コインパーキングで「冠水」!? “出庫不能”だと「料金どうなる」? 「ゲリラ豪雨」でも駐車料金は「満額」払うべきなのか?

台風やゲリラ豪雨でコインパーキングが冠水し、クルマが出せなくなる。そんな悪夢のような状況で、駐車料金は刻一刻と加算されていきます。この料金、はたして満額支払う義務があるのでしょうか。

ドライバーが取るべき最善の策とは

 台風や集中豪雨によりコインパーキングが冠水し、愛車が出庫不能になる事態は、ドライバーにとって深刻な問題です。

 物理的にクルマを動かせないにもかかわらず、精算機は時間を刻み続け、高額な料金が加算され続けます。

万が一、コインパーキングで「冠水」に見舞われたとき、一体どうなる!?[イメージ画像:PhotoAC]
万が一、コインパーキングで「冠水」に見舞われたとき、一体どうなる!?[イメージ画像:PhotoAC]

 この料金の支払い義務について、結論から言うと、大半のケースにおいてドライバーは「満額を支払う法的な義務を負う」というのが厳しい現実です。満額支払った後に異議申し立てをしても、返金の可能性はありません。

 その最大の理由は、コインパーキングの利用契約が、車両を預かり安全を保証する「寄託契約」ではなく、単に駐車スペースを時間単位で貸す「場所貸し契約」として定義されているためです。

 コインパーキング業界大手のA社は、自社のサービスについて「お客様のお車をお預かりするサービスではなく、短期間駐車するためのスペースをご提供するもの」と公式サイトに示した約款で見解を示しています。

 つまり、車両がスペースを占有し続けている限り契約は継続しており、料金は発生し続けるのです。

 さらに、各社の利用規約には「天災地変」や「不可抗力」による損害は事業者の責任を免除するという「免責条項」が盛り込まれているのが一般的です。

 これは、台風や洪水といった自然災害は、事業者の管理が及ばない外部要因と見なされているためです。

 しかし、この原則は絶対ではありません。

 例えば、駐車場の排水ポンプのメンテナンスが不十分であったなど、事業者の「過失」が損害の発生や拡大に寄与した場合は、消費者契約法や民法上の工作物責任を根拠に、事業者の責任を追及できる可能性があります。

 ただし、その過失を利用者側が証明するのは極めて困難なのが実情です。

豪雨が予想されるときは2階建て以上の高い建物の駐車場などに停めるのが良いでしょう[イメージ画像:PIXTA]

 では、ドライバーはどうすれば良いのでしょうか。

 最も重要なのは、駐車料金の減免交渉に固執するよりも、より大きな金銭的損害である「車両の損害」に目を向けることにあります。

 幸いなことに、台風や洪水による車両の水没被害は、一般的な自動車保険の「車両保険」の補償対象となります。エンジンが修理不能になるなどの「全損」と判断されれば、契約した保険金額の全額が支払われる可能性があります。

 ただし地震・噴火、およびそれに起因する津波による損害は、標準の車両保険では補償されない点には注意が必要です。

 そして、何よりも効果的な対策は「予防」です。

 自動車メーカー各社やJAFも、台風の接近が予測される場合、事前にハザードマップで駐車場所のリスクを確認し、車両を安全な高台や立体駐車場(2階以上)へ避難させることを強く推奨しています。

 万が一、車両が冠水してしまった場合は、二次災害を防ぐために絶対にエンジンをかけてはいけません。

 エンジン内部に水が浸入した状態で始動させようとすると、「ウォーターハンマー現象」によりエンジンが物理的に破損するおそれがあります。

 特にハイブリッド車や電気自動車などは、高電圧システムによる感電のリスクがあるため、絶対に車両に触れず、速やかに販売店や専門業者に連絡してください。

まさかの高額請求! 支払うしかないのか!?[画像はイメージです]

 結論として、災害でコインパーキングから出庫できなくなった場合、駐車料金の支払い義務は法的に発生する可能性が高いです。

 しかし、より高額な車両の損害は車両保険でカバーできます。

 ドライバーが取るべき最善の策は、駐車料金の支払いは受け入れつつ、そのエネルギーを保険請求と安全確保に集中させ、そして何よりも、事前の車両避難という「予防」を徹底することに尽きるといえるでしょう。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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