なぜ「セダン」不人気になった? かつては“定番”も今では「ほぼ壊滅」… メリット薄れたセダンは「復活」できるのか
セダン“ならでは”のメリットって何? 今後復活はありえるのか
ところで、そんなセダンのメリットはどこにあるのでしょうか。
まずは運動性能面です。セダンは重心が低いので安定性に優れ、旋回時や高速走行時の安定感が高いという物理特性上の長所があります。
加えて、ワゴンやSUVに比べて車体を頑丈に作れ、これも走りの質を高めます。高速走行や長時間運転でも疲れにくいのがセダンの長所といえます。
もうひとつは実用面。居住スペースと荷物を置く場所(トランク)が独立していることで、荷室下側から伝わる音をシャットアウトしてキャビンの静粛性が高まるなどのメリットがあります。
かつてそれらは、セダンの大きなアドバンテージでした。
そんな走りや快適性の質に、SUVの先輩である「ヨンク(四駆)」やステーションワゴンは近づけなかったのです。
しかし時は流れ、クルマ作りが進化するにつれてステーションワゴンやSUVなどでもそれらの“差”を克服していきます。実質的にセダン以外のボディタイプが明確にデメリットを感じるという状況ではなくなりました。
そんな流れもあり、より利便性の高いSUVやミニバンに乗用車の中心が移行したということでしょう。
SUVは見晴らしの良さや段差を気にしなくていいこと、ミニバンは室内が広いことなどでセダンに対する使い勝手のアドバンテージがあります。
昨今、SUVは日本の乗用車販売におけるボディタイプ別のシェアが約6割を占める“多数派”となりました。
では、この先、乗用車の中心がセダンに戻ることはあるでしょうか。
筆者(工藤貴宏)は、「可能性はゼロではないが、限りなく低い」と考えます。
なぜなら、消費者がセダンならではのメリットを感じにくいからです。
前出のように、セダンのメリット(他のボディタイプに対するアドバンテージ)はかつてに比べてずっと小さくなりました。
そんなセダンのメリットよりもSUVやミニバンの特徴に魅力を感じるのであれば、消費者が再びセダンに戻ってくる可能性は少ないと考えるのが自然です。
むしろこの先、運転サポート技術の進化で自動運転に近づけば近づくほど、高速移動中にいかにリラックスできるかが求められるようになるでしょう。
つまりミニバンのような空間重視のクルマが人気となる可能性が高いと判断できます。
※ ※ ※
かつての日本には「冠婚葬祭はセダンでないと」という風潮があり、それも乗用車の中心がセダンとされた理由のひとつでした。
しかし今では、そう考える人はほとんどいないでしょう。
ハードウェアとしてのセダンのアドバンテージのほかに、そういった社会の変化もセダン離れを進め乗用車の多様化をもたらした理由のひとつになっていると考えられます。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
かっては、フリ-ドもシェンタもないノアもセレナもない。だからセダンが売れたんだろ
以前はセダン以外の形はほとんどなくセダンの独壇場だったが、いろいろな車種が生まれたことで、必然的にセダンの地位が落ちた。車好きは新しい物好きも多く、新し車種が出れば(商品力が同じだとしても)セダン以外の方が売れる。また、最初の車がセダンでそのままセダンを選び続けているいるのはおじさん・おじいさんであり、特に日本ではおじさんを尊敬する人がいないので、若い人は「セダン以外」を選ぶことになる。
もっとも、作業車からのミニバン、オフロード車からのSUVに関しては、日本メーカー発祥といっていいくらい。ある意味、セダンを不人気車種にしたのは日本メーカーともいえる。
SUVはゴミだからセダンの方が人気!
「荷物とある程度の車内空間があり足を伸ばせる、足を組みやすい、見た目はカッコ悪くなければよい」
今はそんな車が売れているのが現実らしい。(Tディーラ曰く)