いすゞの「高級ミニバン」!? 3.2リッター「直4」ディーゼル搭載&普通内装の「廉価モデル」! 約300万円の「ファーゴ・フィリー」とは?
次期モデルのティザー画像が公開され、盛り上がりを見せる日産「エルグランド」。その初代モデルには、なんと他社に「ファーゴ・フィリー」という兄弟車が存在しました。どんなクルマだったのでしょうか。
いすゞの高級ミニバン!?
クルマに限らず工業製品には、他社で自社ブランドの製品を製造してもらうOEM(Original Equipment Manufacture)によって供給されることがあります。

その一例が、1992年に乗用車の自社開発・生産から撤退したいすゞです。販売を継続するために他社から乗用車のOEM供給を受けることになり、ホンダ「ドマーニ」を「ジェミニ」、スバル「レガシイ」・ホンダ「アコード」を「アスカCX /アスカ」として販売していました。
乗用車部門撤退の余波は1BOXワゴンの「ファーゴ・ワゴン」にもおよび、1995年から、同車は日産「キャラバン/ホーミーコーチ」のOEM車になりました。
一方日産は、1997年5月に「キャラバンエルグランド/ホーミーエルグランド」(以下、エルグランドと表記)の販売を開始。これに合わせていすゞも、エルグランドのOEM車であるファーゴ・フィリーを同年7月に発売しました。
OEM車には、ブランドを変えた際に内外装はほぼそのままでエンブレムを変えるだけの場合と、大きく外観を変える場合がありますが、ファーゴ・フィリーは前者で、初代エルグランドと見た目や内装はほぼ同じ。
しかし実はグリルとリアガーニッシュが微妙に異なっており、エンブレム以外にも外観から見分けることが可能でした。
エンジンはキャラバンのOEM車だったファーゴ・ワゴン同様に、ディーゼルのみとされました。ただしディーゼルを得意とするいすゞの自社製エンジンではなく、エルグランドと同じ日産製の3.2リッター直4ターボディーゼルを搭載。トランスミッションは4速オートマチック、駆動方式が後輪駆動(2WD)と4WDの2種用意されたのもエルグランドと同様です。
グレード展開は2種類で、エルグランドの「V」に相当するその名も「フィリー」と、エルグランドでは「L」にあたる「Eタイプ」を設定。Eタイプはオートライトや電動格納式ドアミラー、オートクロージャー付きスライドドア、アルミホイール、内装の木目調パネルなどが省かれた廉価版でした。
1997年8月時点における2WDモデルの車両本体価格を見ると、フィリーが299万8000円、Eタイプは275万5000円で、これはベースモデルである3.2ディーゼルエンジンを積むエルグランド「V」「L」と同一価格でした。
その後ファーゴ・フィリーは、1998年にV6ガソリンエンジン搭載車を追加。1999年にはマイナーチェンジを行なって車名を単なる「フィリー」にして、グレード体系も「タイプL」「タイプE」に変更。ディーゼルエンジンを直噴3リッターに載せ替えています。
さらに翌年のマイナーチェンジではV6エンジンを3.5リッターに換装。この際、タイプEが廃止されてモノグレード化するなど、小刻みな改良や変更を繰り返しましたが、エルグランドとの差別化は少ないまま。
もともと設定していた月販目標が100台という少ない数値だったとはいえ、販売台数は伸びませんでした。
しかし2002年5月にエルグランドが2代目にフルモデルチェンジしたのを受け、フィリーの販売は2002年3月に終了。いすゞは同年9月に国内乗用車市場から撤退を決めていたこともあり、フィリーの後継車は現れませんでした。
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もしいすゞが乗用車市場に復帰したとしても、もうエルグランドベースのミニバンが生まれることはないと思いますが、OEMでは思わぬ関係から思わぬベース車が選ばれることもあり、今後もOEM車に注目したいと思います。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

























































































