橋の「ゴツン、ゴツン」の正体 クルマで橋を渡る際、なぜ音が鳴るのか
進化するエキスパンションジョイントの技術
――道路橋はどのくらいの温度で、どれだけ伸びるのでしょうか?
日本の場合、地方ごとに50度から60度の寒暖差に耐えられるよう設計するルールになっています。例えば鋼橋(こうきょう、鋼で造られた橋)の場合、北海道などの寒冷な地方ではマイナス20度からプラス40度の温度変化を考慮し、全体の長さが100mの橋で72mmの伸縮を考慮しなければなりません。実際にはこれに20%の余裕を見込むので87mmになります。
――音や振動のもととなるエキスパンションジョイントを減らしていくのは今後、可能でしょうか?
長い高架橋が必要な立地では、できるだけ一連の橋を長くしたほうが、走行音も振動も抑えることができます。短い橋を長い一連の橋にすれば、エキスパンションジョイントの数を減らすことも可能ですが、長くすればそれだけ構造設計、特に耐震設計が複雑になってしまいます。伸縮する量も大きくなり、エキスパンションジョイントや支承(桁と橋脚あるいは橋台のあいだに設置する装置)がより高価になるため、よいことばかりではありません。設計者は地形や地盤条件をつぶさに調べ、最適な構造計画を行わなくてはならないのです。
――エキスパンションジョイントの最新技術について教えてください。
エキスパンションジョイントは、伸縮量をより大きく、より低騒音で、より長持ちするように技術開発が続けられてきました。伸縮の機構を工夫して伸縮量をより大きくし、ゴム製やアルミ合金製にすることで、騒音をおさえ、より長持ちするように改善してきたのです。路面の除雪を行う地方では、除雪車のブレードで損傷しにくい構造が使われています。また、伸縮装置部分から雨水が漏れると、橋そのものを腐食させたり強度を弱めたりさせるおそれがあるので、止水性能を高める努力もなされてきました。少しマニアックな情報ですが、最近「延長床版構造」という、エキスパンションジョイントの設置位置を、橋台背面にずらす低騒音工法が開発されています。
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話を聞いた男性によると、「仮に皆さんが継ぎ目のない200m以上の橋に出会ったら、『この橋の設計者は頑張ったのだな』と思ってください。橋梁の設計はこの規模からグンと難しくなります」とのことです。
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提供:乗りものニュース