車にくっついてる「謎の棒」は何!? かつての「定番品」も今や存在感薄い? 重要視されなくなった理由とは
一部のクルマについている「金属の棒」はなんのためにあるのでしょうか。近年すっかり存在感が薄くなった理由について探ります。
「脱着式」や「伸縮式」など様々な形態が存在する謎の「棒」
最近はあまり見かけなくなりましたが、屋根やトランクから「金属の棒」が伸びているクルマを、時おり目にすることがあります。
はたしてこの“棒”はどんな機能を有しているのでしょうか。
先にあっさりとネタバレしてしまうと、この金属の棒はクルマのオーディオでラジオを聴くための「アンテナ」です。
しかし近年では、黒い樹脂タイプで短い可倒式のものや、「シャークフィンアンテナ」や「ドルフィンアンテナ」と呼ばれる、サメやイルカの背びれを思わせる形状のものが主流となっています。
ただこれらのアンテナはスタイリッシュである反面、ややコストがかかってしまうため、現在でもコスト面に厳しい軽トラックや軽ワンボックスバンなど、一部の商用モデルなどには金属製のアンテナが採用されているのです。
そんな金属製のアンテナは「ロッドタイプ」とも呼ばれ、その名の通り杖のような棒状のものを指します。
ロッドタイプのアンテナ(ロッドアンテナ)にも種類があり、単純に棒状のアンテナの端にネジが切ってあって、ボディのアンテナベースにねじ込む「脱着式」(ネジ式)という最もシンプルなものも存在します。
これは非常にシンプルでコストも抑えられますが、洗車機や立体駐車場に入るときなどはいちいち車両から降りて脱着しなければならないという手間が生じます。
そのため現在では採用車種もあまり見られませんが、日産「NV200バネット」などはいまだにこの脱着式を採用しています。
ロッドアンテナで、現在でも軽商用車などに採用例が多いのは「伸縮式」のものです。
ラジオを聴くときはロッドを伸ばして長くすることで受信感度を高め、使用しないときは格納することができるものとなっています。
この伸縮式のロッドアンテナは、信号待ちなどのタイミングで車両から降りることなく伸縮できるよう、運転席側のAピラーに装着されていることが多く、現在でも軽商用車などに採用されている姿を見ることができます。
そしてこの伸縮式ロッドアンテナの進化版として「パワーアンテナ」や「電動アンテナ」と呼ばれるものが存在していました。
これはアンテナを伸縮させる動作をモーターによって電動化したもので、トランクなど運転席から遠い位置にアンテナが備わっている車種でも車両から降りることなく操作できるというものでした。
主に高級車や上級グレードに装備されていたもので、動作は個別にスイッチがあるものやオーディオをONにすると動作するものなどさまざま。
ただトランクなど運転席から遠い位置にアンテナがあることで、悲しい事故も少なくありませんでした。
アンテナが伸びていることを失念したまま洗車機や立体駐車場に入ってしまい、アンテナをうっかり破損してしまうのです。
手動のものに比べると部品代もかなり高額となってしまうため、現在ではほとんど見ることはない形状となっています。
このようにただの金属の棒に見えるラジオのロッドアンテナではありますが、装着したり伸ばしているときと、そうでないときでは明らかに放送の受信感度が異なります。
それがあまりにも明確に違うので、かつて筆者(小鮒康一)も「簡素な棒だけどこんなに効果があるんだ!」と感動した記憶があります。
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最近では、サブスクリプションサービスでさまざまな音楽が聴き放題となっています。
そのため、いまやすっかりカーラジオを聴く機会が減ってしまったことも、アンテナの存在がすっかり薄くなってしまった大きな理由といえるかもしれません。
たまには旅先で、ローカル局が流すラジオを聴きながらドライブしてみるのも楽しいかもしれません。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
いくら増幅器が良くなったと言っても最初の電波を吸収する部分の効率の良さはロッドアンテナ。
効率の悪いアンテナでいくら増幅したってノイズまみれ