「ランエボXとよく似ている」場面も!? どんな道でも無双するタフなSUV! 三菱「アウトランダーPHEV」でスノードライブ、実力は?【試乗記】

三菱を代表する「アウトランダーPHEV」を北海道の新千歳モーターランドのグラベルコースで体感してみました。

三菱「アウトランダーPHEV」は雪道でも問題ナシ!?

 日産とホンダの経営統合中止の報道の中、渦中にいながらも冷静に独自路線を突き進むのが三菱です。
 
 燃費不正問題発覚後は厳しい時期が続きましたが、直近のプロダクトは「三菱らしさ」が前面に出ており、魅力的なクルマばかりです。
 
 なぜ、変わる事ができたのでしょうか。 筆者はこのように分析しています。
 
 厳しい時期に去るエンジニアいた中、残ったエンジニアつまり「三菱愛」が強い人たちが「三菱自動車らしさ」に基づくクルマづくりを愚直に進めてきた結果でしょう。
 
 そんな三菱の技術を余すことなく全て詰め込んだモデルが「アウトランダーPHEV」です。

三菱「アウトランダーPHEV」の限界は? 本格オフロード体験で見えた実力とは
三菱「アウトランダーPHEV」の限界は? 本格オフロード体験で見えた実力とは

 現行モデルは2021年にルノー/日産/三菱自動車のアライアンス効果を存分に活用して開発された初のモデルですが、2024年の大幅改良で長年培ってきた「電動化技術」と「四輪制御技術」の最新版を盛り込み、商品力を更に引き上げています。

 その実力はくるまのニュースでも報告済みですが、今回は雪上試乗となります。

 クルマの本当の実力を知るには過酷な条件で乗るのが1番です。

 なぜなら、路面環境が悪くなればなるほどクルマの素性や本質が露わになるから。

 今回は北海道の新千歳モーターランドのグラベルコースを走行しましたが、フラットな低速~中速コーナーが主体ですが、所々アイスバーンが隠れるなかなかの曲者コースです。

 試乗記の前に三菱がこだわる「S-AWC」について少しだけおさらいをしておきましょう。

 S-AWCの基本概念は「4輪の制駆動力を自在に制御して車両運動性能の向上」ですが、その実現に必要なデバイスは「前後のトルク配分」、「左右間のトルク移動」、「4輪ブレーキ制御」の3つですが、S-AWCの強みはこのハードを連携して作動させるソフトにあります。

 ユーザーは連続的に色々な条件の道を走る上に、運転の仕方もバラバラです。

 他社のシステムは各デバイスを個々で制御する部分最適なのに対して、S-AWCは一つの指示系統でコントロールする全体最適なのが大きな違いです。

 これにより様々なパラメーターを合算した上で最適な指令を出すことが可能となり、“その時”にピッタリな制御をシームレスコントロールできるのです。

 その結果、乗っていて違和感がない→クルマに対する信頼性が上がる→気持ちいい走りに繋がります。

 従来はこれをメカニカルなAWDと組み合わせていましたが、アウトランダーPHEVは応答性に優れるモーターを活用したツインモーター4WD(それも前後理想駆動配分実現のためにリアモーター出力をフロントより大きく設定)の採用により、リアルタイムで最適な駆動力制御を可能にしているのです。

乗っていて違和感がない→クルマに対する信頼性が上がる→気持ちいい走りに繋がる

 では、実際に走らせるとどうでしょうか。

 フラットな路面と言っても雪の影響で起伏や凹凸はかなり激しい道ですが、ガンガン走らせてもボディはミシリとも言いません。

 体幹が優れるプラットフォーム(ルノー/日産/三菱グループ共通ですが三菱は走りのために“堅牢性”を強くリクエスト)に加えて、今回の改良でよりしなやか/よりストローク感が増したサスペンションの採用でギャップの吸収性もアップ。

 雪道にも関わらず「乗り心地の良さ」に関心してしまったほどです。

 アウトランダーPHEVは様々な走行シーンに合わせて最適制御を行なうドライブモード(NOMAL/ECO/POWER/TARMAC/GRAVEL/SNOW/MAD)が用意されています。

 更にASCのON/OFFもできるので走行パターンはCMのように「ごちゃごちゃうるせえ」と言いたくなるほど。ただ、これらは飾りではなく本当に実感できるくらい走りのキャラクターは変わります。

 まずは基本のNOMAL+ASC-ONで走行します。

 素直なノーズの入りと姿勢安定性の高さから、できる限り挙動を乱さない走りです。

 基本は安定方向ですがその範囲ないでコントロールの幅を持たせている所、更にアクセルONでリアの蹴りだしを感じながらも4輪で姿勢を整えながら前にグイグイと進む感じは「ランエボXとよく似ているような?」気も。

 ちなみにNOMALでほぼ全ての路面はカバーできますが、ドライブモードを切り替えて走るとアウトランダーPHEVの本当の実力が見えてきます。

 TARMACは雪道だと「君は本当に4WDなの?」と思うくらい後輪主体の制御で、ASC-OFFだとフェイントを使わずとも面白いくらいテールスライドが可能。
 GRAVELは旋回とトラクションのバランスが絶妙で、コーナー進入時にフロントタイヤのグリップさえ心がければそこからは自由自在のコントロール性。
 SNOWは穏やかな出力特性と素早く向きを変えてクルマを安定方向に導き「絶対に滑らさない」と言う安心・安全な制御。

 とは言っても、タイヤの限界以上の事はできないので無理な運転は禁物ですが、路面状況やドライバーの意思に合わせて様々な“引き出し”を備え、2トン越えのSUVを感じさせない走行性能は改めて驚きです。

 ある意味「物理の法則」を超えたかのよう走りですが、これは魔法でも何でもなく、4つのタイヤをリアルタイムで最大限に活用するS-AWCの効果の賜物と言えるでしょう。

 三菱が追求する走の理想は「どんな路面・天候でも、誰もが安心・安全・快適に自信を持って愉しく走れる」ですが、アウトランダーPHEVはその中でも「自信を持って愉しく走れる」をより強く実感できました。

ライバルのようにオフロードを意識したアクティブな仕様があってもいい
ライバルのようにオフロードを意識したアクティブな仕様があってもいい

 そろそろ結論に行きましょう。

 筆者は以前からアウトランダーPHEVを「道があればどこへでも行けるPHEV」だと思っていますが。改良モデルはより骨太、より自由自在、そしてより懐の深い走りに進化している事は、雪道を走って良く解りました。

 昨今、クロスオバー人気ですが、その中でもアウトランダーPHEVが属するDセグメントは激戦区ですが、そんな中でも総合性能は世界トップレベルの実力を持った1台です。

 ただ、1つだけ注文を付けさせてもらうと、従来モデルよりもプレミアムシフトした内外装はオンロードでは嬉しいですが、逆に悪路走行だと躊躇してしまう気持ちが出るのも事実です。

 個人的にはレクサスの「オーバートレイル」、マツダの「フィールドジャーニー」、スバルの「Xブレイク」、日産の「エクストリーマー」のようなオフロードを意識したアクティブな仕様があってもいいと思っています。

 個人的にはAXCRに帯同するチーム三菱ラリーアートのサポートカーのようなスタイルだったら完璧です。

【画像】雪道でもサイコー! 最強なアウトランダーを見る!(12枚)

こんな道走れるの? 雪道をマツダSUVで走破!結果は?

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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