【トヨタ決算】 佐藤社長『クルマは楽しくなかったらクルマじゃない』 ワクワクする“話題のモデル”に期待!? 小難しい決算会見で聞いた「クルマ屋」の今後
トヨタ佐藤社長『クルマは楽しくなかったらクルマじゃない』『コモディティには絶対しないぞ』と発言したトヨタの「2025年3月期決算会見」。各メディアの注目は「トランプ関税」や今後のトヨタの業績に関するものでしたが、ユーザーが気になる「今後、ワクワクするクルマが出てくるのか」という問に対しての答えでした。
佐藤社長『クルマは楽しくなかったらクルマじゃない』『コモディティには絶対しないぞ』と宣言!
トヨタは2025年5月8日に「2025年3月期決算」を発表しました。
各メディアの注目は「トランプ関税」や今後のトヨタの業績に関するものでしたが、ユーザーが気になるのは「今後、ワクワクするクルマが出てくるのか」という点です。
果たして、トヨタ佐藤社長の答えはどのようなものだったのでしょうか。
決算会見にて、自動車研究家・山本シンヤ氏が佐藤社長に質問してみました。

「決算書」は企業の成績表とも呼ばれており、誰もが企業の業績を客観的に判断するこができる資料になっています。
そんな中、トヨタは2025年3月期の決算が発表しました。その実績は「販売台数967万台(前年比0.3%減:4年ぶり前年割れ)」、「営業収益48兆367億円(前年比6.5%増:過去最高)」、「営業利益4兆7955億円(前年比10%減)」、つまり、売上と利益の関係では「増収減益」となっています。
この要因は大きく二つ。販売台数は前半期に認証問題などで供給制限があった事。
営業利益は為替の変動(7450億円)や資材価格・関税影響(5300億円)の影響が大きいものの、得意の原価改善に加えてバリューチェーン収益(保有車を対象としたビジネス:メンテナンスや用品中古車、保険)により減益幅は最小限に留めています。
ちなみに未来への投資(人や成長領域)は昨年の決算の時に「7000億を投じる」と公言していましたが、実績はそれを超える7450億円でした。

これらは新聞をはじめ様々なメディアで速報されていますが、筆者の興味は発表後の質疑応答にありました。
多くのメディアが「受け止め」や「数字の確認」、更には「トランプ関税」の話ばかりだったので、筆者はそれとは違う質問をしてみることにしました。
現体制となり社長に就任してから今年で3年目となった佐藤氏。社長業が板についてきた感じがする一方で、どこか遠い存在になってしまった感じがしました。
当たり前と言えば当たり前ですが、だからこそ、就任時に「これからのトヨタを“クルマ”で示していきたい」と語った本音を聞いてみようと。
1問目はロジカルな話で、「マルチパスウェイの方針は何も変わっていませんが、HEVが好調な一方で精力的に開発を進めている水素がトーンダウンしているように感じます。FCEVはもちろん2020年からモータースポーツで鍛え始めた水素エンジンの現在値は?」。
すると、その目は佐藤社長からエンジニア佐藤に変わり丁寧に答えてくれました。
「マルチパスウェイは変わらないものの、エネルギーによりペース配分や普及に至らしめる道筋が随分違う事を実感しています。
その中の水素ですが、今最大の課題は水素自体が非常に高いエネルギーになってしまっている事です。
コストが高い=普及には非常に大きな壁ですので、まずは『水素の消費量を増やす』と言う取り組みをしっかりやっている必要があります。
その点では乗用車より商用車(トラック)は60倍くらい感度が違うので、まずはそちらを重点的に進めています。
そしてコストを下げる努力ができた時に、水素エンジンの技術が活きると思っています。
その水素エンジンは燃焼の制御に関してはある程度『手の内化』できています。
逆に言えば、それができているからこそ内燃機関の燃焼効率(エタノールやe-Fuel対応)に活かせると思っています。
つまり、水素が発端に輪が広がり、マルチファースウェイに相互作用が起きているというのが今の状況ですね。
会長の豊田が自らハンドルを握って水素社会に向けて先頭に立って取り組んでいるテーマですので、我々も多方面の取り組みを同時並行的に進めています」

