ホンダ新型「N-BOX」なぜ標準仕様のターボ車を廃止? パワフル&低燃費でも「あまり売れなかった」意外な理由とは
ホンダ新型「N-BOX」が発売されますが、先代モデルに設定されていた標準仕様のターボ車が廃止され、カスタム仕様のみの設定へと変更されました。標準仕様のターボ車に何があったのでしょうか。
新型N-BOXのターボ車は「カスタム」のみに搭載! なぜ?
ホンダの人気軽自動車「N-BOX」がフルモデルチェンジを受け、3代目となる新型モデルが2023年10月6日に発売されます。
新型N-BOXは、先代モデルよりもグレードを減らしており、なかでも注目されるのは、標準仕様のターボ車を廃止したことでしょう。
そのため、新型N-BOXでターボを選べるのは、内外装の質感を高めたカスタム仕様の「N-BOXカスタム」のみになりました。
新型N-BOXの開発者に聞いたところ、「あまり売れなかったから」との返答だったのですが、では標準仕様のターボは、なぜあまり売れなかったのでしょうか。
筆頭に挙げられる理由は価格設定でしょう。先代N-BOXの標準仕様で売れ筋になる「L」の価格は159万9400円で、「Lターボ」は179万8500円でした(駆動方式は2WD)。
Lターボの価格は自然吸気エンジンのLよりも約20万円高く、ユーザーに割高と判断されたのです。
ただし先代モデルのLターボは、Lに比べて装備を充実。Lにオプション設定されるサイド&カーテンエアバッグ(Lのオプション価格は4万4000円)と右側スライドドアの電動開閉機能(5万5000円)が標準装着され、さらにドアロックに連動してドアミラーを格納するオートリトラミラー、パドルシフト、本革巻きステアリングホイールなども加えられていました。
これらのLターボにプラスされる装備の価格換算額は合計すると約13万円に達するため、ターボの正味価格はこの金額を価格差から引いた約7万円と考えられます。
そして実際の動力性能を大きく左右するターボの最大トルクは、新旧モデルともに10.6kg-m(2600回転)です。自然吸気エンジンの6.6kg-m(4800回転)に比べると1.6倍で、なおかつ発生回転数は実用域の2600回転に下がりますから、動力性能を大幅に向上させます。
その一方で、先代モデルのターボはWLTCモード燃費が20.2km/Lとされ、自然吸気エンジンの21.2km/Lと比べて1km/Lしか悪化しておらず(比率に換算すれば5%)、ターボエンジンは効率がとても優れているのです。
軽自動車でターボの効率が優れている理由は、車両重量とエンジン特性の親和性が高いためです。N-BOXのような全高を1700mm以上に設定した「軽スーパーハイトワゴン」では、車両重量がコンパクトカーに近い900kg前後に達します。ところがエンジンの排気量は660ccですから、コンパクトカーの約半分です。
そのために軽スーパーハイトワゴンは、自然吸気エンジンでは負荷が過剰に大きく、CVTも常に高回転域を使って、パワーを出し切りながら走る制御を行います。そうなると燃料の消費量も増えます。
一方のターボエンジンは、実用回転域の駆動力が1リッターの自然吸気エンジン並みに向上しますから、エンジンの負荷が小さいです。動力性能に余裕が生まれるだけでなく、燃料消費量も増やさずに済みます。
このように軽スーパーハイトワゴンにとって、ターボは実用性を高める優れたメカニズムであり、スポーツ性を得るための機能ではありません。
このターボの正味価格が、先代N-BOXの場合は約7万円ですから相当に買い得だったのですが、Lターボの場合、前述のように豪華な装備が追加されたうえでの20万円の差額だったことがわかりにくく、「ターボは割高」と判断されたことで売れ行きが下がったといえるでしょう。
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