国の「ガソリン補助金」 5月中に「10円/L」値下げか!? 「補助金ゼロ」から一転! 「仕組みが分かりづらい」声も 変動経緯を解説
ここ最近、「ガソリン補助金」に関する様々な報道が出ています。年末年始では2ヶ月にわたり各5円/Lの縮小、4月には「補助金0円」、そして新たに与野党協議で10円定額補助という案が出てきています。この変動にはどのような経緯があるのでしょうか。
ガソリン10円値下げってどういうこと? SNSでは「仕組みが分かりづらい」の声も… これってどんな補助金なの?
やっと、ガソリン価格が下がりそうです。
石破茂首相が2025年4月20に出演したテレビ番組で、早期のガソリン価格の引き下げを目指す姿勢を示しました。
報道では「(5月中に)リッターあたり10円値下げ」という数字が出てきていますが、なぜ10円なのでしょうか。順を追って見ていきましょう。

最近は、電気代、水道代、食料品代など明らかに物価が高いと感じるようになりましたが、ガソリン価格についても「なんだかずっと高いまま」という意識を持っている人が少なくないでしょう。
また、これまでガソリン価格がリッターあたり200円という”大台越え”が懸念されると、知らないうちにガソリン価格が下がっている、と思っている人もいるでしょう。
そうした中、ガソリン価格を巡る協議では、与野党間の話し合いの様子がテレビやネットのニュースで紹介されることが多くあり、補助金や減税といった様々な話題が登場しますが、話の内容が二転三転しており、ユーザーにとって分かりにくい印象があります。
本稿では、ガソリン等の燃料油に関わる補助金に焦点をあてます。
直近ですと、4月17日からの「補助金ゼロ」が大きなニュースになっています。
そう聞いても「これまでもウチには役場から補助金の通知書とか来ていなかったけど、それがゼロになるってどういうことなの?」と疑問に思う人がいるかもしれません。
この補助金、正式名称を「燃料油価格激変緩和補助金」といいます。
政府が2024年11月22日に閣議決定した「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」の一環です。
方法としては、燃料油の卸売価格を抑制し、それによって小売価格の急騰を抑えるもの。
手順としては、石油の精製や輸入している業者である、燃料油元売り(もとうり)が国に対して補助金の申請を行います。
申請内容が審査され、妥当だと判断されれば補助金が支払われます。
そうすると、元売り価格が下がり、販売先であるガソリンスタンドでの小売価格が下がることでユーザーは恩恵を受けるという仕組みです。
つまり、ユーザーは市町村や国などに直接申請する必要がありませんし、補助金に関する何らかの通知を受け取ることもありません。
では、補助金の額はどのように決めるのでしょうか。
基準価格は、レギュラーガソリン価格全国平均170円としてスタートし、その後に基準価格と、高補助率発動価格といった設定や修正を段階的に導入するようになりました。
当該価格は1週間単位で統計を取っているため、補助金も週単位で変化します。
補助金を開始した2022年1月はレギュラーガソリン価格は170円台でしたので、補助金額も数円ていどでした。
ところが、同年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで原油が急騰。3月から4月にかけて200円台を突破してしまいます。
そのため、170円を基準とした補助金額もそれに合わせて急増せざるを得ない状況に陥ります。同年6月には210円を越え、補助金額は41.9円に達します。
その後、2022年11月までは200円台が続き、同年末には180円台を回復。
それに伴い、2023年からは補助金の上限を切り下げても、レギュラーガソリン価格は170円程度を維持してきました。
2023年6月から、補助金の補助率を見直したことで、170円台半ばで推移。
そして、国は2024年11月に、2022年1月から続けてきたこの補助金制度を含めた総合経済対策に対して「出口に向けて段階的に対応する」と閣議決定しました。
結果的に、原油価格は上がってきても、4月17日からは補助金がゼロになったというわけです。
これまでの施策を予算で見ると、2022年1月の補助金開始から、2024年12月以降の令和6年度補正予算までを含めて累計予算額は8兆1719億円にのぼります。
そもそも、この総合経済対策は、コロナ禍からの経済回復の重荷になる事態を防ぐための「時限的・緊急避難的な激変緩和事業」として設定したものです。
コロナ禍にあるていど落ち着いた現在、これまでのガソリン等の燃料油価格の抑制方法ついて抜本的な見直しをすることは、国の施策として当然だと言えるでしょう。
直近で日本は、トランプ関税など新たな経済的な課題があり、その上で物価高も続いている状況です。
その中で、与野党協議で10円定額補助という案が出てきている状況なのです。
※ ※ ※
なお、いわゆるガソリン税の暫定税率廃止は、こうしたガソリン等の燃料油価格に対する補助金とは、国の施策としては別の話。
そうとはいえ、与野党間の協議では、それぞれの政党が独自の見解や方針があるため、結果的にガソリン価格がいつからどのようにいくら下がるのかが、ユーザーには分かりにくい状況にあります。
今後の動向を注視していきましょう。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿や、URLを記載した投稿は削除する場合がございます。