「あっちの店は30万値引きしただろ!」高圧的な“値切り交渉”の末に「失ったもの」とは…ディーラーが語る「粘着値切ラー」への本音
「安くしたい」ひたすら鼻息荒くした値切り交渉の「結果」とは
首都圏のとあるセールススタッフは「当社の在庫車であれば、ある程度は値引きができる場合もあります」とする一方で「契約してからメーカーに発注を掛けるという場合は、値引きが抑えがちになります」と話します。

困るのは、そういった事情の違いがあることを知らず「このクルマはネットで値引き額の目標が30万円って聞いたぞ。オマエのところでもできないのか」と主張する客もいるといいます。
「もちろん、在庫車でなければ大幅な値引き額を提示できないという事情をお伝えして理解していただきます。すると今度は…『コーティングをタダにしろ』とか『ドライブレコーダーをサービスで付けろ』といった無茶ぶりをしてくるお客様もいるのです」(同)
あまりにも無茶ぶりをしてくる場合は、上司と相談したうえで「当店ではこれが限度ですので、ご納得いただけないようでしたら…他の店舗さんに行かれた方がよろしいかと思います」と「キッパリ」と線引きをすると話します。
「それであわててご契約となることも多いのですが、なんとも後味が悪い商談ですよね…」(同)
また、別のディーラーのセールスマンは「新車をご契約いただいたということは、向こう数年、あるいはそれ以上のお付き合いとなる可能性もあるわけです」と話します。
「そのあと、車検や整備などでご入庫に来られるたびに、現場サイドとしても『あぁ、あのときの無茶ぶりをしてきたお客様か』と思ってしまうことも事実です。
それはセールススタッフだけでなく、サービスフロントやメカニックも同様で、『いわく付き』な方といった情報共有もあります。
もちろん、我々もプロのセールスマンなので、誰に対しても失礼がないように接客するのが基本ですが、長くお付き合いしたい大切なお客様と『比較』してしまう心情は致し方ないと思いますね…」
そういう心証の差が、ディーラーへの諸事情の相談に対して「難しいが、このお客様の頼みならなんとかしたい」となるのか、「できません」で終わるのかの差につながってくることがあるのでしょう。
ディーラーの人たちも感情がある人間です。
数万円をかけてゴリゴリに交渉した代償として、引き換えに失う「プライスレスなもの」があることを認識しておく必要がありそうです。
Writer: 松村透
株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。
輸入車の取扱説明書制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトリニューアルを担当後、2013年に独立。フリーランスを経て株式会社キズナノートを設立。現在に至る。
2016年3月〜トヨタ GAZOO愛車広場連載中。ベストカー/ベストカーWeb/WebCARTOP他、外車王SOKEN/旧車王ヒストリア編集長を兼務する。

