2問目はエモーショナルな質問で、「今のトヨタは群戦略でユーザーニーズに沿った商品が高い評価を受けています。ただ、その一方で『こういうのはどうですか?』と言う提案型の商品が少ないのも事実です。ユーザーがワクワクするような商品展開はどのように考えているのでしょうか?」
すると、佐藤社長は1問目より更に目を輝かせ、他の質問よりも長い時間をかけて笑顔で答えてくれました
「同感と言うかその通りで、『クルマは楽しくなかったらクルマじゃない』、『コモディティには絶対しないぞ』という覚悟を持って取り組んでいます。
今はカタログスペックが上がれば売れるという時代ではありません。
モデルチェンジで少し燃費が良くなる、デザインが少し変わっても、売れると言う時代ではありません。
そのため『心が動く商品』をどれだけ熱量持って作れるかだと思っています。
これはスポーツカーだけでなく、それ以外のクルマの中にもこのような情熱がないとお客様に届きませんので各プロジェクトチームにハッパをかけています。
具体的にはさすがに決算会見の場でお話をするのも差し障りがありますので、日を改めて(笑)。お楽しみにお待ちいただければと思います」

ちなみに佐藤社長の人生の夢は「セリカの復活」です。以前、筆者にこのような話をしてくれました。
「シャシ設計を担当していた時代にセリカに乗っていました。
当時は『走りは足が大事』と思っていたので、スーパーストラットサスペンション(ホンダの4輪ダブルウィッシュボーン式サスの対抗するために開発された究極のストラットサスペンション)に興味があり。
実際に走らせると、FFとは思えないハンドリングに驚き、より愛着が湧きました。私の中でこの時の体験が『セリカ愛』に繋がっています」
ちなみに中嶋祐樹副社長が昨年のラリージャパンのトークショーで「セリカやっちゃいます」と宣言していますが、それだけですべてが上手くいくほどトヨタは甘くありません。
ただ、1つ言えるのは業績が伴っていれば実現への道はあると言う事です。だから、決算の内容は大事なのです。
社長就任以降、認証問題やリコール、生産影響など“暗い話”で神妙な顔つきばかりの佐藤社長でしたが、久しぶりに笑顔の“佐藤節”が出たことにホッとした自分もいます。
社長就任時に豊田氏からは「ずっとクルマをつくっておけばいいから」と言われた佐藤社長ですが、直近の出来事にジタバタすることなく、中長期的なビジョンのために「地に足をつけ、未来のために足場がためを進める」と全くブレはありません。
そんな佐藤社長率いる執行チームのミッションはクルマ屋のチーム力を活かしモビリティカンパニーへの変革です。
まさにここからが「お手並み拝見」と言った所でしょう。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
他のサイトでよくみられるトヨタ批判。例えば消費税還付金が6000億だ。どこまで儲けるのか!なんてね。。。どこの企業も消費税は納めていませんけどね。
例:販売業者が、①仕入れ(原材料)価格100万円で購入した場合、納入業者に10万円の消費税を支払う。②販売業者が消費者(購入者)に車を200万円で販売したとする。その時販売業者は消費者から20万円の消費税を受け取る。③販売業者は消費者から受け取った20万円の内、仕入れ時に納入業者に支払った10万円をさ差し引いた10万円を税務署に納税する。これが消費税の仕組みで流れ。あくまで消費税とは国内で、商品の消費に当たる消費税を最終購入者かが負担する。だからトヨタは海外で販売する車分のみ原材料仕入れ時に収めた消費税を還付。個人でも商品輸出すれば、仕入れ分の消費税還付されます
トヨタ自動車とかつて仕事をしていて、社員の方の”Fun to dorive"という言葉が思い出されます。他の自動車会社とは違う、と感じました。自動車がコモディティ化せず、白物家電化されないようにしてほしいと。”自動車は文化”という言葉もよく聞きました。これから高齢化がますます進む中で時代とともに変わるとともに、自動車が楽しいものであり続けること、そのようなことに期待します。