復讐の相棒は“フォード LTDカントリー・スクワイア” 映画「スリー・ビルボード」
本年度アカデミー賞主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンド扮する地元警察を批判する女性は、フォードのステーションワゴンに野暮ったく乗り常に“怒り”のエネルギーを周囲に放射し続ける!
アカデミー主演女優賞のフランシス・マクドーマンドの演技に釘付け
著名な劇作家であり、映画『セブン・サイコパス』などでも知られるマーティン・マクドナー監督作品『スリー・ビルボード』。第90回アカデミー賞において主要2部門(「主演女優賞」「助演男優賞」)を受賞しました。
本作の舞台はアメリカ南西部ミズーリ州の田舎町。娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、いつまでも犯人を捕まえらない警察を痛烈に批判する3つの看板を設置したことから、予期せぬ事件が次々と巻き起こります。
まるで車の修理工のようなツナギ&バンダナという出で立ちで、終始“怒り”のエネルギーを周囲に放射し続けるミルドレッド。そんな彼女が乗っているのが「フォード LTDカントリー・スクワイア」です。野暮ったい顔面とサイドのウッドパネルがなんともアメリカらしい、長閑な風景にも絶妙にマッチする定番車です。
映画で使用されているのは1988年に生産された7代目で、これがカントリー・スクワイア最後のモデルとなりました(1991年に生産終了)。大きな車体にふさわしいパワフルさの割に燃費が良く、ドライビングのスムーズさと相まって人気に火がつき、1950年代後半には全米生産台数の17パーセント超を占めるほどだったそう。
ビール缶を投げつけられても傷ひとつ負わず、約30年も働き続けるタフなステーションワゴンは、車内でも悪態が止まらないミルドレッドの良き相棒といえるでしょう。
クライマックスでミルドレッドは、その相棒と共に“ある場所”へ向かいます。この車がいざなう不穏な旅路に、観客は何を感じ取るのか?
1950年代から多くの映画に登場してきたカントリー・スクワイアだからこそ、その結末に様々な解釈を与えてくれるのかもしれません。