トヨタの高級ミニバン「アルファード」。2002年から初代モデルが発売され、2008年には兄弟車にあたる「ヴェルファイア」も発売されました。

　以降、国内高級ミニバンの筆頭として国内外で人気を博しており、高額な車両ながら、現在もミニバンでトップレベルの販売台数を維持しています。

　現行車はアルファード4代目、ヴェルファイア3代目となり、2023年6月に発売されました。

　モデルチェンジするたびに進化していくラグジュアリー感、そして室内の広さや使い勝手は、ミニバンクラスにおいて他社を一歩リードしているともいえるでしょう。

　初代から引き継いできた高級感のあるデザインや内装はそのままに、「TNGA GA-K」プラットフォームによる基本性能のレベルアップ、そして先進運転支援「トヨタ セーフティ センス」の進化が実現されました。

　現行アルファードの登場当初は、上級モデル「Z」と最上級仕様「Executive Lounge（エグゼクティブラウンジ）」のアッパーモデルのみのラインナップで、先代に設定されていた8人乗り仕様「X」のような廉価モデルは用意されていませんでした。

　ところが2025年1月、国内ミニバン初となる「PHEV（プラグインハイブリッド）」仕様の2.5リッターモデル、4人乗りのカスタマイズモデル「Spacious Lounge」の設定とともに、8人乗り仕様である廉価モデル「X」が新たに設定されました。

　Xは、上級グレードの一部の装備を省略してコストを徹底的に抑えつつ、基本装備を確保しています。

　パワートレインは、2.5リッター直列4気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドモデルのみ。上級グレードZに設定されているシンプルなガソリンモデルはありません。駆動方式は2WDと電子4WD「E-Four」から選択可能です。

　燃費は2WDモデルが18.9km／L、E-Fourモデルは17.5km／L（WLTCモード）をマークしています。重たい大型ミニバンとしてはなかなか良い数値といえるでしょう。

　エクステリアには、上級グレードに装着されるシーケンシャルターンランプやデイタイムランニングランプは装備されません。ホイールは17インチホイールですが、スパッタリング塗装がありません。

　ボディカラーは「プラチナホワイトパールマイカ」と「ブラック」の2色のみの設定。エクステリア設定は必要最低限ながら、アルファードらしいラグジュアリー感と存在感は十分感じられる装備です。

　インテリアはファブリック素材のシート表皮となり、コストダウンのために合成皮革は省かれています。ヒーターやベンチレーションの装備はなく、1列目シートは電動ではなく、手動による調整。

　そして2列目シートは6：4分割の3人掛けシートとなり、チップアップ機能により荷室を広げることもできます。

　3列目シートはスペースアップシートです。跳ね上げれば広い荷室もできあがり、広々とした5人乗車モードに変更可能です。

　Xは廉価モデルなので内装や装備の一部は徹底的にコストカットされている部分もありますが、基本的な装備は必要にして十分です。ある程度の加飾などもあり、安さは感じません。

　標準装備としては、両側パワースライドドアやスマートキーはもちろん、先進機能ではプリクラッシュセーフティや全車速レーダークルーズコントロール、運転を先読みしてアシストする「プロアクティブドライビングアシスト」などの「トヨタ セーフティ センス」も装備されています。

　さらに、最安でありながら「ブラインドスポットモニター」や「パノラミックビューモニター」、「降車アシスト」などの上級安全装備も標準。全く上級グレードに見劣りしない設定となっています。

　そして最安モデルXの魅力は、なんといっても価格面です。価格（消費税込）は、2WDモデルが510万円、E-Fourモデルが532万円の設定。

　デビュー当初、ハイブリッドモデルの最安だったZ（635万円・E-Fourは657万円）と比較すると125万円も安く、実に手頃です。

　最上級モデルの「スペーシャスラウンジ」（1272万円から1480万円）と比べると、半額以下と驚異的な安さを誇ります。

　アルファードXの手の届きやすい価格設定は、ミドルサイズミニバンからの乗り換えも容易で、高級ミニバンにステップアップしつつ、お値打ちに購入したいユーザーにとって大きな魅力といえるでしょう。

　最安モデルとしての設定ですが、基本装備や安全装備はしっかりと備わっており、大変コストパフォーマンスの良いグレードとしても評価できます。