トヨタの斬新「“うすうす”4ドアセダン」!? パカッと開いてオープンカーに!? “スイカの種”みたいな 「アヴァロン」とは

1991年の東京モーターショーに、変身後の姿が全高1mを切るという驚くほど低いコンセプトカー『トヨタ アヴァロン』が出品されていました。このクルマの低すぎる全高は、どのようにして実現したのでしょうか。

アメリカンデザインの4座オープンコンセプトカー 

 トヨタ「アヴァロン」は、1991年の東京モーターショーに参考出品されたコンセプトカーです。トヨタのアヴァロン…と聞いて、同社がアメリカを中心に展開し、初代・2代目が日本でも販売された上級FFセダン『アバロン』を思い浮かべる人も多いと思います。

 しかし、アヴァロンとアバロンの共通点は、ドアが4枚あることくらい、というほど、両車では異なった外観を持っていました。

薄すぎない!? トヨタの斬新4ドアオープンカー「アヴァロン」
薄すぎない!? トヨタの斬新4ドアオープンカー「アヴァロン」

 というのも、コンセプトカーのアヴァロンは、居住性を重視した大きなキャビンを持つ市販版セダンのアバロンと異なり、流線型の車体を持つ4人乗りのオープンモデルだったのです。デザインは、トヨタの北米デザインスタジオであるキャルティ(CALTY=Calty Design Research Incorporated)が手がけていました。

 コンセプトイメージは「アクティブコミュニケーションクルーザー」。使用シーンは、趣味や気が合う2組のカップルがアクティブな週末を過ごすためのクルマ、と想定されており、車内には大人4人がゆったりと座れる空間が確保され、ラグジュアリーかつ居心地の良さそうなが内装が設えてありました。

 外寸は全長4610mm×全幅1845mm×全高1130mmで、低いフロントノーズを持つ流線型のフォルム、ボディサイド後半に走るえぐれたキャラクターライン、絞り込まれたテールエンドが特徴でした。当時のパンフレットには、「キャビンレス・ウルトラローハイト・ボデー」とうたわれていました。

 オープンモデルのため固定式のルーフはなく、フロントにウィンドスクリーンを備えるのみでしたが、さらにアヴァロンでは、風雨をしのぐためのルーフさえ装着されていませんでした。

「ルーフがないというけれど、リアシート後方に収まっているのは、畳まれたルーフじゃないの?」と思ったかもしれません。しかしこれこそ、アヴァロン最大のポイント。一見ルーフに見えるこのパーツは、前方にスライドして移動、さらにウィンドスクリーンも倒れることによって、なんと乗員のスペースに「フタ」をしてしまうのです。

 するとアヴァロンは、まるで果物の種のような完全な流線型の塊に変身。元から低いクルマだったのに、全高はなんと960mmという低さにとなり、車内に人が乗り込むことさえできません。しかしこの機能は、まさに乗車しない駐停車時を想定したもの。乗員がいなくなるとこのクローズドモードになる、とのことだったので、車上荒らしなどを防ぐ効果は確かにあると言えます。

 また、パンフレットには、「クローズド時のクールでミステリアスなキャラクターから、オープン時の暖かく人を迎え入れるイメージへとドラマチックな変化」が起こり、見る人に新鮮な驚きを与える、とされていました。

※ ※ ※

 市販版のアバロンは1994年に登場し、5代目を数える現行型では、本来の主戦場だったアメリカから中国にその市場を移していますが、今なおその名前は健在です。なお、北米市場におけるアバロンの直接的な後継車は、SUV化して驚きを与えた現行型「クラウン」となります。

 日本語での表記こそ異なりますが、名前のみを市販車に引き継いだアヴァロン。未来的なデザインや、駐停車時に室内空間を閉鎖するというアイデアは、アバロンを含めそれ以降のクルマに採用されることはありませんでした。しかしこのような自由な発想こそ、コンセプトカーの面白さ・魅力と言えるかもしれません。

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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