マツダ「スカイアクティブ-X」の革新性とは? 「夢のエンジン」、発想の転換で実用化

圧縮着火なのに、点火プラグを使うという、発想の転換

 では、マツダはどうやって問題を解決したのか。それは、まるでコロンブスの卵のような解決策でした。「どうせ点火プラグを使うのなら、全域で使ってしまおう」と。

 圧縮だけで着火させる領域でも、点火プラグで点火します。ただし、燃料が薄すぎるので、燃えるのはほんのわずか。まさに種火です。でも、その種火が作る「圧力」で、燃焼室内全体の圧力が上がって圧縮着火するのです。点火プラグを使わないのが予混合圧縮着火であったのに、逆に点火プラグを使ってしまうとは、まさに反則技。しかし、それでも燃え方は従来のガソリン・エンジンとは異なる「圧縮着火」のそれです。

 マツダは、この点火プラグを使った燃やし方を「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition/火花点火制御圧縮着火)」と名付けました。

SPCCIの模式図。点火プラグで作る火球(種火)が生み出す圧力で、燃焼のための「圧縮」をコントロールする(画像:マツダ)。

 点火プラグを使うのであれば、難しかった制御もぐっと楽になりました。さらに点火プラグで圧を上げることができるので、圧縮着火できる領域も広がります。ということは、薄い燃料でエンジンを回せる領域も広がります。さらに燃費が良くなるというわけです。発想の転換。それが「スカイアクティブ-X」の実用化のカギだったのです。

 ちなみに、マツダが業界の常識を塗り替えるような発表を行ったのは、今回が初めてではありません。古くさかのぼれば、「ロータリーエンジン」の実用化もそうでしょう。

 また、2010(平成22)年に発表された、世界一高圧縮のガソリン・エンジンと低圧縮のディーゼル・エンジンを含む「スカイアクティブ」技術も同様です。2010年の発表会は、私(鈴木ケンイチ:モータージャーナリスト)も参加しましたが、あまりの内容に「ウソではないか?」と、なかなか信じられないほどでした。

 もちろん「スカイアクティブ」技術は、その後のマツダの快進撃を支える大きな土台となりました。今回の「スカイアクティブ-X」を搭載するクルマは2019年に登場します。その新型車は、どんな成果をマツダにもたらすのか。大いに注目です。

【了】
提供:乗りものニュース

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