EVトラック「eCANTER」フルモデルチェンジ! 最大航続距離は324㎞まで拡大!? 従来車との違いを実体験してみた!

eCANTER」の車体ディテールをチェック 航続距離以外にもいろいろ向上

 試乗会場にはeCANTERの新しくなったバッテリーや駆動系が確認できるように架装を外したシャシだけの車両も展示されていました。それらを元にeCANTERのメカニックな部分を紹介していきましょう。

 展示されていたのは最もコンパクトなSサイズで、モジュラー式バッテリーが1個搭載されており、バッテリーの重さは約350kgで定格容量は41kWh。

 シャシのホイールベースは2500mmでラインナップの中では一番短い最小サイズです。このモデルでの総重量は5tで積載量は2t。

 一番大きなモデルではLサイズバッテリーでホイールベースは4750mmになり、総重量が8tで積載量は3.5tとなっています。

架装が外されたシャシを後方から見たところ。上げられたキャブの下にあるのは、電装関係を制御するコンピューター関係のユニット。左上部に付いているのは、バッテリーを冷却するラジエーター液のタンク
架装が外されたシャシを後方から見たところ。上げられたキャブの下にあるのは、電装関係を制御するコンピューター関係のユニット。左上部に付いているのは、バッテリーを冷却するラジエーター液のタンク

 バッテリーの後方には電気モーターと車軸が統合された新しい「eアクスル」があります。ここにはトラックを走らせるためのアクスルと電気モーター、それにリダクションギアとインバーターがユニットとして一体化。

 モーターの出力は110kW/150PS(8tクラスのみ129kW/175PS)で最高速度は時速89kmで、登坂性能は20%以上となっています。

 右側面には給電口とインバーターが装備され、給電口は通常充電用と急速充電用でふたつに分かれ、バッテリー1個のSサイズでの充電時間は、通常充電で約8時間、急速充電では約50分(50kW時)となっています。

 冬場の寒さでバッテリー能力が低下する対策として、「バッテリープレコンディショニング」という機能も装備しています。

 これは、出発時間をあらかじめ設定して充電状態にしておくと、その時間に合わせてバッテリーを余熱して、十分なパフォーマンスが発揮できるようにするものです。

 車内装備で本モデルから新しく搭載されたのが、オプションで用意されている省エネ暖房設備です。

 これは、冷房には従来のエアコンを使い、暖房では電気温水暖房(PTCヒーター)を使用するというもので、標準で装備されています。

冷凍車の架装を装備した7.5tモデル。冷凍機の稼働は新装備のePTOからの動力で行える
冷凍車の架装を装備した7.5tモデル。冷凍機の稼働は新装備のePTOからの動力で行える

 さらに、必要部分を局所的に暖めるオプションとして、ステアリングヒーター、シートヒーター、足元インシュレーター、ウインドシールドヒーターが用意されており、暖房機器使用による航続距離の影響を半分程度まで抑えることができるそうです。

 もともと、EVは寒冷地が苦手という印象がありましたが、このような暖房オプションや「バッテリープレコンディショニング」といった機能を搭載することで、EVとしての弱点を克服し「eCANTER」を事業車として普及させようというメーカーの心意気を感じます。

 業務車として注目なのが、本モデルから新しく追加された「ePTO」。PTOとはパワーテイクオフの略で、ダンプや冷凍車などの架装部分に動力を伝達する装置です。

 従来のディーゼル車でエンジンの動力を取り出す動力伝達機でしたが、「ePTO」はそれ自身がモーターとなって動力を供給します。

 これによって従来のトラックで使われていたディーゼル車の架装がそのまま使用することができるほか、電動モーターだけの静音状態で稼働させることができます。

 小型トラックの架装でPTOを使うものといえば、冷凍車や塵芥車(いわゆる「ゴミ収集車」)などがありますが、これが都市部などで使われるとエンジン駆動音がクレームの原因になることもあります。

 しかし、「ePTO」を利用すれば静音状態で作業することができ、効率的な業務と住民の生活環境への配慮が両立することができます。

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