日産「新型スカイライン」登場へ 伝統の「FRセダン」は“完全廃止”で「SUV化」に? 新時代の「日産の伝統モデル」はどう進化する? 新たな「14代目」の“現実的”な中身とは

「FR」は廃止か… 新たな「スカイライン」の中身は?

 そもそも現在、日産のFR向けのプラットフォームは、SUVやトラック向けのものが主流です。

 乗用車向けといえば、現行のV37型と現行型「フェアレディZ」に使われる「FR-L」プラットフォームしかありません。

 これは大型車向けのものであることに加え、古いプラットフォームにコストを掛けて改良を図るのも現実的とはいえません。

 さらにいえば、巨額の赤字を抱える日産にとっても、FRレイアウトを可能とする新たなプラットフォームの新規開発は困難といえます。

ヒントになりそうな「QX55」
ヒントになりそうな「QX55」

 現在のリソースで最も現実的な選択肢が、スカイラインの“クロスオーバー”化。そう、かつての「スカイラインクロスオーバー」の復活です。

 スカイラインクロスオーバーは、2009年に発売された先代の「V36型」スカイラインと基本を共有する、FRレイアウトのシティSUVでした。

 元々は、海外向けの高級ブランド インフィニティ向けに開発されたモデルであるため、豪華さも持ち味でしたが、今のSUVブームへの過渡期ということもあり、日本では不発に終わりました。

 一方、インフィニティ版である「QX50」は、主力モデルとして今も継続され、2017年に2代目が登場。2020年には、クーペSUV「QX55」も追加されました。

 いずれも現行型「エクストレイル」と同じ「CMF-C/D」プラットフォームを採用したFFベースのクロスオーバーSUVであり、エンジンには2リッター直列4気筒VCターボを搭載し、CVTを組み合わせています。

 駆動方式はFFと4WDを用意しており、気になるボディサイズも全幅こそ約1900mmと大きいですが、全長がエクストレイルと同等なので、日本でも現実的なサイズです。

 これをベースに新生スカイラインを投入するのが、クレバーな選択肢のひとつともいえます。

 しかし、デビューよりQX50が6年、クーペのQX55でも5年目を迎えることから、基本構造こそ共有するものの、次期QX50とQX55の方向性を見据えた新型スカイラインの開発が進められていくのではないでしょうか。

 ポイントとなるのは、次期型の存在が明かされた新型「エルグランド」でしょう。2026年投入の新型では、パワートレインは発電専用の1.5リッターエンジンを搭載した「第3世代e-POWER」ハイブリッドが搭載されることが明かされています。

 宿敵であるトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」との戦いに必要なのは、間違いなく日産らしさ。豪華さ燃費よりも、日産車らしい走りの良さが最重視されるでしょう。

 筆者は新型スカイラインに、日産のフラッグシップミニバンに相応しい新e-POWERを強化したものが採用されるのではないか、と睨んでいます。

 最大の違いはエンジンとモーター性能で、エンジンを2リッター化し、モーター出力も向上させることで、スポーティな走りに結び付けます。

 さらに電子制御4WD「e-4ORCE」が標準となり、「ノートオーラNISMO tuned e-POWER 4WD」で磨いた後輪制御技術も投入され、後輪の使い方で走りを面白くする工夫も凝らされると予想。

 何しろノートNISMOの4WDの開発には、当時レースシーン最強を誇ったR32型スカイラインGT-Rより搭載し、磨いてきた4WDシステム「アテーサE-TS」からの知見も活かされているからです。

 なので、スカイラインらしい後輪駆動の味わいも、しっかりと継承されます。

 時代の変化を受け、形状も駆動方式も変化するとみられる新生スカイライン。

 今、日産が持つリソースと世界的にニーズから予想される姿は、クロスオーバーSUVとみて間違いはないでしょう。

 ただ今も日産社内には、スカイラインに対する熱い思いを持つ人たちが大勢います。

 その走りは、間違いなく“スカイラインネス”。その名に恥じないものとなることに疑う余地はなく、その登場を期待して待つことにしましょう。

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Writer: 大音安弘(自動車ライター)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『ナビカーズ』『オートカーデジタル』『オープナーズ』『日経トレンディネット』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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