新型「軽モデル」26年登場か 市場4割「日本の軽」が変わる? 中国勢参入でどうなる? BYD報道を機に「独自性」を考える

最近の報道では「BYDが2026年後半、日本専用の軽EVを投入する」。関係者の話として、そんなニュースが最近、ネットを騒がしています。

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 日本独自の規格となる「軽自動車」。現在新車市場の4割に迫るシェアを誇っています。

 そんななか最近、中国のBYDが「2026年後半、日本専用の軽EVを投入する」。

 関係者の話として、そんなニュースが最近、ネットを騒がしています。

BYDの低価格帯EV「シガール」。これに近しいモデルとして軽EVが投入されるのか
BYDの低価格帯EV「シガール」。これに近しいモデルとして軽EVが投入されるのか

 BYDは1月に実施した事業方針発表会の中で、2027年頃までにEVとPHEVをあわせて、7-8車種をラインアップさせるとしていましたので、軽EVもその一環になる可能性があります。

 この話で注目されるのは、軽自動車の規定がない中国のメーカーが、日本のマーケット状況を考慮した上で、軽EVを仕立てるという点でしょう。

 実は中国には、軽自動車よりもサイズがひと回り以上小さい低速小型EVが存在します。

 筆者は2000年代から中国各地で自動車関連取材が増えたのですが、中国で低速小型EVの需要が増加したのは2010年代前半頃からでした。

 この頃、中国政府は経済施策として第12次5カ年計画の中で、主な都市でEVタクシーやEVバスを普及させる「十城千両」政策を推進していました。

 こうした政府の意向とは別に、山東省など地方部で低速小型EVメーカーが乱立するようになりました。

 当時、中国では電動二輪車の普及が進み、モーターやバッテリーなど電動関連パーツが市場に数多く出回るようになり、それらを使って四輪事業を起こす人が増えたためです。日本での超小型モビリティに近い発想だと言えるでしょう。

 こうした低速小型EVは、特に規定がないため、日本の軽自動車に近いサイズ感のクルマも登場するようになります。

 しかし、2010年代半ば以降は、BYDを筆頭とする新興自動車メーカーの規模が大きくなり、あわせてクルマとしての品質が上がってきたこともあり、低速小型EVの需要は限定的です。

 一方、中国で順調に生産・販売規模を伸ばしたBYDは、事業拡大の可能性を海外に求めるようになってきました。

 そして中で、国や地域の道路事情やユーザーの好みに応じた商品の現地適合化が必要になったというわけです。

 今回話題に上っている、日本での軽EVは、そうした事業戦略の一環ではないかと想像します。

 では、改めて軽自動車とはどういう車両規定なのでしょうか。

 軽自動車検査協会によれば、軽自動車の車両規格ができたのは1949年7月。

 ボディサイズは、全長2.8mx全幅1.0mx全高2.0m。エンジン排気量は4サイクルが150ccで2サイクルは100cc 。出力が1.20kWという、かなり小さくてゆっくりした乗り物でした。

 1950年7月には、二輪、三輪、四輪の区分が新設され、三輪と四輪のエンジン排気量は4サイクルで350ccまで引き上げられ、1951年8月には360ccになっています。

 その後、1976年には550cc、また1990年には現在も採用している同660ccに。

 ボディサイズも規定改定で徐々に大きくなり、1998年には現在の全長3.4m以下x全幅1.48m以下x全高2.0m以下となりました。

 軽自動車は登録車と比べて、税金が安く、燃費が良く維持費が安いとされてきました。

 そもそもは小型商用車や農業車としての利用が多かったのですが、1970年代のスズキ「アルト」の登場で乗用化が加速。

 また、1990年代に入るとスズキ「ワゴンR」を筆頭として男性やファミリー層の需要が伸びました。

 さらに、2000年代以降は、トールワゴン車の市場競争が激しくなったり、ファッション性を重視した小型SUVとして軽自動車の販売が伸びたという経緯があります。

 いまでは、日本市場全体の約4割を軽自動車が占めるまでに至っています。

 軽自動車は、ボディサイズやパワートレインの制限があることが、日本のエンジニアやデザイナーにとっては「決められた中で最大を尽くす」という発想が強調され、様々なタイプの軽自動車が誕生しているところです。

 そうした中、インバウンド観光客の多くが日本に来て、軽自動車の多さに驚くといいます。

 単なる小さいクルマではなく、かっこいい、可愛い、未来的なデザインが目を引くようです。

 レンタカーなどで試乗すると、街乗りから高速道路走行まで走行性能が優れていることや、使い勝手の良さに驚く場合が少なくありません。

 ただし、日本固有の車両規定である軽自動車は、トランプ大統領が最近よく口にする「非関税障壁」だと言えるのかもしれません。

 そうした中で、一部報道があったBYDによる軽EVモデルの新設は、今後の日本市場における海外メーカーの事業戦略に大きな影響を与えそうです。

 なお、過去の海外メーカーによる軽自動車の代表的な事例としては、ダイムラークライスラー日本(当時)が2001年に発売した、「スマートK」があります。

 通常モデルのスマートのボディサイズを修正して軽自動車規格に合致させたものでした。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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