瞬時に完売した“幻のワゴン”がスゴすぎる! スバル「レヴォーグ」のSTIコンプリートカーが驚愕の性能だった!?
とにかくハンドリングがスゴい!
今回の試乗はSTI社がある東京・三鷹を拠点に、近隣の一般道やワインディング、高速道路を走行。評価は限界云々ではなく日常領域が中心となりましたが、STIスポーツ#の実力は走り始めて数百メートルで即座に実感できるレベルにあります。
一番驚いたのは、すべてにおいて「雑味がない」スッキリ爽快な走行フィーリングです。
具体的には、カチッとしているのに突っ張った印象がない車体、穏やかなのにあうんの呼吸で反応するステア系、一般道や高速道路では19インチの40偏平タイヤを装着していることを忘れる優しい足さばきなどの、格上のプレミアムセダン顔負けの上質かつ繊細な乗り味と、ワインディングなどではリアルスポーツカーさながらの俊敏で一体感の高い走りを両立するフットワークを実感。
そのなかでももっとも驚いたのはハンドリングで、スッとノーズがインを向く感覚に「VTD-AWDの駆動配分が変わった?」、さらに旋回姿勢の良さやリアタイヤをより積極的に使ったトラクションに「前後重量配分変わった?」と錯覚してしまったほどです。
これはフレキシブル補剛パーツや湾曲タイロットエンド、リアサブフレームフロントブッシュの締結ボルト大経化などの相乗効果で、クルマを今まで以上に旋回しやすい姿勢に導きやすくしていて、その結果、ノーマルが持っている能力をあまりなく引き出せているのでしょう。
つまりSTI社のチューニングは飛び道具ではなく、クルマの原理原則に対して愚直に向き合った結果なのです。
乗り心地に関しては、スポーツタイヤなのにしなやかで転がり抵抗も低いミシュラン・パイロットスポーツ5と、ノーマルの18インチアルミホイールよりも2.3kg軽量かつサスペンション機能を持たせたBBS鍛造アルミホイールが良い仕事をしています。
ちなみにSTIスポーツのサスペンション(ZF製連続可変ダンパー)は、ドライブモードセレクトで走りの味付けの変更ができますが、正直いうと「ノーマルで十分」と感じたくらいでした。
パワートレインはノーマルのはずですが、よりスムーズな旋回が可能になり無駄な加減速が減り、ネガな印象(アクセルを踏んだ時のレスポンスの悪さ)が薄れたように感じるのです。
ちなみに試乗車はSTIスポーツパーツのパフォーマンスマフラーが装着済みで、音量は控えめながらも低音の効いた雑味のないスッキリしたサウンドを響かせており、見た目よりも武闘派な音量でしたが、そう感じさせなかったのは専用制振剤の効果が効いているのでしょう。
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ノーマルのSTIスポーツもハンドリングと乗り心地のバランスは国産車の中でトップレベルだと思っていましたが、STIスポーツ#はそのストライクゾーンをよりセンターに持ってきた印象で、「これがノーマルでも良いでしょ!」と思ったくらいの完成度です。
個人的には、より車両全体に手が入ったSTIコンプリートカー最上位の「Sシリーズ」のなかでも最高傑作だと思っている「S206」に非常に近い乗り味に感じました。
「ノーマルにパーツをつければ限定車にできる」と思う人もいるでしょう。実は筆者は以前、別のモデルでそのトライをしましたがが、結論からいうと「近づくが再現はできない」を実感済み。つまり、生産の仕方など、目に見えない部分にも「STIマジック」が盛り込まれているのです。
残念なのは、前述のように500台がすでに完売しており、今から新車で買えないことでしょう。
ただし、このタイミングで試乗会がおこなわれたことを考えると、「もしかしたら、もしかするかも!?」とも思ってしまうのですが、どういう形になるかは分からないものの、多くの人にこの乗り味を体験してほしいと思いました。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
スバル車フロントオ-バ-ハングが他車より長いこと頭に入れて駐車してね