なぜ「“背の低い”ミニバン」消滅した? かつての「ウィッシュ」「ストリーム」は大ヒットしたのに…今では「ほぼ絶版」 スタイリッシュ&走りの良い「低高ミニバン」不人気の理由は

高い汎用性から根強い人気をもつ「ミニバン」。今では両側スライドドアを装備し、全高が1700mmを超える背の高いモデルが人気です。しかし、かつては「背の低いミニバン」も人気を獲得していました。一体なぜ消滅してしまったのでしょうか。

あれだけヒットしたのに… なぜ「背の低いミニバン」消えた?

 ここ数年はアウトドアレジャーのブームなどもあり、クロスオーバーSUVが圧倒的な人気を誇ってはいますが、多人数乗車が可能な3列シートミニバンも依然、ファミリー層を中心に根強い人気をキープしています。

低全高ミニバンの火付け役となったホンダ「ストリーム」
低全高ミニバンの火付け役となったホンダ「ストリーム」

 現在、新車で販売されるミニバンの主流車種は背が高くスライドドアを備えたものがほとんどです。

 小さなものでは5ナンバー(小型車)サイズのトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」、全長4.7mほどで、ちょうどよいサイズとして需要の高いミドルクラスでは、日産「セレナ」、トヨタ「ノア/ヴォクシー」、ホンダ「ステップワゴン」があります。

 そして上級クラスとなれば、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」やレクサス「LM」といったところがよく知られ、なかでもアルファードは高額でありながらも販売台数ランキングでもトップレベルを維持しています。

 しかし、かつてはスライドドアではなくヒンジドアを装備し、また全高も低めとなっていたモデルがラインナップされ、人気を集めていた時代もありました。

 その代表格とも言えるのが1994年に登場したホンダ「オデッセイ」です。

 当時の生産設備の関係上、背の高いモデルを作れなかったホンダが苦肉の策で生み出した1台でしたが、走行性能面では不利な大型ボディになりやすい3列シート車にもかかわらず、乗用車ライクな走り味が楽しめる車両として一躍大人気モデルとなったのでした。

 そしてこのオデッセイの人気を受け、トヨタからは「イプサム」、日産からは「プレサージュ」、三菱から「シャリオグランディス」が登場。

 さらに2000年にはよりコンパクトなボディを持った5ナンバーサイズの「ストリーム」がホンダから登場することとなりました。

 ストリームもヒットを記録し、これに対抗してトヨタからは「ウィッシュ」が追従するかたちで登場するなど、主要メーカーの多くが背の低いミニバンをリリースしたのです。

 しかし現在ではその流れを作ったオデッセイ自身も、2013年登場の現行モデルで背の高いスライドドアを備えるものへと一新。

 イプサムやプレサージュ、シャリオグランディス、ストリーム、ウィッシュなどはすべて終売となっており、現在ミニバンといえば、前述したように背の高いスライドドアを備えるモデルとなっています。

 ここで、なぜ一世を風靡した背の低いミニバンが「全滅」してしまったのかという疑問が沸き上がります。

 その理由は単純で、ミニバンユーザーの多くが背が高いスライドドアを備えるモデルの利便性を知ってしまったからでしょう。

 特に子どもがいる家庭などでは広い室内空間を経験してしまうと、今更背の低いミニバンには戻れない、というのが大きな理由と言えるでしょう。

 また、現在人気が高まっているクロスオーバーSUVでは、ミドルサイズ以上のモデルで3列シート車が存在しているため、ミニバン以外で3列シート車の選択肢が豊富というのも、背の低いミニバンが廃れていった理由のひとつかもしれません。

 ただし、軽自動車の人気を見ると、ミニバン同様に背の高いスーパーハイト軽ワゴンは売れ筋ですが、スライドドアを備えるものの背の高くないトールワゴンタイプのスズキ「ワゴンRスマイル」やダイハツ「ムーヴ/ムーヴキャンバス」なども支持を獲得しています。

 利便性が高いスライドドアは欲しいが、背の高さは不要だとするユーザーにとって、今後「背が低くスライドドアを備えたモデル」の需要が増えてくる可能性もありそうです。

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Writer: 小鮒康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。

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