ヤマハ「NIKEN」開発陣に聞いた  宮本武蔵のような二刀流?

LMWアッカーマンジオメトリで、より自然なハンドリングを獲得

 NIKENで新採用されているのが「LMWアッカーマンジオメトリ」と呼ばれる独自の新構造です。見てすぐわかるのは、トリシティでは2本のフロントフォークが2つの前輪の内側にレイアウトされていましたが、ナイケンでは外側にそれぞれあります。

 プロジェクトリーダーの鈴木貴博さん、そしてLMW機構の開発当初から車両実験を担当している前田 周さん(ヤマハ発動機株式会社PF車両ユニット PF車両開発統括部)に、わかりやすく構造を教えていただきました。

新構造「LMWアッカーマンジオメトリ」

 青木:「LMWアッカーマンジオメトリ」ではフロントフォークを外側に配置していますが、これは車体を深く寝かせたとき、互いのフロントフォークが干渉しないようにするためでしょうか。

 鈴木(貴)さん:おっしゃるとおりで、NAIKENでは45度という余裕のバンク角を実現しました。トリシティでは38度でしたので、よりスポーティな走りが楽しめます。

 青木:トリシティでは前二輪が並行したラインを描けなかったと聞きましたが、「LMWアッカーマンジオメトリ」ではそれも解消したと?

 前田 周さん:簡単に言うと、トリシティではリーンしていくほどにガニ股になっていく傾向がありましたが、NIKENでは2つのタイヤの向きが常に旋回方向へと、より合っているのです。

車体を深く寝かせても、互いのフロントフォークが干渉しない

 たとえば四輪車でも、フロントタイヤの切れ角は左右で変えてあり、かつクルマは外に向かってロールしますが、そのときバンプステア※と言いまして、傾いてリーンしているときも直立のときに決めた切れ角の差を守ってくれるよう調整しています。

 ※サスペンションが縮んだ時にタイヤがステアリングを切ったかのように、角度が付いてしまうことで発生する現象です。

 鈴木(貴)さん:当然、より高速でより深いバンク角で旋回できるようになりますから、各部の剛性も必要となりましたし、タイヤのマネージメントもより高いレベルで求められました。

 いったい、どれほど優れたコーナリング性能を味わえるのか、開発者たちの話しを聞いていると期待は膨らむばかり。トリシティで見せたあの旋回力と安心感から考えれば、ナイケンの高い運動性能を想像するのは容易いところです。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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