「初代シルビア」「ハコスカ(C10型)」など、日産の歴史を彩った小型スポーツセダン・クーペを彷彿とさせる、シンプルでクラシックな3ボックススタイルが特徴です。
これは単なる懐古趣味ではなく、新世代が重視する“本物らしさ”を、自社の歴史的遺産を引用することで表現しようとする意図がありました。
IDxフリーフローは、全長約4.1m、全幅約1.7mのコンパクトなボディに、フローティングルーフやフェンダーミラーを採用。内装にはデニム素材を用いるなど、リビングルームのようなリラックスできる空間が演出されていました。
一方のIDxニスモは、全幅を約1.8mに拡大。サイド出しマフラーや大型スポイラー、リベット留め風のオーバーフェンダーを備え、510型ブルーバードをベースにしたかつての「BRE 510」レーシングカーを思わせるカラーリングが施されるなど、スパルタンな仕上がりとなっていました。
内装も、深紅のアルカンターラで覆われたバケットシートなど、まさにレースカーのコックピットそのもの。
パワートレインはFR(後輪駆動)レイアウトを基本とし、フリーフローには1.2リッターまたは1.5リッターの自然吸気エンジンとCVT、ニスモには「ジュークニスモ」にも搭載された1.6リッター直噴ターボエンジンと6速マニュアルモード付きCVTが想定されていました。
これほど具体的で、ファンからも熱烈に支持されたIDxが、なぜ市販化されなかったのでしょうか。
最大の障壁は、コスト効率に優れた小型FRプラットフォームを当時の日産が保有していなかったことでしょう。
既存のFRプラットフォームは中型車から大型車用のため流用しづらく、しかも少量生産が見込まれるため、新たに開発するには採算が合わなかったとみられます。
トヨタ「86」やスバル「BRZ」の登場でFRスポーツ市場は盛り上がっていたものの、日産は投資を回収できるほどの利益が見込めないと最終判断されたのかもしれません。
一方で、そんなIDxが発表当初から「次期シルビア」として強く認識されたのには理由があります。
それは、コンパクトなFRクーペにターボエンジンを搭載するという、S13型からS15型までのシルビアが体現した“成功の方程式”を、IDxニスモが明確に受け継いでいたからです。
※ ※ ※
市販こそされませんでしたが、「顧客と共創し、心に響くクルマを造る」というIDxの思想は、多くのファンが抱く「手頃で、運転が楽しく、自分らしくいられるFRスポーツカーが欲しい」という願いの象徴となりました。
その輝かしいコンセプトは今なお色褪せることなく、日産が創り得たかもしれない“最高の未来”の姿として、語り継がれています。
今年2025年秋開催予定の「ジャパンモビリティショー2025」でも、日産はまた心に響くコンセプトカーを披露するのか、期待が高まります。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。















































