過信は禁物!「自動ブレーキ」が作動しない時はどんな時?
緊急自動ブレーキは、交通事故を防ぐ安全装備として重要です。しかし現段階では完璧な技術ではありません。衝突の危険が迫りながら、条件によっては作動しない場合もあり得るので注意が必要です。
トヨタ、ホンダ、スバルの新車はほぼ9割装着の自動ブレーキ
一般社団法人・日本自動車会議所によると、2017年には新車の緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の装着比率が大幅に高まったそうです。各メーカーが販売した乗用車の装着比率は、トヨタが89%、ホンダが90%、スバルは92%に達しました。
緊急自動ブレーキが高い支持を得ている理由は、交通事故を防ぐ安全装備が、すべてのユーザーにとって重要であるからです。しかし、緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、現段階では完璧な技術ではありません。衝突の危険が迫りながら、条件によっては作動しない場合もあり得るので注意が必要です。
国産メーカーのシステムでは、歩行者を検知して緊急自動ブレーキを作動させるには、対象物を映像としてとらえるカメラセンサーが不可欠です。
車両に対しては、対象物の反射を利用して検知するミリ波レーダーや赤外線レーザーといったセンサーも効果を発揮します。反射を利用するために歩行者は検知しにくいですが、トヨタ、ホンダ、マツダなどは、レーダーやレーザーセンサーに単眼カメラを組み合わせました。これにより歩行者、車両、車線(逸脱時に警報するために検知が必要)と幅広く対応しています。タイプの異なる複数のセンサーを併用することで、互いに欠点を補うわけです。
また2個のカメラを使う方式はスバルのアイサイトが有名ですが、ダイハツのスマートアシストIII、スズキのデュアルカメラブレーキサポートなどもあります。日産は単眼カメラだけですが、歩行者と車両の検知を含めて、安全機能の幅を広げています。
どんなタイプの自動ブレーキでも作動しづらい状況とは
緊急自動ブレーキといっても、前述で挙げたように、様々なタイプが存在します。これらすべての緊急自動ブレーキに共通する注意点を自動車メーカーの開発者に取材すると、検知できる範囲が限られることを挙げています。
「センサーが検知できる範囲は、前方に向けて放射状に広がっています。そのために車両のセンサーに近い左右にある物体は検知しにくいです。車両の脇から直前に飛び出されたような時は、緊急自動ブレーキが作動しないことがあります」ともいいます。
カメラ方式は対象物を映像として認識するため、歩行者や自転車も検知できますが、人間の視覚と同様に苦手な場面があるとも指摘します。
「例えば朝日や夕日が車両の正面から直射され、前方の対象物がすべて逆光になる時は、人間が眩しくて見えにくくなるのと同じで認識能力が低下します。また混雑した横断歩道のように、車両の前方で人間が大勢固まって歩いている時は、人間であることを認識しにくくなります。
また、荷台とアオリ(荷台の囲み)の低いトレーラーが前方を走っている時も、上下寸法が乏しいために距離の把握が難しいです」と、普段出くわす可能性が高い状況でも検知しにくい場面がそれなりに多いようです。