雪道でも頼れるEVトラック、三菱ふそう「eキャンター」を冬の北海道で試乗!
寒さに強いEVトラック! eキャンターのバッテリー&暖房性能とは?
ちなみに冬場のEVは暖房使用による電費悪化が大きな懸念材料ですが、このあたりも抜かりなしです。高断熱キャビンに加えて、電気温水暖房PTCヒーター、シートヒーター&ステアリングヒーター、フロント熱線(ウインドシールドヒーター)などにより、電費低下は2割以下に抑えられていると言います。

今回は気温0度前後の状況で、ヒーターOFF、ステアリングヒーター&シートヒーターONで走行しましたが、問題なし。欲を言えば相対的に足元がスースーするのでトヨタ bZ4X/SUBARU ソルテラに装着される輻射(ふくしゃ)ヒーターのようなデバイスがあるといいな…と思いました。
さらにバッテリーは寒いと本来の機能を発揮できませんが、低温環境でも安定したEVシステムの起動に加えて、バッテリープレコンディショニング機能(AC充電時にバッテリーを予熱)などにより、起動性も問題なし。このあたりは気温がマイナス30度にもなる北欧でも実証されています。
EVトラックでジムカーナ!? eキャンターが見せた驚きの運動性能
続いて特設コースでの試乗です。ここではワイドキャブでホイールベースは3400mm、モーター出力は175ps/430Nm、バッテリーは82kWhというスペックに試乗しました。ちなみに車両重量は4320kg+積み荷約1500kg(最大積載量は3000kg)となっています。

公道ではないのでASRをOFFにして走らせます。
ゼロ発進加速や定常円旋回、さらにはS字~タイトターンと簡易的なジムカーナコース(!?)です。フラットなコースで軽量フロントタイヤのグリップさえ意識すれば、トラックとは思えないほど元気に走ります。
上り坂でも力強さを感じたパフォーマンスはフラット路面ではそれ以上で、アクセルONでテールスライドも可能です。その時もグラっと傾き「おっとっと」と言うような危なげな動きではなく、良くできたFRっぽい動きをします(笑)。
公道では絶対にやっちゃダメですが、逆を言うと何かあっても対処できる懐の深さを持っていると言うわけです。
物流のEVシフトは進むのか? eキャンターが示す新たな選択肢
ちなみに今回はこの試乗会に合わせて、北海道電気相互の「電源車」が協力していました。元々は災害時用(4階建てビルに相当する電気を発電可能)に開発された物ですが、今回のような充電サービスはもちろん、EVの電欠を救うようなサポートもできるそうです。
そろそろ結論に行きましょう。
寒冷地でのEVトラックは航続距離が限られているので普通のトラックのように万能ではないものの、用途に合わせて使えばアリかなと考えます。実際に使っている人に聞くと「一度EVトラックに乗ってしまうと、運転のしやすさ、力強さ、快適さで元に戻れなくなる」と言います。
日本は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指していますが、その動きは物流の世界も無視できません。eキャンターは現時点では小さな一歩かもしれませんが、日本のEVトラックのパイオニアとして進化の手を止めないで進んでほしいです。小型EVトラックが当たり前になる時代のために…。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。






































