“ありがとう”の「サンキューハザード」が違反に!? でもやらないと「マナー違反認定」で“あおり運転”の被害にも? 正しく知っておきたい「ハザードランプ」の使い方とは
車線変更や合流時に点滅する「サンキューハザード」ですが、実はあいまいな慣習だったといいます。正しい意味や起源、法的な扱いとはどのようなものなのか、改めて紹介します。
法律上は「推奨されていないグレーゾーン」!?
道路を走っていると、車線変更や合流時に道を譲る場面がありますが、譲られたクルマがハザードランプを2、3回点滅させて走り去る光景を目にしたことがある人も多いでしょう。
この行為は「サンキューハザード」と呼ばれ、言葉を交わせない状況で感謝を伝えるジェスチャーとして、多くのドライバーに親しまれています。

サンキューハザードは、道を譲ってもらった際にハザードランプを短く点滅させ、“ありがとう”の気持ちを示す行為です。
合流時や車線変更時などの譲り合いの場面でよく使われ、日本ならではの「非言語コミュニケーション」として定着しています。
特に高速道路など、直接意思表示が難しい場面での使用が顕著です。
この慣習は、1980年代ころに高速道路を長距離運行するトラックドライバーの間で始まったといわれています。
夜間走行時に感謝や情報共有の手段としてハザードを使ったのがきっかけで、徐々に一般ドライバーにも広がっていきました。
なお、「サンキューハザード」という名称が最初からあったわけではなく、行為の普及とともにメディアやSNSで取り上げられるようになり、自然とこの呼称が定着したと考えられています。
感謝を表す「サンキュー」と、非常点滅表示灯を意味する「ハザード」を組み合わせたこの言葉は、意味が分かりやすく、広く受け入れられてきました。
一方で、道路交通法上ハザードランプは「非常点滅表示灯」とされており、その使用は“危険の告知”や“異常の表示”に限定されています。たとえば、夜間の駐停車、通学バスの停車、故障車の警告などが正規の使用例です。
このため、サンキューハザードは厳密には法令上の正しい使い方には該当せず、グレーゾーンの扱いになります。
とはいえ、実際にこれが交通違反として取り締まられるケースはほとんどなく、ドライバー間の慣習として黙認されているのが現状です。
ただし注意すべきは、誤ったタイミングや状況でサンキューハザードを使うと、他車に誤解を与え、重大な事故にもつながる恐れがあるという点です。
NEXCO各社のホームページでは、高速道路の渋滞の後方にいるときはハザードランプを点灯して、追突されないよう後続車に合図することをマナーとして挙げています。
これは「緊急事態を伝える」という本来のハザードランプの使い方に近いものであり、実際に多くのドライバーが高速道路の渋滞の末尾などで実行しているのを見かけます。
もしサンキューハザードを前方の緊急事態と誤認され、後方のドライバーがあわてて急ブレーキを踏んでしまったら、後続車などとの追突や接触の危険が高まりかねません。
これは極端な例ですが、交差点や合流直前、渋滞の末尾といった状況では特に混乱を招きやすく、慎重な判断が必要です。
またサンキューハザードは日本特有の文化であり、外国人ドライバーや初心者には意味が伝わらない場合もあります。そのため、「されて当然」と期待せず、あくまで好意として受け止め、トラブルを避ける姿勢が求められます。
では、「サンキューハザードをしないのはマナー違反か?」という問いにどう答えるべきでしょうか。
実際には、サンキューハザードは義務ではなく、しなかったからといってマナー違反とはされません。
ただし日本の道路文化には「譲られたら礼を返す」という相互礼儀の感覚が根付いているため、無言のままだと「無礼」と感じられることもあるのが実情です。
そうした些細なことがきっかけとなって、たとえば執拗な煽り運転の被害にあわないとも限りません。
とはいえ、運転中は安全が最優先です。
状況が複雑だったり、ハザードを点灯させる余裕がなかったりする場合には、軽く手を挙げる、会釈するなどのジェスチャーでも感謝の気持ちは十分に伝わります。
近年では、後方から見える「ありがとうランプ」などのグッズも登場しており、安全かつ明確な代替手段として注目されています。
※ ※ ※
サンキューハザードは違反ではないものの、法律上は“推奨されていない”グレーゾーンに位置づけられます。
多くのドライバーにとっては礼儀の一つとして定着していますが、誤解や危険を招く可能性も否定できません。
使用するかどうかは状況に応じて判断し、周囲への安全配慮と円滑なコミュニケーションを心がけることが、快適なカーライフへの第一歩といえるでしょう。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

























