競技でも「トヨタ流」を発揮!? 大盛況の「ラリー北海道」 現場で見えた今後の課題とは

スバルがWRC復帰の可能性も? 豊田章男氏は「盛り上げ役」に

 そんなタイミングで一部のモータースポーツメディアから「スバルがWRCへ復帰する可能性が浮上」「FIA会長が、スバル復帰に向けた話合いがスタートした事を公言」「豊田氏が架け橋に」と報道されました。

 それならば、噂の張本人(豊田章男氏)に聞いてみようと言う事で直撃。豊田氏はこのように答えてくれました。

「私はFIA評議員をしていますが、以前からスレイエム会長と『ラリー1が3チームじゃ少ないよね』という話はしています。

 現在ラリー2は盛り上がっていますが、やはりWRCの頂点のラリー1を盛り上げるためには、参加者を増やす必要があります。

 スバルとは今も仲良くやっており、話し合いはいつもしています。実はラリーフィンランドにスバルの中村会長を誘いました。

 この時はスケジュールの関係で実現しませんでしたが、ラリージャパンにもお誘いしています。とはいえ、最後は『世の中の応援』だと思いますよ」

「GRヤリス・Rally 2」とルーキーレーシング所有の大型トレーラー
「GRヤリス・Rally 2」とルーキーレーシング所有の大型トレーラー

 今回のラリー北海道の模様は、トヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」が生中継しています。

 陸別町には豊田氏のプライベートチームであるルーキーレーシング所有の大型トレーラーを配置し、ここを拠点に放送が行なわれました。その規模はテレビ中継並みといっても過言ではない様子でした。さらにネットには事前にこのような広告も流れました。

「ラトバラがラリー北海道に出るらしい! あれっ!? その日はギリシャでWRCじゃないの!? チーム代表いないって大丈夫なの? モリゾウがギリシャにいって代行するの!? いや…モリゾウもラリー北海道でデモランするらしい! トヨタのラリーはどうなってるんだ? 大丈夫なのか!?」

 ラリー北海道が行なわれた週は、ギリシャでWRC第10戦「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」、そして静岡県の富士スピードウェイでWEC富士6時間レースも行なわれました。

 TGRにとってはどちらも大事なカテゴリーですが、なぜ、ラリー北海道にそこまで力を入れたのでしょうか。豊田氏の答えは単純明快で「全日本ラリーを盛り上げるため」でした。

 TGRのラリー活動は「WRC」「全日本ラリー」「ラリーチャレンジ」となります。WRCはいわば頂点の戦いに対して、ラリーチャレンジはこれまでラリーに参戦したことのないユーザーでも気軽に参加でき、いわばラリーの裾野を担う戦いになります。

 WRCの人気は言わずもがなですが、ラリーチャレンジも毎戦規定台数を超えるエントリーがある人気イベントに成長しています。そんな中、全日本ラリーは国内最高陣のラリー選手権にも関わらず、人気・知名度となるとまだまだ課題はあります。

 つまり、現時点ではラリーのピラミッドがいびつな形になってしまっているのが事実です。豊田氏はそれを健全な形に戻したいと考え、今回は自身が盛り上げ役として人肌脱いだと言うわけです。

 この辺りはトヨタが持続的な復興支援のために東北に拠点を設けた事や、ラリーを通じた持続的な社会の実現を目指すべくTGR-WRT/トヨタモビリティ基金(TMF)/フィンランド ユバスキュラ市のパートナーシップにも通じるものがあります。

 ただ、そうは言ってもWRC/WECは大丈夫なのでしょうか。豊田氏に聞くと笑いながらこう答えてくれました。

「トヨタの強みは『現場力』ですから」

 もちろん、情報はすべて共有されていると思いますが、一般的な会社とは違って上司の判断ではなく「現場の判断で動く」、ただし「責任は上司が取る」と言うスタイルなのがトヨタです。

 豊田氏は常日頃から「情報が現場にある、現場が今どうなっているかを大切にしたい」と語っていますが、トヨタのモータースポーツ活動はそれが実践できているのです。

 このようにモータースポーツを通じて様々な事を考えさせられた取材でしたが、今回より理解できた事は、豊田氏の行動全てに意味があり、その本質は自分のためではなく誰かのために行動する「Youの視点」である事。

 自分も今まで以上にそれを心掛けて仕事をしていこうと、今回の取材を通して改めて思わされました。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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