日産の「4WD」何がスゴイ? 他メーカーがマネしない「e-4ORCE」って何? “雪道”でも“超安心”な「独自技術」とは

「e-4ORCE(イーフォース)」は、日産独自の4WDです。その機構や性能はどのようなものなのでしょうか。雪上での試乗経験を交え、解説します。

雪道でもスゴイ! 日産の“4WD”「e-4ORCE」

 突然ですが「e-4ORCE(イーフォース)」という4WDを聞いたことがあるでしょうか。

 これは日産車に使われる技術の名称で、ハイブリッド車やEV(電気自動車)の4WDなど前後デュアルモーター車両に使われているシステム。電子制御で前後トルク配分のコントロール幅が広いのが特徴です。 

日産の”ヨンク”何がスゴイ?
日産の”ヨンク”何がスゴイ?

 一般的に4WDといえば前後輪がシャフトでつながっているタイプをイメージするかもしれませんが、昨今は主駆動輪ではないタイヤ(FFベースのモデルだと後輪)をモーターだけで動かす“電気式4WD”が増加中。

 なかでもEVや日産のシリーズ式ハイブリッド「e-POWER(イーパワー)」の4WDモデルはすべての駆動力をモーターが生むため、エンジンパワーを直接タイヤに伝えるモードを持つことなく、前輪用と後輪用それぞれ完全に独立して組み込んだモーターで4WDを成立させています。

 前後独立モーターを持つ電気式4WDの特徴は、前後のトルク配分のコントロールが自由かつ大胆にできることでしょう。

 極端なことを言えば(実際に行うかどうかは別として)、前後のトルク配分を100:0から0:100まで自在にできます。それを積極的にコントロールすることで、これまでの4WDの強みである強力なトラクションや走行安定性に加えて、コーナリング中のハンドリング特性を作りこむといったことも可能とするのです。

 また、1万分の1秒という単位で緻密にコントロールするというモーターならではの制御の細かさから、タイヤの空転に対して正確かつ滑らかにトラクションコントロールやスタビリティコントロール(空転などタイヤの滑りを防ぐ機能)を働かせられるのも強み。

 スリップを検知してからトルクを絞って回復させるまでのプロセスは、ドライバーのテクニックはもちろんエンジンのエネルギーをダイレクトに駆動力として使うクルマのトラクションコントロールにも決して真似できない素早さと緻密さでおこないます。

実際に滑りやすい雪道で試してみると、「制御オフ」時だとタイヤが空転するだけでなく、左右にハンドルがとられてドライバーが対処しなければならない発進急加速が、「制御オン」にするとまるで舗装路を走っているかのように滑らかに加速。

 しかも雪道とは思えない速度の上がり方(強い加速)をするのだから驚くばかりです。

しかも、左右にハンドルがとられなくなったのも見事。雪道であるかを忘れるくらいに、滑りやすい路面も安心して走れることが確認できました。

 そして一般的な電動4WDに対する日産のデュアルモーター式電動4WDのメリットはまだあります。それはブレーキとの協調制御。

 たとえば「ノートe-POWER 4WD」の先代モデルはあくまで滑りやすい路面でトラクションを稼ぐことで発進のアシストに徹したものでしたが、システムを刷新した現行型のノートe-POWER 4WDではシャシーとの協調制御までおこなうことで、コーナリング時の姿勢まで積極的にコントロール。

 雪道では、ブレーキ(曲がる方向の前輪にドライバーが気付かないほどわずかなブレーキを掛ける)を活用し前輪の能力を引き出すことで、アンダーステアを最小限に抑えスッと曲がることを実感できます。

 舵が正確(ハンドル操作に対して正確にクルマが曲がる)でライントレース性が素晴らしく、そしてそのコントロール性能を舗装路でも活用してハンドリングを高めているのです。

 さて、冒頭のe-4ORCEは、そんな前後デュアルモーター式4WDの発展版。日産の電動4WDのなかでもコンパクトカーのノート や「ノートオーラ」そしてコンパクトSUV「キックス」はe-4ORCE と名乗らずe-POWER 4WDとしていますが、ミドルクラスのSUV「エクストレイル」とミニバン「セレナ」、そしてEVの「アリア」はe-4ORCEとしています。その違いはどこにあるのでしょう。

 それは4WDとシャシーの統合制御をおこなうか否かです。e-4ORCE登場以前はブレーキやスタビリティコントロールをおこなうコンピューターユニットと4WDの制御をおこなうユニットは連携こそすれど、別々のものでした。現行型ノートやキックスなどがそうです。

 いっぽうで進化版となるe-4ORCEでは、車両の目標とする動きを決定づけるシャシー制御のコンピューターユニット内にブレーキ制御や駆動トルク制御も内蔵。それらを統合して連携を深め、より綿密かつ鋭く制御するシステムになっているのです。

 たとえばエクストレイルの制御規模はノートの約1.5倍となり、4輪のグリップを瞬時に制御できるようになりました。そのぶんだけ、より積極的にクルマの動きを作ることができるというわけです。

「滑りやすい雪道での安心感を高めるだけではなく、舗装路でも曲がりやすさやハンドリングの良さをしっかり感じてもらえる4WD。せっかく4WDを選んでいただくのだから、雪道だけでなく1年中メリットがあるものを提供したかった」

 日産のあるエンジニアはe-4ORCEへの想いをそう説明してくれました。

 雪道は安定かつ安心して走れ、舗装路ではハンドリングの良さを実感できる。それが日産の電動4WDであり、さらにその特徴を引き上げたのが進化形のe-4ORCEというわけです。

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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4件のコメント

  1. これだけ整備された雪道なら別に4WDじゃなくてもいいような・・・

  2. ユ-ザ-に誤解与えるような内容だね。雪道ではどんな車でも過信は禁物!

  3. 細かい制御を絶え間なく行うから、雪道だろうがドライ路面だろうが非常に安定してコーナリングできる。ロールもピッチングも抑えられ、質の高い走行体験が得られるんだけれど、そのコストを負担するくらいなら生活4駆で良いよっていう事なんだろうね。すごく良いのに勿体ない。日産頑張れ。

  4. これまでのシャフトで繋がったヨンクとも、電気モーターでリアを駆動させてたヨンクとも違うe-4ORCEは全天候型。日産繋がりで言えばアテーサE-TSのようなもの。しかも内燃機関とは縁を切ったEVやe-POWER専用のシステムなので制御が緻密だから車体のロールもピッチングもかなり抑えられる。こればかりは乗ってコーナーの一つも抜けてみないと判らない。日産頑張れ。

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