三菱に「大型セダン」あった! 300馬力超え「V6スーパーチャージャー」も搭載の「ディアマンテ“後継機”」!? 精悍顔がカッコイイ「380」とは
三菱には2008年まで、「380」という大型セダンが存在していました。日本でも馴染のあるセダンから派生したものですが、一体どのようなクルマだったのでしょうか。
「ディアマンテ」「ギャラン」とも馴染み深い大型セダン
日本のメーカーから発売されているのに、日本では買うことができないクルマはいくつかあり、その多くがあまり知られていません。
三菱「380」も、そのひとつではないでしょうか。
日本国内にはいくつも自動車メーカーがあり、各社からは様々なモデルが発売されていますが、日本では未販売の車種も数多く存在しています。
それらは、おおむね日本仕様のまま海外では異なる名称で販売する場合や、海外向けにまったく異なるクルマを開発するパターンのほか、日本では販売していないモデルをさらに異なる車種に仕立てることもあります。
このように、日本車の仕向地による車種の複雑さはとても興味深く、一部のクルマ好きの研究対象になるほどです。
2005年に登場した三菱の4ドアセダン 380は、まさにそんな一台です。
380は、三菱のオーストラリア現地法人ミツビシ・モーターズ・オーストラリア・リミテッド(MMAL:Mitsubishi Motors Australia Limited)で生産・販売されていたモデルで、「マグナ/ベラーダ」を置き換えるために登場しました。
マグナは、1985年から3世代にわたりMMALが生産・販売しており、日本における「ギャランΣ」「シグマ」「ディアマンテ」の豪州版に当たります。
日本でも、ステーションワゴンの「マグナワゴン」「ディアマンテワゴン」が導入されたのを覚えている人もいるのではないでしょうか。
1996年にデビューした3代目マグナ/ベラーダは、2002年に「ラリーアート」バージョンの追加、2003年にはいわゆる“ブーレイ顔”を与える大規模なマイナーチェンジを行なうなどアップデートを繰り返していましたが、いささか古さが目立つようになっていました。
そこで380は、2003年に発表されたばかりの9代目「ギャラン」をベースとしています。
9代目ギャランは主に北米向けに開発されたモデルで、生産も三菱のアメリカ現地法人ミツビシ・モーターズ・ノース・アメリカ(MMNA:Mitsubishi Motors North America)が担当していたこともあり、知名度が高いビッグネームでありながら、日本ではまったく馴染みのない世代に。
そもそも日本では知られていないギャランからさらに派生した380は、まさに「日本人が知らない日本車」といえます。
9代目ギャランは国土の狭い日本では発売しなかったこともあってか、8代目比で全長を約20cm延長するなど車体サイズを大型化。ボディサイズは全長4840mm×全幅1840mm×全高1470mmとなっています。
パワーユニットには従来の2.4リッターのほか、V型6気筒エンジンを3.8リッターまで拡大した「6G75型」を搭載しています。なお豪州向けの380は3.8リッターのみの設定です。
そして380は、MMALオリジナルの設計を付与しました。2000個以上のパーツが新規に作られ、フロント・リアのデザインを変更したほか、オセアニア地域という使用環境を考慮したボディの強化なども行われています。
MMALの主力車種でもあったマグナ/ベラーダの後継車として380は大いに期待されます。
良好なハンドリングと乗り心地、乗りやすいエンジン特性、高い居住性と安全性・品質を備え、「豪州製のクルマとして最も優れている」とさえ評されましたが、その期待や評価に反して販売は低迷。
2度にわたる改良や価格引き下げ、「プラチナエディション」や「ES スポーツ」・「VRX フュージョン・バースト」などの特別仕様をつぎつぎと追加。
さらには「TMR」(Team Mitsubishi Ralliart)という、310馬力を発揮するスーパーチャージャー搭載ハイパフォーマンスモデルも設定するなどでテコ入れを行なったものの、大きな改善は見られませんでした。
そのため380の改良に伴うコストが回収できない、という事態が発生してしまったのです。
そこでMMALは、採算が取れないとして380を生産していたトンズリー・パーク工場の閉鎖を決定。
これは同時に380の生産が終わること、さらには「豪州生まれの三菱車の終わり」を意味していました。そして2008年3月末、同工場から最後の380が送り出されました。
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短い生産期間も相まって、わずか3万台という生産台数に留まった380ですが、2024年8月現在、オーストラリアの某自動車レビューサイトを見ると98件の投稿で5点満点中/4.5点をマーク。今なお高い評価を得ていることが伺えます。
「よい製品だからといって売れるわけではない」という、クルマの開発・販売の難しさを感じさせます。
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