なんで市販化しちゃったの!? 「斬新すぎるドア」装備の2ドアスポーツカーに驚愕! 異端すぎた激レアモデル「Z1」とは?
BMWがかつて販売していたスポーツカー「Z1」のドアは「下に格納する」という珍しい設計を持っていました。どのようなドアだったのでしょうか。
まさかの上下に動くドア装備! その後の採用はなし…
クルマのドアといえば、前ヒンジで横に開くパターンや、ミニバンや軽ハイトワゴンのリアドアなどに見られるスライド式が主流です。その他には跳ね上げ式・ガルウィング式などがありますが、こちらは一部のスポーツカーに見られるのみの少数派です。
ところが、1986年にBMWが発表した2シーターのオープンスポーツカー「Z1」では、これらとは概念がまったく異なるドアを採用して、大いに注目を集めました。
そのドアとは「格納式」。ドアが格納する、と言われてもピンとこないかもしれません。
しかしZ1のドアは、電動で上下に昇降できる構造だったため、まさしく「ボディに格納」される構造だったのです。
ここで、「ドアは高さがあるのに、どうやって格納するの? 」という疑問も湧いてくると思います。
Z1ではドアが通常に比べて半分の高さしかなく、さらにサイドシル(ドアの下にある敷居のような部位)の位置がかなり高いため、ここにドアを格納することが可能でした。
さらに、Z1はドアの開け方も変わっています。
車体外部にはドアノブが存在せず、キーホールを押すとドアが開く(上下に動く)動作をします。
もちろん、エンジンをかける前に乗降できるよう、エンジン停止中でもドアの開閉操作ができるのは言うまでもありません。
窓はドアと関係なく開閉が可能ですが、窓が閉まっている状態でドアを開ける時は、ドアの下降と同時に窓もドアに格納されるようになっていました。
なお車内からドアを開ける際は、車内側サイドシル部に設けられた通常のドアノブがスイッチの役を担っています。Z1はドアを開いた状態でも走れたため、屋根とドアを開いて運転すると、体の横に「壁」がないため開放感は格別だったことでしょう。
ではなぜZ1には、このような斬新なドアが使われたのでしょうか。
Z1は市販スポーツカーでしたが、実験的な要素が多いモデルでもあったためです。
開発を手がけたのは、1985年にBMWの研究・技術開発部門として発足したBMWテヒニク(BMW Technik GmbH)社です。なおZ1の「Z」は、ドイツ語で未来を意味する「Zukunft」から採られています。
同社初の開発車となったZ1は、一部に2代目「3シリーズ」(E30)のフロントサスペンションや2.5リッター直列6気筒エンジンなどを流用していたものの、プレス鋼板を溶接したバスタブ型モノコックシャーシや、「Zアクスル」と呼ばれるBMW初のマルチリンク式リアサスペンションは、Z1の専用設計でした。
オープンカーでもボディ剛性と衝突安全性を確保するため、Z1ではサイドシルが高い設計としましたが、BMWはこれを逆手に取り、通常の横開きドアではない格納するドアのアイデアを実装しました。そのため、Z1のドアは格納式となっているのです。
エクステリアに目を向けると、フォルムはまさに低いボンネット・車体の後方に着座するレイアウトによる典型的な「ロードスター」の形状をしています。強く傾斜したノーズには、固定式のヘッドライトと、BMWのアイデンティティであるものの小ぶりとなった「キドニーグリル」を備えています。
外装を形作るボディ外皮の各パネルは、2種類の樹脂で作られています。そのためパネルを交換することで、「好みのボディカラーに変更が可能」とも当時は謳われていました。
このように、随所に独創的な設計が盛り込まれたZ1でしたが、前述のように試作・実験車的な存在でもあったために、1988年から1991年頃にかけてわずか8000台ほどが生産されるにとどまりました。
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Z1の実質的な後継車は、1996年登場の2シーターオープンカー「Z3」ですが、Z1のような強い個性は影を潜め、常識的な設計のモデルとなりました。
Z3以降、「Z」はBMWにおける2人乗りロードスターを示す記号として定められ、「Z4」「Z8」が誕生。2023年11月現在では、3代目を迎えたZ4(G29)のみが販売を続けています。
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