「NHKの制度見直しのきっかけに…」 静岡県沼津市の職員に対し、市が払った「カーナビ等のNHK受信料」の返還を求める住民監査請求、なぜ?
「これはやり過ぎ」「職員がかわいそう」。静岡県沼津市で起こったある住民監査請求をめぐり、ネット上で担当職員への同情の声が相次いでいます。市が支払った公用車のカーナビなどのNHK受信料約97万円について、市民が「テレビ機能のない機種を選ぶ義務を怠った」として、市の担当職員に返還を求めたのです。なぜ未払いが発生し、そしてなぜ職員個人が返還を求められる事態になったのでしょうか。
ネット上では「これはやり過ぎ」「NHKの受信料制度を見直すきっかけになれば」などの声も
静岡県沼津市は今年7月、公用車に設置されたカーナビなどのNHK受信料について、未払となっていた受信料約97万円を支払いました。
この問題をめぐり、市民が市の担当職員に対し、市が支払った受信料の返還を求める住民監査請求をおこなったことが話題となっています。

静岡県沼津市は今年5月、所有する公用車6台のカーナビと事務用の携帯電話2台についてNHKとの受信契約をしておらず、受信料が未払いとなっていたことを公表しました。
なお未契約だった車両は、市長部局のマイクロバス1台と電気自動車1台、議会事務局の議長車1台、水道部の給水車2台とトラック1台で、未契約だった携帯電話は教育委員会事務室用の2台。
未契約期間は最も長いもので、14年11か月におよんでいたということです。
その後沼津市は7月に、未払いだった受信料約97万円を支払いました。
また、テレビ受信機能付きのカーナビが付いた公用車は未契約だった6台を含め全部で7台ありましたが、そのうち5台のカーナビを取り外し、災害時にテレビ機能を必要とする給水車2台のみ受信契約を継続しています。
この問題をめぐっては今年8月、市の職員に対し、市がNHKに支払った受信料の返還を求める住民監査請求がおこなわれたことが話題となっています。
住民監査請求とは、市民が「市長や市の職員による違法または不当な公金の支出、財産の管理、契約の締結など財務会計上の違法がある」と考えるときに、監査委員に監査を求め、必要な措置を請求する制度のことです。
今回の事例では「市の職員が災害時などで必要な場合を除き、テレビ受信機能がないカーナビを選ぶ義務を怠った」として、市民が担当職員に、市が支払ったNHK受信料分を返還するよう求めました。
住民監査請求に対して市の監査委員は9月4日、要件を満たしているなどとして、請求書を受理しています。
今後、監査委員事務局は住民監査請求をおこなった市民に意見陳述の場を設けたり、関係部署への聞き取りをしたりして、10月25日までに返還の請求を勧告するか、請求を棄却するか決定するということです。
このニュースに対してインターネット上では、「担当職員個人がここまで責任負わされるなら、いくら公務員とはいえ誰もこんな仕事したくないだろう」、「これはやり過ぎと感じる」、「これ訴えられた職員がかわいそう。なんの責任?」など、職員に対する監査請求がおこなわれたことに疑問の声が多く上がっています。
また「受信料をめぐるNHKへの不満の矛先が市職員に向かったものと思われるが、今後このような動きが全国に拡大するのではないか。担当職員は気の毒だが、これがNHKのあり方や受信料制度を見直すきっかけになれば良い」、「NHKが受信料徴収のやり方を変えるべき」といった意見も寄せられました。
そもそも、NHK受信料の支払いに関しては放送法第64条第1項で次のように規定されています。
「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、同項の認可を受けた受信契約の条項で定めるところにより、協会と受信契約を締結しなければならない」(条文を一部抜粋、協会=NHK)
つまりNHKの放送を受信できる機器であれば、テレビに限らずスマートフォンやパソコン、カーナビなどについても受信契約の対象となります。
さらに、一般家庭の場合は複数の受信機器を所有していても必要な受信契約は1件である一方、企業や官公庁といった事業所の場合は部屋や車両など「設置場所ごと」に受信契約が必要となります。
この仕組みにより、全国の自治体の公用車などでNHK受信料の未払いが相次いでいるといえるでしょう。
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これまでに一部自治体の知事や市長からは、受信料支払いのルール変更を求める声も上がっています。
これを受けて受信料徴収のあり方が変わるのか、その動向が注目されています。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。
















