日産は2023年4月18日に開幕した中国・上海モーターショー2023で、SUVコンセプトカー「Arizon（アリゾン）」を世界初公開しました。日産の中国スタジオに所属する若手デザイナーがデザインしたといいます。
　
　未来的なフォルムとサイバーな内装を持つ新型アリゾンの狙いは、どこにあるのでしょうか。

　アリゾンは、中国のユーザーの多様なライフスタイルやニーズにあわせて開発したSUVのEV（電気自動車）コンセプトカーです。

　CMF-EVプラットフォーム採用によって低重心化されるとともに、自動調光できるサンルーフやピラーレス構造による開放的で広々とした室内空間を提供します。

　内外装から、ヒューマンマシンインターフェイス（HMI）、カラーや内装材のデザイン、データモデル制作に至るまで、アリゾンのデザイン制作は日産中国デザインセンターを主体に行われました。

　一方で原寸大クレイモデルの制作やグラフィカルユーザーインターフェイス（GUI）のアニメーションデザインは、日本の日産本社グローバルデザインセンターからの支援も受けたようです。

　アリゾンの制作にあたり、デザインを統括するデザインディレクター 張 文玉氏はデザイナーに対し次のように説明したといいます。

「開発に際し、世界で最初となるような最も独創的なデザインを追求すべきだと伝えました」

　デザインのキーワードは「サイバーテクノロジー」「サイバーVIPルーム」。特に内装は、新しい時代にふさわしいシンプルで魔法のようなスマートコックピットを提示したといいます。

　バーチャルパーソナルアシスタント「エポロ」も搭載され、対話形式で様々な情報も提供されます。

　こうした内装やコネクティッド機能などのインターフェイスデザインには、上海らしい要素を取り入れたと張氏は話します。

「上海は、日中は穏やかで活気にあふれ、夜は豪華で幻想的です。

　この対比を取り入れ、HMIには『デイモード』『ナイトモード』の2つのモードを持ちます」

　また上海を流れる川「黄浦江（こうほこう）」から上海ビーチへの流れをイメージした室内のドアパネル形状や、古代中国の詩人も称賛した月の白い色や伝統工芸の藍色をイメージした内装色など、中国独自の要素を組み合わせました。

　一方で張氏は、外観はシンプルでピュア、かつ力強くダイナミックな新しい電動SUVのフォルムを表現したと話します。

「EV時代に向かい、ユーザーはシンプルで飽きのこないデザインを好む方向に向かうでしょう。

　そのため『ワン イズ オール』のシンプルな未来を解釈し、外観のすべてのパーツを全体的なフォルムに統合させました」

　また、SUVタイプのEVとして市販される「アリア」との違いについては、次のように説明します

「『オリエンタル ミニマリスト フューチャリズム』をコンセプトにデザインされたアリアと今回のアリゾンは、類似した発想もありながら、急速に発展を遂げる中国のEV市場の動きにもとづいてデザインされています」

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　張氏は、アリゾン開発時の試行錯誤について次のように話します。

「毎日ブレーンストーミングを行いながら、デザイナーの絶え間ない努力の甲斐もあって、非常に興味深いデザインが得られました。

　しかし非常に革新的なアイデアは、一方で過去の経験値がないことばかりで、ゼロから学び研究する必要に迫られるなど、多くの課題ももたらしました。

　しかしコンセプトモデルの開発から設計、制作まで数々の課題をクリアし、結果として将来に向けた多くの学びを得ることができました」