全長3m級で470万円!? 「小さな超高級車」がスゴかった! “匠”が仕上げた「豪華すぎ内装」採用! 日本でも販売した「老舗ブランド」の激レア車とは
異例なほどの「豪華づくし」 今ではプレミアのつくモデルに
さらに、シグネットは車内にも見所がありました。
ダッシュボードの造形などの基本的な部位はiQを踏襲するものの、シートだけでなくダッシュボード、ドアの内張に至るまで品質の良い本革で覆われており、アストンマーティンの高級クーペ「DB9」と変わらぬ仕立てになっていました。
使用する本革の量も、DB9とほぼ同じだったそうです。天井はアルカンターラが貼られ、メーターの文字盤すら専用のデザインに交換されていました。
一方で、97psを発生する1.3リッター直列4気筒DOHCエンジンに、5速MTもしくはCVTを組み合わせたパワートレイン、前後ストラット式のサスペンション、およびそのセッティングなどはiQのまま。
とはいえ、さすがにアストンマーティンだけあって、遮音材を増量して車内の静粛性をアップしていました。
このようにとても丁寧に生産されたシグネットは価格も高額となり、2011年の市販開始の際には、日本ではMT車が475万円から、CVT車が490万円からに設定されました。
これは、iQの約3倍に相当します。なお英国市場では、日本円で620万円以上もしました。ただし、アストンマーティンの新車としては異例の低価格だったことも確かです。
そんなiQを、当初アストンマーティンではなんと年間4000台も生産する計画を立てていました。
ところが、iQの“お化粧直し車”に高額を支払うユーザーが少なかったことなどが理由で販売は低迷。2013年までに約150台が生産されたのみで、販売を終えてしまいました。
しかし、市販車の価格上昇が続く現在の視点で見ると、当時は高い!と思った価格にも、大きな価値があるように感じられます。
残念なことに、いま手に入れようとしても、希少車であるシグネットは中古車市場ではプレミアがつき、当時の新車価格よりも大幅に高い800万円以上というプライスタグがついているケースもみられます。
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アストンマーティンの長い歴史でひときわ珍しい存在のシグネット。これ以来、アストンマーティンでは小型車の開発を行なっていません。
しかし、これほど小さくなくとも、高級コンパクトSUV市場の拡大に伴い、再び「小さなアストンマーティン」を送り出す可能性はゼロではないと思います。
その際はどのようなクルマになるのか、興味津々です。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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