スズキの「超“極小”ミニバン」がスゴい! 全長3.7m級ボディで「3列・7人乗り」を実現!? “ゴージャス”マスクもカッコいい「エブリイランディ」とは
軽ワンボックスワゴンのボディをベースに、7人乗りを実現したユニークなコンパクトミニバン、スズキ「エブリイランディ」は、どのようなクルマだったのでしょうか。
軽ワンボックス「エブリイ」のプラットフォームを最大限に活用!
近年人気のコンパクトミニバンですが、それらよりもさらに小さい、ほぼ軽自動車サイズでありながら7人乗りを実現した画期的なモデルが、かつてスズキから販売されていました。
その名は「エブリイランディ」。1999年から2005年まで販売された、日本の自動車史のなかでもユニークな存在でした。

エブリイランディは、1999年6月にまず「エブリイプラス」という名前でデビューしました。
スズキの人気軽ワンボックスカー「エブリイ」(当時のDA52/62系)をベースに、軽自動車のプラットフォームを最大限に活用しつつ、多人数乗車を可能にするという野心的なコンセプトでした。
開発にあたっては、当時の小型乗用車に求められる前面衝突安全基準を満たす必要があり、軽のエブリイと比較してフロント部分(ボンネット)を前方に延長。同時に、1.3リッターのガソリンエンジンを搭載しました。
ボディサイズは全長3710mm×全幅1505mm×全高1900-1915mm。ベースの軽版エブリイより全長で約300mm、全幅で30mm拡大され、小型乗用車として登録されました。
それでも全長3.7m強、全幅約1.5mというサイズは現代のコンパクトカーよりも小さく、まさに極小ミニバンでした。
この限られたサイズの中に3列シートを配置し、7名の乗車定員を実現した点が、エブリイプラス最大の特徴です。
全高が1.9m以上あるため頭上空間には余裕があり、最小回転半径も4.5mと軽自動車並みの取り回しの良さもメリットでした。
当時はダイハツ「アトレー7」など、同様の「ストレッチ軽」とも呼べるモデルがいくつか登場し、一時的なニッチ市場を形成していました。
2001年5月にはマイナーチェンジを実施し、車名を「エブリイランディ」へと変更。これは「軽のエブリイの延長」というイメージを払拭し、独立した小型乗用車としての魅力を高める狙いがあったと考えられます。
エクステリアはフロントマスクが一新され、高級車を思わせるデザインとなるなど、質感向上が図られました。
インテリアでは、このクラス初となるインパネシフトを採用して前席足元空間を拡大。2列目シートバックに折り畳み式テーブルを装備するなど利便性も向上させ、オプションで電動オートステップも設定されました。
搭載エンジンは一貫して1.3リッター直列4気筒SOHCガソリン「G13B」型で、最高出力約86PS、最大トルク約110N・mを発揮(※時期により若干の差異あり)。
トランスミッションは4速ATのみで、駆動方式はFR(2WD)とフルタイム4WDが設定されました。
日常的な使用には十分な性能でしたが、多人数乗車時や登坂路では力不足を感じる場面もあったようです。
シャシーは基本的に軽のものを流用。乗り心地や走行安定性については、軽ベースであることや背の高いボディ形状から、横風の影響を受けやすい、路面の凹凸を拾いやすいといった指摘もユーザーレビューなどで見られました。
当時としては貴重なABSを標準装備していました。
装備レベルは当時の小型車として標準的でしたが、基本的な安全・快適装備は備わっていました。販売価格は約135万円から161万円程度と、7人乗りモデルとしては非常に手頃な設定でした。
しかし、エブリイランディはそのユニークさにも関わらず、販売面では大きな成功を収められませんでした。
「ストレッチ軽」カテゴリー自体が市場に定着せず、2005年8月、ベースの軽エブリイのモデルチェンジに合わせて販売を終了しました。約6年という比較的短いモデルライフでした。
軽ベースゆえの性能面の限界や、当時の市場でのワンボックススタイルの見られ方、同価格帯の他のコンパクトミニバンとの競合などが理由として考えられます。
日本市場では短命に終わったエブリイランディですが、その歴史は海外で続いています。
インド市場では、このモデルをベースとした「イーコ(EECO)」が、スズキの子会社マルチ・スズキによって2010年から現在に至るまで生産・販売されており、現地の重要な移動手段として多くの人々の生活を支えています。
コンパクトで扱いやすく多人数・多用途に使えるという基本コンセプトが、インドの市場ニーズには合致したと言えるでしょう。
軽自動車のプラットフォームを最大限に活用し、「コンパクトな7人乗り」という野心的なコンセプトに挑戦したユニークなモデルだったエブリイランディ。
限られたサイズとコストで多人数乗車を実現した試みは画期的でしたが、性能や質感の面での妥協点も多く、日本では主流になれませんでした。
しかし、その基本設計が形を変えて海外で生き続けていることは、そのコンセプトが持つ普遍的な実用性の高さを証明しているといえるでしょう。
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