“子ども”が運転できる「本物のクルマ!」 日産「ダットサン ベビィ」が凄かった! 全長2.5m「めちゃ小さいボディ」に本格エンジン搭載! “フェアレディZ”みたいな「子ども専用車」とは!
日産は過去に、子どもが運転できる「本物のクルマ」を開発していました。一体どんなモデルなのでしょうか。
子ども専用車「ダットサン ベビィ」が凄かった!
毎年5月5日は「子どもの日」。今回紹介するのは、子どもとクルマにまつわる面白い話です。
基本的にクルマというものは、運転免許の取得が可能となる“18歳”から運転できる乗り物というイメージがありますが、なんと日産は過去に、子どもが運転できる「本物のクルマ」を開発していました。

そのモデルこそが「ダットサン ベビィ」です。
同車は遊園地などで見られるような「電動カート」とは一線を画しており、エンジンもトランスミッションも搭載した、正真正銘、本物のクルマです。
ダットサン ベビィは、神奈川県横浜市と東京都町田市に広がる「こどもの国」の中に開設された「こどもの国交通訓練センター」において、本物のクルマを用いて子どもたちに自動車交通教育を教えるために誕生しました。
「小さい頃から交通に関する教育や知識を身につけさせる」という園のコンセプトに共感した日産は、実に100台(試作車を入れると105台)ものダットサン ベビィを開発・生産し、こどもの国に寄贈したのです。
一般的に子ども向けの交通安全教室では、実際に乗り物を使用するとしても、その多くが「自転車」です。
4輪カートが使われる場合もありますが、それでも屋根や灯火類を持たないプラスチックボディの遊具用ゴーカートが関の山。
しかしダットサン ベビィは、なんと本物の軽自動車をベースとしています。具体的には、当時日産と提携していた愛知機械工業の生産する軽トラック「コニー・グッピー」を大幅に改造したものでした。
しかもエクステリアは、初代「フェアレディZ」を手掛けたデザイナーの松尾良彦氏がまとめ上げたものと言われており、デザインには一切の隙も見られません。
ボディサイズは全長2500mm×全幅1200mm程度という小ささで(バンパーガードを含めても全長2960mm)、ジャンルとしては「子ども向けの園内遊具」でありながら、フェアレディZに通じる軽快でスポーティな佇まいに仕上がっていました。
また、ドアや開閉可能な窓、ヘッドライトやウインカー、テールライト、さらにワイパーやミラーまで装備していたことにも驚かされます。
そして気になるダットサン ベビィのパワーユニットですが、最高出力7.5馬力・最大トルク1.3kgmにデチューンした199ccの2サイクルエンジンをミッドに搭載。
速度が20km/hに到達すると出すとブザーが鳴り、30km/hではリミッターが作動するなど、安全機構もしっかり採用していました。
トランスミッションは、前進一段・後進一段のトルクコンバータを組み合わせたもので、クラッチレス・2ペダル化に成功。子どもでも運転できる乗りやすさを実現していました。
足回りには、フロントがウィッシュボーン式、リアはナイトハルト式トレーリングアームとした4輪独立懸架を採用。
ユニークなのがブレーキの機構で、助手席に乗った大人も踏めるよう、ブレーキペダルが左右に拡大されていました。
このように、ダットサン ベビィは子ども用のクルマとしては異例の、本物のクルマだったこと分かります。
そんなダットサン ベビィが導入された、こどもの国交通訓練センターでは、大人の運転に同乗して周回できるほか、小学5年生から中学3年生であれば、講習および運転訓練を受けると発行される「こども自動車の会 会員証(免許証)」を所持していれば、子ども一人でも運転することが可能。
この講習では、自動車の構造や交通法規も学んでいたと言いますから、こちらも実際の免許講習顔負けの内容でした。
本物のクルマを運転できるとあって、大きな人気を博したこどもの国交通訓練センターですが、ダットサン ベビィの老朽化が進んだことから、1973年を持ってアトラクションを終了。
アトラクションが開始した1965年から1973年までの8年間で、のべ20万人が利用し、約4万5千人が免許証を取得しました。
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子どもの「本物のクルマを運転する」という夢を叶えてくれたダットサン ベビィは、多くの人々に素晴らしい体験を与え、そして未来のクルマ好きを生み出すことに貢献したことでしょう。
こどもの国では、ダットサン ベビィの100号車を倉庫で保管していましたが、2012年に同園が開園50周年を迎えるにあたり、ベビィの復元を日産に打診。
日産社員がボランティアでレストアを行う「日産名車再生クラブ」により見事に再生し、現在は日産ヘリテージコレクションに収蔵されています。
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