高速道路の渋滞「左・中央・右」どの車線が速い? 「右に行けば速い」はウソ? 渋滞悪化の理由とは

高速道路の渋滞で「左・中央・右のどの車線が速いのか」と悩む人は多いですが、実は明確な“正解”はありません。NEXCOの実験では追い越し車線の交通量をわずか減らすだけで渋滞が大幅に緩和する結果が出ています。焦って車線変更を繰り返すほど逆に遅くなることもあり、渋滞を避ける近道は「キープレフト」と無駄な車線変更を控えることだといいます。

なぜ渋滞は起きる? 始まりは「追い越し車線」への集中

 高速道路の渋滞は、週末になると数十キロという長さになり、連休だとさらに長い渋滞となります。

 そうしたなかで、3車線以上ある区間の場合、「左・中央・右、どの車線が一番早く進むのか」と気になる人も少なくありません。

 しかし、その「少しでも早く」という思いで行う車線変更が、実は渋滞をさらに悪化させている可能性があります。

 今回はドライバーにとって長年の悩みとなる、渋滞が発生するメカニズムを改めて解説し、NEXCOの見解や実験データを基に、渋滞を少しでもスムーズに乗り切るための賢い走り方について掘り下げていきます。

連休の大渋滞「左?右?中央?」車線選びの正解は?(画像はイメージ/フォトAC)
連休の大渋滞「左?右?中央?」車線選びの正解は?(画像はイメージ/フォトAC)

 高速道路を利用する際、誰もが「少しでも早く目的地に着きたい」と願うものです。

 その心理から、「左、中央、右の3車線のうち、一体どの車線が一番早く進むのだろうか」という疑問が浮かびます。

 この問いに答える前に、まずは渋滞の発生メカニズムを理解する必要があります。

 高速道路で渋滞が起きる主な原因の一つは、最も右側にある「追い越し車線」への車両の集中です。

 渋滞が始まると多くのドライバーが「追い越し車線なら速いはずだ」と右側に移動しようとします。

 しかし、クルマが集中すれば当然車間は詰まり、ブレーキの頻度が増えて流れが滞ります。

 その結果、誰かがブレーキを踏むと、その影響が後続車に次々と伝播し、大きな速度低下の波となって渋滞を引き起こすのです。

 たまに高速道路上で「追い越し車線から渋滞が始まる」という横断幕が掲示されているのは、このメカニズムをドライバーに伝えるためです。

 また、渋滞の原因はこれだけではありません。

 インターチェンジやサービスエリア、パーキングエリア付近の合流地点では、流入車に合わせて速度を落とす必要があり、後続の流れが乱れやすくなります。

 また、下り坂から上り坂にかかる「サグ部」では自然に速度が落ちやすく、これも渋滞の温床となります。

 こうした場所では急な車線変更や不必要なブレーキを避けることが混雑防止につながり、各高速道路会社も「渋滞先頭まで○km」などの表示や注意喚起でドライバーに情報を提供しています。

 では、結局どの車線を走るのが賢明なのでしょうか。

 この疑問に対し、過去の取材でNEXCO東日本の担当者は、「渋滞時の状況によって変わるため、最も速く進むことのできる車線はない」と説明していました。

 むしろ、特定の車線にクルマが集中するのではなく、複数の車線を均等に使ってもらうことが、渋滞の緩和につながるという見解を示していました。

 この見解は、実際のデータによっても裏付けられています。

 過去にNEXCO東日本が行った実験では、追い越し車線の交通量をわずか6%減少させるだけで、渋滞時間が1.5時間も短縮。

 最大渋滞長も12km減少するという結果が報告されています。

 これは、多くのドライバーが追い越し車線への移動を少し控えるだけで、全体の交通の流れが劇的に改善されることを意味します。

 またNEXCO各社も「焦りからむやみに車線変更を繰り返す行為は、後続車にブレーキを踏ませる原因となり、かえって渋滞を悪化させる」と呼びかけています。

※ ※ ※

 結局のところ、渋滞を少しでも緩和するために最も効果的なのは、交通の基本原則に立ち返ることです。

 道路交通法第20条では「車両通行帯」について定められており、クルマは原則として一番左側の車線(走行車線)を走ることが義務付けられています。

 これが「キープレフトの原則」です。

 追い越し車線は、文字通り前のクルマを追い越す時だけに使用し、追い越しが終われば速やかに走行車線へ戻らなければなりません。

 この基本ルールは渋滞時でも重要であり、NEXCO各社も「キープレフト」で左側の車線を走行することを推奨しています。

 ひとりひとりが「自分が少しでも早く」と考えるのではなく、「全体の流れをスムーズにする」という集団意識を持つこと。

 これが、結果として渋滞という大きな損失を減らすことにつながります。

 どの車線が早いかと探すよりも、走行車線を基本とし、不要な車線変更を控えること。

 それが、巡り巡って自分自身が早く目的地に到着するための、最も確実な方法と言えそうです。

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Writer: くるまのニュース編集部

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